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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

高次元エクトプラズム知性体

作者: 深水晶

 我は高次元エクトプラズム知性体、君たちにわかりやすく言うなら『神』に近い存在だ。


 我々の本来の姿は君たちには認識できないし、我々の言葉も理解できない。

 故に我々が君たちと何らかのコミュニケーション、あるいは意思疎通を図る場合、依り代として君たち、あるいはそれを模した代替品が必要になる。


 意思疎通がかなうのであれば、実は犬や猫など人にとって身近な生き物の姿でも構わないのだが、彼らは人の『声』に似た音を出すには向かないため、人に似た姿を取るか、人を依り代とするしかない。


 依り代にされた君たちの意思や魂はどうなるのかって?

 どうにもならないよ。

 我々が憑依を解けば、元通りだ。肉体的にも精神的にも後遺症もない。


 我々の憑依中に死んだり怪我をした場合はどうなるのかって?

 そもそも我々が憑依をしている間、君たちの肉体は高次元の存在となるので、君たちの次元に存在する物質やエネルギーで損傷することはないし、老いることもなければ病に冒されることもない。

 つまり我々の憑依が百年前後だったなら、憑依を解いたなら憑依前の続きの状態になる。

 そうだな、君たちにわかりやすく言うならば『浦島太郎』状態というべきか。

 憑依中の記憶が飛ぶこともないし、我々が憑依をしている間、感覚や思考を失うことはない。

 我々は君たちの意思を無視して憑依できるわけではないので、君たちの肉体を奪ったり、際限なく好き勝手に使えるわけではない。

 ただ、我はそうする意味も理由もないためしないが、人を壊してもかまわない道具と捉える悪党ならば、当人の意思を無視して催眠状態にして強制的に従わせるという可能性はある。


 我は同朋に個体名『ヴァルシャ・ローナ』と呼ばれている。

 我が追っている者、我が同朋三体を永遠に滅ぼした犯罪者、『あああああ』はおそらく其方の『幼なじみ』である『××××』はやつの憑依を受け、この星の破壊活動に勤しんでいる。


 何のためにそんなことをするのかだと?

 我に聞くな。そのようなこと、我が知りたいくらいだ。

 個体名『あああああ』は他者の嘆きや苦痛を楽しむ傾向があり、その対象は我々含め様々となるため、第一級犯罪者として指名手配されている。


 本来ならば思考すらも不可能な一億年の禁錮刑とされるはずだったが、我が同僚のミスで逃げられたらしい。

 同僚はその責を負い、三百年の再教育プログラムを受けることになった。

 そのためその時に降り悪く出勤して逃亡犯とすれ違った我がとばっちりをくらい、単独でやつを追う羽目になった。


 後日、応援部隊が駆け付ける予定だが、それまでに我はやつの潜伏先や逮捕するために必要な情報などを得たり同朋を迎える準備をしなくてはならないが、それを行うための知識がない。


 故に、君に協力を要請したい。


 嫌だと?

 拒否するのはかまわないが、その場合、高確率でこの辺り一帯は消滅する。

 君も君の家族も友人・知人も何もかも全てだ。


 我々には強制的に憑依する権限はないし、いかなる理由があれど許可されていない。

 だから君の自由な意志が尊重される。


 正直なところ、我々にとってはこの星が存在しようと消滅しようと大差はない。


 犯罪者が同朋の犠牲なく捕らえられれば良いが、実質的に不老不死な我々にとってはそれが数ヶ月後だろうと数千年後だろうと結果は変わらない。


 だから君たちが我々の要請を拒否しても許諾しても、どちらでもかまわない。

 しかし、我々は君たちの意思を無視して勝手に判断してはいけないと『上司』に命じられているため、一度は君たちに尋ね、その返答内容に従って今後の方針を立てねばならない。


 ……どうしたのだ? 突然大きな声を出して。

 やめろ? いったい何を?

 君に決断させるな、と?


 では、誰に尋ねたら良い?

 憑依されたのが君の隣の家に住む君の幼なじみだったから、君に尋ねれば良いと思ったのだが。


 なるほど、『国家元首』というのが君たちの代表なのか。

 正確には違う?

 世界会議?

 それはあと三日以内で回答が得られるのだろうか。


 何故三日以内なのか?

 それはやつのこれまでの所業から予測される。

 おそらく既にこの星の生命体に手をかけているだろうが、それは君たちの身体構造や習性を把握するためだ。

 時間をかけて死なない程度に甚振り解析してから、効果的に滅ぼす方法を考え、実行する。

 それにかかる時間が約三日だ。

 それより早くなることもあるが、『経験則』からいってそれより遅くなる可能性は非常に低い。


 やつはとても『気が短い』。

 享楽的で短絡的で、じっくり物事を考えるということがない。

 我々としてはようやく見つけたやつの行方がまたわからなくなるのはとても困る。


 やつを捕まえるまで、我に休息は許されないのだ。

 これがどれほど非道なことかわかるだろう?

 やつが逃亡してからこの星の基準で二百三十一日と二時間四十八.九二分だ。

 いくら我が高次元エクトプラズム知性体で、不老不死で不眠不休で働けるとはいえ、さすがにそろそろどうにかしたい。


 これまでいくつの星と次元が被害を受けたかって?

 二百三十一日と二時間四十八.九二分を三で割った数字だ。


 我はもういい加減飽きた。

 しかし『上司』の命令には逆らえない。

 今回失敗したら、我も再教育プログラム行きだ。

 だから協力を要請することにした。


 どうだろうか?

高校時代にプロット作成した厨二チックな長編冒頭を短編にアレンジしたもの。

主人公と幼なじみ、めちゃくちゃ可哀想。

ちなみに元の長編は「孤高の天才」の前日譚でした。

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