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「勇者ララ、聖剣と共に人類に仇なす魔王を討つのだ!」
玉座から立ち上がり、厳かに、しかしよく通る声で王はララにそう告げた。
ララはそれを受けると王の眼前まで歩を進め跪き恭しく聖剣を受け取る。
「…………」
──そして、そんなララの少し後ろで俺はララと同じように王を前に跪いていた。
もちろん望んでこんな状況になったわけじゃない。
さっきからお前誰だよって視線が痛いし、何なら聞こえるか聞こえないかくらいの声でちょくちょく罵倒が耳に刺さってきて辛い。
仕方がないのだ。
あの狂人が「跪く? なんで私が?」とか当たり前みたいな顔をして言ってのけたうえに「私だけ跪くなんて絶対に嫌。ハイト、あんたは私に跪きなさい」とか意味分かんないこと言ったせいなのだ。
そもそも本来だったらこんな場に俺みたいなのがいるだけでもおかしいのに……。ララの我が儘は当然の如く王都でもその鳴りを潜めることはないらしい。
そして、そのことを証明するかのような事件が式典を終えたのち、王が勇者であるララのために集めた精鋭の紹介の場で起きた。
「勇者よ、優秀な仲間たちを紹介しよう。共に魔王討伐の旅に出てもらいたい」
現れたのは、確かに優秀そうな冒険者たち。Aランクの魔法使いエリン、同じくAランクの僧侶マルコス、そして第三王子レオン。
「よろしくお願いします、勇者様。それにお付きの君も」
エリンがララに向かって丁寧に頭を下げる。美しい女性で、知的な雰囲気を漂わせている。
しかもたぶんいい人だ。明らかにこの場の異物である僕相手に笑顔を向けられるのだから間違いない。
「……」
うちの狂人はこの人の爪の垢を煎じて飲んだ方がいい。
そんなことを思いながら僕が挨拶を返すよりも一瞬早く、ララが言葉を口にした。
「──いらない」
そして、場の空気が凍り付いた。
「あんたも、あんたも、あんたもいらない。私一人で十分よ。雑魚は足手まといなだけ」
一人ひとりを指さしてララは何でもないことのように言ってのける。
今、指さしたなかにこの国の王子混ざってたけど大丈夫そ?
──当然、大丈夫な訳はなく、王宮は騒然となった。




