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余命宣告

あれから綾瀬には警察に行こうと言ったが、あまり大事にしたくないと言うので警察には行かなかった。なので、犯人たちの行方も分からないままだ。

それから、生まれて初めて身近な人の命の危険に直面した俺は、一つ心掛けようと思ったことがある。綾瀬は好奇心旺盛で危なっかしいので見守っておこう、ということだ。

事件以降、綾瀬は元気を取り戻していったので、俺は安堵しているが、それと共に綾瀬への恋心のせいで会う度に緊張していた。

「おーい、聞いてるー?」

そう言うのは綾瀬だ。あ、今は部活中だった。

「あ、うん、聞いてる」

「顔に嘘って書いてるけどー?」

「悪い悪い」

最近はずっとこんな感じだ。頭が回らない。

夏休みも残すところ、あと10日だ。告白するなら恋敵が現れにくい、夏休み中だろうとか考えてみる。そういえば今日は綾瀬とご飯食べに行く予定があったな。よし、今日告白しよう(俺はこう見えて有言実行するタイプだ)!

さっそく部活終わり、綾瀬とご飯を食べに行く。でも今は昼だ。告白するなら夜の方がロマンチックだろう。ご飯を食べながら聞く。

「なぁ綾瀬、今日は夜まで遊ばないか?」

「なにぃ!?君から誘ってくるとは…さては何が企んでるな!?」

あながち間違いではない。

「そんなことねーよ」

「まぁ、いいけどぉ〜」

よし、そうとくれば後は夜ご飯まで時間を潰すだけだ。

「カラオケでも行くか?」

「やったぁー!」

俺たちはファミレスを出てカラオケに向かった。

「ゆ゛ーあ゛ーお゛ーる゛う゛ぇ゛い゛す゛こ゛ーな゛ーひ゛ーま゛ーい゛ら゛ーふ゛…」

あゝ、なんということだろう。綾瀬の歌は絶望的だ。恐らく、これから俺がこのレベルの歌声を聞くことは死ぬまでないだろう。宇多田ヒ〇ルを汚すな。

以前の俺ならこのように問答無用で下手くそと野次を飛ばしていただろう。しかし、今の俺にそれは出来ない。

「どうだった!?」

「…」

「さては上手すぎてビビったな!?歌声だけは昔から自信があるんだよ!」

「…」

「よし、次いこう!」

こんな調子で時間は過ぎてった。どうも俺も歌が下手くそらしく、綾瀬には「米〇玄師を汚すな!」と言われた。どんぐりの背比べだろ。

退室時間になった頃、口を開いたのは俺だ。

「夜どこで食べる?」

「んー、無難にファミレスとか?」

「ありよりのあり」

「なにそれ!」

外は結構暗くなってきており、夏の終わりを感じさせる。

今年の夏は新しいことばかりだったな、と、振り返ってみる。来年は綾瀬に慣れた年になれば良いな、なんて思ったり。

ファミレスに着いた俺たちは、それぞれ好きなものを注文し、食べ始めた。

他愛ない話を交わしながら食べ進める。寝耳に水とはこのようなことだろう、その時は突然に来た。

「私、もうすぐ死んじゃうんだぁ」

…は?突然の告白に俺は耳を疑う。しかし、綾瀬は何事も無かったように食べ進める。聞き間違いか?

「実は余命宣告されちゃってるんだぁ」

…聞き間違いじゃなかった。綾瀬が死ぬ?バカ言え、こんだけ元気なのに…。

「実は血液の病気でね、誰にも言わずに事故死で済ませようって思ってたんだけど、君にだけは言いたくて」

なんで…

「実は8月1日に余命宣告されて、31日まで持てば奇跡だって言われちゃって」

綾瀬はテヘッと舌を出してみせる。は?

8月1日は俺が初めて綾瀬と出逢った日だ。そういえばっ…!と記憶を辿る。

「なんで…今まで言わなかったんだ?」

「だって、悲しんじゃうじゃん?私は人が悲しむところは見たくないからなぁ。でも君は悲しまなさそうだから今言ったの。早めに言った方がいいかなってね」

悲しむだろ。悲しいよ。

「…ドナーとかは?いないなら俺がっ…」

「私、ちょっと特殊みたいで、何かそういうの出来ないんだって笑笑」

なんで笑ってるんだ?

「死ぬのが怖くないのか?」

「そりゃ、20日前に余命宣告されてるからね。覚悟出来てるよ」

「…そうか」

言葉が出てこなかった。俺は今にも泣きそうだったが、人が悲しむところは見たくないと言っていたので必死に涙を堪えていた。

なぜだろう、綾瀬の顔は、晴れているのに雨が降っていた。

あれから5日ほど経った。俺はあの日、綾瀬を振り切って飛び出すようにファミレスを出てしまった。そして今は半分引きこもり生活を送っていた。

綾瀬からいくつか心配のLINEが来ていたが。まだ既読は付けていなかった。

ベッドに顔を伏せていると、家の呼び鈴が鳴った。親は仕事なので家には俺しかいない。居留守をしようかと思ったが…しつこいな、ずっと鳴らしてくる。すると聞き覚えのある声が。

「おーい、いるんだろー?出てこーい」

ああ、凜介か。俺は渋々玄関に行き、はーいっと言って扉を開けた。

「なんだよ凜介」

「なんだよとはなんだよ。心配してんだよ」

「なんで俺が引きこもってんの知ってんの?」

「綾瀬さんから聞いたんだよ。昨日ゲーセンで遊んでたら後ろから声かけられて。明日から入院することだけ伝えて欲しいってね。どうせ引きこもってんのは綾瀬さんが原因だろ?」

「それも綾瀬に聞いたのか?」

「いや、顔にそう書いてある。何があったかは知らねぇけど、綾瀬さんが好きなら後悔しないようにしろよ?それだけ。」

凜介はじゃあと言って家をあとにした。

そうだ。俺は綾瀬が好きだ。悔いがないようにしなければいけない。今のところ、後悔しかない。俺はLINEを返すよりも先に足が動いた。

こんにちは!こんばんわ!詩姫です!ep.5を読んでいただき、ありがとうございます(投稿が少し遅くなりました!ごめんなさい!)!これからもぼちぼち投稿してくので楽しみにしててください!それじゃ!

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