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3 魔物の脅威



ネイト視点


  ↓


レイナ視点





「緊急招集だ!」


第三騎士団の騎士が慌てた様子で訓練場に入ってきた。

訓練中だった私たち第一騎士団は、持っていた真剣を下ろして彼の次の言葉を待った。


「ロドアナ山にレッドグリズリーが出たそうだ!手が空いている者はすぐに西門に集まってくれ!」


私の心臓がドクンと音を立てた。

ロドアナ山はレイナの店がある山だった。

あの山はそんな大型の魔物が出る地域ではないはずだ。

それなのになぜ!?

鎧を着けてすぐに西門へ向かうと、すでに30名程の騎士が集まっていた。


「ネイト!お前も来たのか!」

「団長、どういうことですか?レッドグレズリーがなぜロドアナ山に??」

「隣国のドナーベンから流れて来たようだ。先月の山火事で食糧難になったのかもしれないな」


なんということだ。

そこまで考えが及ばなかった。


「団長!編成を待っている時間はありません。私は先に行かせてもらいます!」

「は?ちょっと待て!一人で行く気か!?」

「すみません!」


私は団長の制止も聞かずに走り出していた。

先月レイナの店の柵を補強したばかりだが、相手がレッドグレズリーでは歯が立たないだろう。


「その馬を貸してくれ!」


私は同僚が連れていた馬に飛び乗った。


「お、おい!ネイト!」

「すまない!先に向かう!」


レイナ、頼むから無事でいてくれ!!







今夜は冷えるわね・・・。

夕刻から降り出した雪がしんしんと降り続いていた。

湯あみを終えた私は、キッチンに置いてあったランプを持って寝室へ移った。

これから眠るまでの時間は、ベッドで小説を読むのが私の日課だ。

ネイトに買ってきてもらった小説があと少しで読み終わるのよね。

私はサイドテーブルにランプを置いてベッドに入った。

するとその時。


バキバキバキバキッ


何かしら??

何かを叩き壊すような大きな音が聞こえた。

まさか・・・魔物??

カーテンの隙間からそっと窓の外を覗くと、大きな黒い巨体が庭を囲っている柵を殴りつけていた。

なんなの!?

見たこともない魔物だった。

体長は優に2メートルを超えていて、振り下ろす腕は巨木のように太かった。

あれで叩かれてしまえば人間なんてひとたまりもないだろう。

どうしてあんな魔物がこの山に!?

背筋に冷たいものが走った。

魔物は柵を壊してこちらに来ようとしている。

どうすればいいの!?

外に逃げる?

でもきっと私の足じゃすぐに追いつけれてしまうわ。

やっぱり無理をしてでも馬を飼っておくんだった・・・。

そんなことを考えている間にもバキバキバキという音は続いていて、魔物は一向に諦める気配はなかった。

とりあえず外に逃げる時のために上着を着ないと!

そう思ってコートを掴んだ時だった。


ガシャーンッ!!


「きゃあ!!」


寝室の窓が割れて、カーテンが引きちぎられ、何かが姿を現した。

熊のような顔と太い前足だ。


「いや・・・」


私は後ずさって寝室の壁に身を寄せた。

魔物は私に向かって前足を振り回していたが、窓枠にはまって身動きが取れない様子だった。

に、逃げなきゃ・・・。

私は無我夢中で外へと飛び出した。

雪が降っていて視界は悪かったけれど、ここは私の庭だ。

私は迷わず坂道を駆け降りた。

馬車の停留所まで行けばうちよりは立派な建物がある。

そこへ立てこもれば朝までは無事でいられるかもしれない。

でも魔物に追いつかれずに辿りつけるかしら。

そんなことを考えながら走っていると、後ろからドッドッドという音が聞こえて来た。

魔物の足音だわ!

そう思った次の瞬間、背中に何かの衝撃を感じて、私は地面に叩き付けられた。


ズサササササッ


「う・・・」


背中に痛みと共に温かいものを感じた。

爪で引き裂かれてしまったのかもしれない。

起き上がろうと地面に手をつくと、雪がじわっと赤く染まった。

上体を起こすと、魔物は私に向かって威嚇の体勢を取っていた。

だめ・・・もう逃げられない、と死を覚悟した時。


「レイナ!!」


彼の声が聞こえた。

振り返ると、馬に乗った彼が大きな剣を振りかざしていた。


「伏せろ!!」


私は咄嗟に身を伏せた。

ネイトはそのまま魔物の元へと飛び込むと、剣を振り抜いた。


ザンッ


「グオォォ〜!!」


顔を切りつけられた魔物は、悲痛な叫び声を上げながら地面に転がった。

ネイトはすぐに方向転換をして私の元へ駆けつけると、私を抱き上げた。


「痛むだろうが我慢してくれ!」


そのまま私を馬の背に担ぎ上げると、後ろに飛び乗って馬を走らせた。


「魔物は・・・」

「騎士団が来るから大丈夫だ。今は傷の手当てが先だ」


痛みのせいなのか、意識が朦朧としていた。


「もう少し我慢してくれ。麓の治療院に行く」

「えぇ」


まさか助けに来てくれるなんて・・・。

私はネイトに抱きしめられたまま意識を失っていた。



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