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太陽と雲

びっくりだ。この女、こんな華奢なのにこんだけ食うのか。それより…こんな量食えねぇよ!

ーー遡ること数十分前、学校を出て着いたのはラーメン屋はラーメン屋でも二郎系のラーメン屋だった。…この女、いかついな。

彼女曰く、「見た目で舐められちゃあ、困るからね。」とのこと。へー。

そして二郎系には俺のような奴が困ってしまうような時がある。それは、「コール」の時だ。

「綾瀬、二郎系来たことあるのか?」

「ないよ!」

「コールしたことは?」

「ないよ!ビビらないの!何事も挑戦だよ!」

そういえば、綾瀬はこんな女だ。

そうしているうちに、気付けば俺らの番だ。

「お姉さん、ニンニクどうしますか?」

「全マシマシの背脂早死に盛りで!」

「おっけー!お兄さんはどうします?」

やばい。頭が真っ白になって言葉が出てこない。

すると、綾瀬が耳打ちしてくれた。

「とりま全マシマシって言えばいいんだよ」

「全マシマシで!」

「了解!全マシマシ2つ入りました〜!」

ふぅ、助かった。

「ありがとう綾瀬、助かったよ」

「いえいえ!」

綾瀬は悪戯にニヤケている。何が面白いんだ?

間もなく、ラーメンが到着した。

「はいお待ち〜!普通の全マシマシ一つとお姉さんは全マシマシ背脂早死に盛りね〜!こりゃ、死んじゃうぜ?笑笑」

…え?え??何、この量?俺は綾瀬に耳打ちした。

「綾瀬、こんな量食えないよ」

「いや、君が全マシマシって言ったんだから食べきらないとダメだよね??ここ、お残し厳禁だよ〜?笑笑」

「いや、言わせたんだろ」

…やられた。全マシマシってそのままの意味か。俺はここに着いて2度目の頭真っ白タイムに突入した。

「いただきまーす!モグモグ…美味し〜い!」

そういって、綾瀬はどんどん食べ進める。やばい、俺も食わなければ…!

「いただきます…モグモグ…美味いな」

味に関しては絶品だ。これはなかなかに美味い。

「でしょー?ここ来てみたかったんだぁ〜!」

「こんなに食えるのか?」

「ん??あたりまえじゃん?」

当然のようにこんなこと言う。食ったもんどこに行ってんだ?お前の胃は四次元ポケットか?

俺も負けじとどんどん食べる。半分ほど食べ進めた頃、ふと綾瀬の方を見ると同じくらいの量を食べていた。…しかし、俺の目はそこではなく綾瀬の顔を向いていた。

左手で耳に髪を掛け、右手で啜っている姿が妙に色気づいて見えた。そして、それに対して俺は少し胸がキュンとなった。…やはり顔がいいからか?それとも…いや、それはない。

すると、綾瀬と目が合った。

「何?可愛すぎて見惚れた??笑」

「バカ言うな。」

「もぉ〜、自分に素直になりな!」

「余計なお世話だ。」

俺は、結局残してしまった。もちろん、綾瀬は食べきっていた。本当に凄いな。

しかし、ここでも太陽に雲がかかったのを見逃さなかった。そして、呟くように、「先生に怒られるかな」と言ったのも。

「罰金!?」

「はい、当店ではお残しをしてしまった場合、3000円を追加でお支払い頂くルールがございまして…」

聞いてない。また綾瀬にはめられたな…。隣にはまたもや悪戯な顔。

俺はしっかりと3000円を追加で払って店を後にした。

「おい綾瀬、あの量も罰金も聞いてないぞ!?」

「はて、なんのことかにゃ?」

「惚けるな!」

俺は精一杯の顔で睨むが、まるで虎の前にいる猫のようだ。

「まぁまぁ落ち着けよ子猫ちゃん」

俺はブツブツと愚痴を言いながら綾瀬の後について行く。

「次はどこに行こうかな〜?」

そんなことを言っていると、綾瀬の携帯が鳴った。

「おっとお母さんからだ、ちょいと失礼〜」

綾瀬は数分で戻ってきた。

「ただいま〜、ちょっと帰らないといけなくなっちゃった!ごめんねぇ〜」

「いや、いいよ。病院か?」

俺はふと、そう聞いてしまった。

「なんで知ってるの?」

「いや、昨日も病院の前見かけたし、さっきも先生に怒られるかもって…」

「私ったら、気付かぬうちにそんなことを…いけないいけない!心の声は外に出したらダメだねぇ〜」

「バカか。どこか悪いのか?」

「全然!ちょっと診てもらうだけだから気にしないでね!」

そりゃそうか、あんだけ食うんだもの。

「気にしねぇーよ」

そんな風に今日は別れた。

あれから1週間ほど経った。夏休みも中盤だ。

その間、何度か綾瀬に誘われてはご飯を食べたり、ショッピングに行ったりした。もちろん、部活では顔を合わせていた。

部活中に一度、こんなことも言われた。

「君って吸血鬼?」

俺はビクッとしたが、冷静になって答えた。

「な訳あるかよ。急にどうしたんだよ?」

「いや〜君、めちゃくちゃイケメンだし、いつも暗いっていうか、なんかサイコパスそうな顔しててこの絵みたいだなぁ、なんて笑」

そう言って本を見せてくる。

「バカか。それに俺はそんなにかっこよくねぇよ」

「いや、めちゃくちゃイケメンだよ!?初めて見た時ビビったもん。さぞモテるだろうなぁってね」

言われてみれば、吸血鬼は顔がいいと聞いた事もある。俺の家族も皆美男美女だ。

「いや、モテないし、告白されたこともしたこともないよ。」

「えぇー!?もったいなっ!」

「綾瀬こそめっちゃ顔いいじゃん。モテてるだろ?」

綾瀬はニヤけて、まぁねぇ〜と言う。

「でも彼氏とかはいないよ?みんな顔しか見てないからね」

「もったいねー、可愛いのに」

まずい、つい口が滑った。ふと綾瀬を見ると、顔が真っ赤になっていた。その後のことは気まずくてあまり覚えていない。

こんな風に、俺は綾瀬に振り回されてばっかりで、疲れ果てていた。だが、不思議なことに「楽しい」と思えている自分が確かにそこにはいた。

綾瀬は退屈でつまらないはずの俺の夏休みに光を当ててくれた。

しかし、一つ心当たりな部分がある。それは、日に日に綾瀬の顔に曇りが見えることが多くなっていることだ。

それは以前からあったことではあるが、最近は体調が悪そうな時や、無理に俺と遊んでいるような時もある。本人が大丈夫と言っているので、恐らく大丈夫なものなのだとは思っているが、それでも心配は心配だ。

それより、今日は二度目の補習の日だ。あー、ほんとめんどくさい。…とは思わなかった。綾瀬がいるからな。嫌でもモノクロの世界に色を付けてくれる。

「失礼しまーす」

そう言い教室の扉を開けると、そこには早く来ているであろう、綾瀬の姿がなかった。ことはなかった。

俺はこれでつまらなくならずに済むと、ホッと胸を撫で下ろした。

「おはよう、綾瀬」

「あっ!おはよう!今日も浮かない顔してるね!」

「うるせぇよ」

そんなくだらない会話を交わしながら俺らは教科書を開いた。

こんにちは!こんばんわ!詩姫です!ep.3を読んで頂き、ありがとうございます!これからもぼちぼち投稿していくので、楽しみにして頂けたら嬉しいです!では!

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