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7 まるで新婚のような



ネイトの家で暮らし始めて一ヶ月、私はすっかりここでの生活に馴染んでいた。

今ではネイトがいない間に一人で買い物に行って、ついでにカフェでお茶をしたりもしている。

もちろん外に出る時には魔女だとバレないように瞳の色を変える目薬をさしていた。

今日もお昼ご飯を食べて後片付けを済ませた私は、買い物袋を持って家を出た。


「あらレイナちゃん、今日もお買い物かい?」

「はい。今日は遠くの店まで行ってみようかと思って」

「そうなのかい?気をつけて行っておいでよ?」

「はい。いってきます」


大家さんが手を振って見送ってくれた。

こないだばったり大家さんに出くわした時、咄嗟にネイトの従姉妹だということにしてしまったけれど、これが一番無難な言い訳よね?

未婚のネイトに変な噂が立っても申し訳ないし・・・。






買い物を終えて店を出ると、外は雨が振っていた。

それも結構な土砂降りで。

どうしよう、傘を持って来てないわ・・・。

ここから家までは一時間くらいかかるし、困ったわね。

雨が止むかもしれないと思ってしばらく雨宿りしていたけれど、一向に止む気配がなかった。

仕方ない、走って帰るしかないわね。

私は荷物を胸に抱いて走り出した。


家に着いて玄関を開けようとすると鍵が開いていた。

あれ?

もう帰って来てるのかしら。

中に入ると、驚いた顔をしたネイトが駆け寄ってきた。


「レイナ!ずぶ濡れじゃないか!」

「遠くまで買い物に行ってたから。体を拭いたらすぐにご飯を作るから待っててね」

「このままじゃ風邪をひいてしまう。すぐにシャワーを浴びた方がいい」

「でもご飯が遅くなっちゃうから」

「食事は後でいいから」

「わかった・・・」


私はお言葉に甘えて先にシャワーを浴びることにした。

体も温まったし、さあご飯を作ろうとすると、キッチンにネイトが立っていた。


「何してるの?」

「料理をしている」

「え?ネイト作れるの?」

「いや、簡単なものしか作れない」

「今は?何を作ってるの?」

「オムライスだ」

「オムライス??それって難しい料理よ??」

「そうなのか?簡単だと思っていたんだが・・・」

「卵の半熟具合が難しいのよ」

「半熟?」


ネイトがきょとんとした。


「ちょっと待って!やっぱり私が作るからどいて!」

「な!私が責任を持って最後まで作るから、君は座っていてくれ」

「ネイトには任せられないわよ」

「大丈夫だ。同僚にもたまに作っている」

「そうなの?」

「あぁ。意外と好評なんだ」

「へぇ〜」

「信じてないな?」


ネイトが作ってくれたオムライスは見た目とは裏腹にすごく美味しかった。


「これからはネイトに作ってもらおうかな?」

「いや、私はレイナの料理がいい」

「ふふ、そっか」






今日もあっという間に就寝の時間になったので、私はソファに布団と枕を持って来て寝床を整えた。

同居を再開した時、ネイトがベッドをもう一台買おうかと言ってくれたけど、ソファで十分よと言ってお断りしたのだ。

なので今日もいつものようにソファで寝ようとしたのだけれど・・・寒気がして眠れなかった。

私はキッチンへ行ってお湯を沸かすと、自分で調合した風邪薬を溶いて飲んだ。

ふぅ〜あったかい・・・。


「どうしたんだ?眠れないのか?」


ガウン姿のネイトがキッチンに入って来た。


「う、うん。ちょっと寒気がして」

「風邪をひいてしまったか?」


ネイトは私の額に手を当てて体温を確かめた。


「熱があるな」

「大丈夫。いま風邪薬を飲んだところだから」

「レイナがベッドを使ってくれ」

「いいわよ悪いから」

「だめだ。君が使ってくれ」


そう言ってネイトが私をベッドに横たわらせてくれたけど、体がガタガタと震えて眠れそうもなかった。


「大丈夫か?」

「うん。そのうち薬が効いてくると思うから」

「すまない。この家には暖炉がついていないから寒いだろう」

「寒いのには慣れてるから大丈夫よ。私は山に住んでたんだからね?」

「ははっ。そうだな」


ネイトが広間に行ってからどれくらい経っただろう。

やっぱり眠れる気がしなかったので、小説でも読もうかと思ってランプをつけると、ネイトが寝室に入って来た。


「レイナ、まだ眠れないか?」

「うん・・・」


すると突然、ネイトが布団をめくってベッドの中に入って来た。

えっ??


「ネイト?」

「こうしたら温かいだろう?」

「う、うん。温かいけど」

「今日はこうやって寝よう」


そう言ってネイトが私を抱きしめた。


「ネ、ネイト??」

「恥ずかしいか?」

「うん。すごく」

「ははっ。そんなことを言っている場合じゃないだろう?まずは体を温めないと」

「そ、そうだけど」


これじゃ違う意味で眠れないかも・・・そう思っていたけれど。

ネイトの体は私より体温が高いのか、包まれていると心地よくて、私はいつの間にか眠りについていた。



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