慈愛の聖女、夜は「借金取りの死神」として玄関を叩く 〜無償の愛? いいえ、お支払いはきっちり神罰(延滞金)で済ませていただきますわ〜
「ああ、聖女ソフィア様! 今日も無償の回復魔法をありがとうございます!」
「いいのですよ。皆様の笑顔こそが、神様への一番の供物なのですから……」
王都の大聖堂。昼の私は、光り輝く純白の法衣に身を包んだ「歩く奇跡」。
怪我をした騎士も、病に伏せる商人も、私の祈り一つで癒えていく。人々は私を「地上に降りた天使」と崇め、清廉潔白な姿に涙を流して感謝した。
だが、彼らは知らない。
太陽が沈み、大聖堂の鐘が不吉な音を立てて夜を告げた後の「真実」を。
「……ふぅ。今日もサービス残業(無償奉仕)終了ですわ。さて、ここからは『本業』の時間ね」
私は白檀の香る法衣を脱ぎ捨て、闇に溶ける漆黒のドレスと死神のベールを纏った。
手に持つのは聖書ではなく、カチカチと不気味な音を立てる魔導算盤。
私の裏の顔――それは、神の名を借りて踏み倒された「祈りの対価」を冷酷に回収する、闇ギルド専属の執行官。
通称、『夜の死神』。
今夜のターゲットは、勇者パーティのリーダー、ガイル。
彼は昼間、私の元へ来て鼻で笑いながらこう言ったのだ。
「おい、ソフィア、聖剣が刃こぼれしたんだ。……あ、金はないが、俺の女になるんだから問題ないだろ?」
ふん、寝言は地獄の底で言えですわ。
夜の王都、怪しいネオンが光る高級酒場の特別室。
酒と女に溺れ、高笑いするガイルの背後。
私は音もなく、冷たい影として立った。
「……ガイル様」
「ひっ!? な、なんだお前は! 黒ずくめの……死神……!?」
「昼間の『祈り』の代金回収、および不快な発言への迷惑料の請求に参りました。……はい、こちら。合計金額、ガイル様の命を三回売っても足りない額ですわ」
パチリと魔導算盤を弾き、血のように赤い数字を突きつけた。ガイルの顔が恐怖で引きつる。
「な、なんだこの額は! 昼間はタダだと言ったじゃないか! それに、俺様は勇者だぞ!」
「お言葉ですが、昼間の私は『神様の広告塔』。夜の私は『借金取りの死神』ですの。契約書の注釈、読んでいらっしゃらない? 『無償枠を超えた場合、年利25.5%の神罰(延滞金)が発生する』と」
「ふ、ふざけるな! そんな金、あるわけ……」
「あら、現金がない? ……困りましたわね。では、死神スキル『能力の強制徴収』を発動いたしますわ。……まずはその『聖剣の加護』、そして『勇者の筋力』を担保として差し押さえます」
算盤の珠を一つ、強く弾いた。その瞬間、ガイルの体から黄金のオーラが剥ぎ取られ、算盤へと吸い込まれていく。
「あ、力が……抜ける……!? 俺のスキルが消えた!?」
「当然ですわ。お支払いが滞った以上、能力は私の管理下にあります。取り戻したければ、『下僕(専属資産)』として一生奉公するか、あるいは来世まで続く『神罰(延滞金)』を払い続けるか……。どちらの『地獄』がお好みかしら?」
「待ってくれ! ソフィア! 悪かった、何でもするから!」
「あら、いいお返事ですわ。……では、今日からあなたは勇者ではなく、我がギルドの『魔力発電用バッテリー』ですの。下水掃除をしながら、王都の街灯を灯し続けてくださいな」
拡声魔法を起動し、氷のような声で引導を渡した。
「愛はタダではありませんのよ。……さあ、今すぐサイン(血判)を。さもなければ、あなたの『存在を今すぐ不渡りとして、世界から消去いたしますわ」
翌朝。
大聖堂の前には、魔力を極限まで吸い取られ、青白い顔で街灯の魔導石に必死に指を押し当てている、かつての勇者の姿があった。
「あ……灯った。俺の魔力で、今日も街が明るい……(ええ声)」
それを見下ろしながら、いつもの慈愛に満ちた「昼の微笑み」で、別の騎士に手を差し伸べる。
「さあ、次はあなたの番です。……愛が必要ですか?」
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
昼は癒やしの聖女、夜は情け無用の死神。
そんなソフィアの「夜の副業」を楽しんでいただけたでしょうか?
「俺の女になれ」なんていう不良債権は、即座に不渡り(バグ)として処理するのがソフィア流の愛の形です。
「ソフィア様に家まで取り立てに来てほしい(!?)」という読者様は、ぜひブックマークや評価で「契約」を結んでいってくださいね!




