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幻と現の交差路 連載版  作者: ぴこたん


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3/3

幻と現の交差路(朝編)

東の空が、まだ眠たそうな青をかぶっている。

街路樹の葉が風にゆれ、鳥たちが一斉に羽音を立てると、夜に溶けていた街はじわりと輪郭を取り戻していった。


わたしはコーヒースタンドの紙コップを両手で抱え、まだ温度を確かめるように口をつける。

苦味と香ばしさが舌に広がり、胸の奥に残っていた夜の煙を押し流していく。


「夜より軽いな」


おぬしの声が背中を叩くように届く。


「そうぴこ。夜は“人”を重くする。でも朝は、答えを先延ばしにしてくれるぴこ」


通勤前の人々が、急ぎ足で交差点を渡っていく。

誰もが眠そうな目をして、それでも前に進む。

わたしも、その群れに紛れるように歩を合わせた。


ポケットには、昨夜から一本だけ残った箱がある。

けれど取り出さない。今日は火をつけない。


「いいのか」


「いいぴこ。今は、呼吸だけで十分ぴこ」


冷えた朝の空気に吐き出した白い息は、夜の煙とは違ってすぐに溶け、誰の記憶にも残らない。

でも、その透明さがむしろ心地よい。


街角の古本屋のシャッターが開く。

積み上げられた本の背表紙が朝日に照らされて、静かに名乗りを上げるように光る。


「また探すのか」


「探すぴこ。本を、言葉を、人を。朝は全部を“始められる”ぴこ」


信号が青に変わる。

昨夜と同じ横断歩道を渡るのに、世界はまったく別の顔をしていた。

夜がくれた重さを、朝は静かに軽さへと変えていく。


わたしはカップの残りを飲み干し、空を仰いだ。

柔らかい光の中で、雲がひとつ、ふわりと形を変える。


それは一瞬、幻影鳥のように見えた。


「……また、会えるぴこかな」


問いに答える声は、もうなかった。

けれど、胸の奥に残った温度だけが、確かに「次の物語」を約束していた。

みんな、最後まで読んでくれてありがとうぴこ。


この三部作は、もしシリーズ「ぴこたん幻影譚」を読んでもらえるなら――

そのすべてにつながる“始まり”として書いたものぴこ。


ここから広がっていく物語も、ぴこたんと一緒に歩いてくれたら嬉しいぴこ!

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