21 この国であなたと
最終回です☺️
「レイナさん、こんにちは!」
「あ、キースさん、いらっしゃい!」
「チキンステーキ弁当を5つお願いします」
「ありがとう!すぐに準備するわね」
私は鉄板で焼いていたチキンステーキとガーリックライスを紙パックによそうと、仕上げにソースをかけてプチトマトを添えた。
「レイナさんのお弁当、騎士団でもめっちゃ好評ですよ!」
「そう?いつもありがとう」
紙袋にお弁当を5つ入れてキースさんに渡すと、3000レギンを受け取った。
「またよろしくね!」
「はい!また来ます!」
私は一ヶ月前から、王都の屋台通りにお弁当屋さんを出店していた。
またネイトと暮らし始めた私は、ここで生きていく、と決めて王都で仕事を探すことにしたのだ。
するとネイトが料理に携わる仕事が向いているんじゃないか、と助言してくれて。
初めは喫茶店やレストランの求人を探していたけれど、お店を一人で切り盛りすることに慣れていた私は、一大決心をして屋台でお弁当屋さんを開くことにしたのだった。
すると意外にも売れ行きは好調で、このままいけばどうにか生計を立てられそうだな、と私は思っていた。
17時になって閉店の準備をしていると、愛しい人の声が聞こえた。
「レイナ、今日はどうだった?」
「あ、ネイトおかえりなさい。今日もすごく売れたわよ?」
「ははっ。そうか。そのうち自分の店を持てるかもしれないな」
「ふふ。そうなったらいいわね」
ネイトにも屋台の片付けを手伝ってもらって二人でアパートに帰ると、玄関の前にキースさんが立っていた。
「二人ともお疲れ様です!」
「キースさん、どうしたの?」
「みんなで飲みたくなって来ちゃいました」
そう言ってキースさんがワインを掲げた。
「キースすまない。実は今日は先約があるんだ」
「え??そうなんですか??」
「あ、でもせっかくだからキースさんもどうぞ?」
「え?いいんですか?」
「えぇ。人数が多い方が楽しいだろうし」
「ありがとうございます!!」
それからすぐにディナーの準備に取り掛かって、広間のテーブルに料理を並べ終わると、玄関のドアをノックする音が聞こえた。
「あ!来たみたい!」
急いでドアを開けると、黒髪に赤い瞳の彼が立っていた。
「ユキいらっしゃい!」
「待たせたか?」
「いいえ、丁度いい時に来てくれたわ。あれ?髪切ったの?」
ユキは胸まであった髪を耳が見えるくらいまで短く切り揃えていた。
「変か?」
「ううん。似合ってるわよ?」
「ははっ。当たり前だろ?」
「じゃあ聞かないでよ!」
ユキを連れて広間に戻ると、キースさんがこちらを向いて深々と頭を下げた。
「あの節はありがとうございました!!」
「え??キースさんどうしたの??」
「ドナーベンとの紛争の時に助けていただいた方ですよね?」
そういえばキースさんにも伝えてたんだっけ。
「あぁ、あれか・・・。あれは別にレイドラントのためにしたことじゃない。丁度帰り道で邪魔だったから全員眠らせただけだ」
「で、でもそのおかげで停戦になって両国が和解したんですよ!マジであなたのおかげです!ありがとうございました!!」
あれからドナーベンの第三王子が逃亡のために山賊を雇っていたことが判明したとして、国連が動き出した。
するとドナーベン側が謝罪して、レイドラントに第三王子の引き渡しと賠償金を払うことで和解に至ったのだった。
「まぁ、感謝の気持ちは素直に受け取っておくか」
ユキはそう言ってキースさんの肩に手を置いた。
「はい!今日は朝まで飲みましょう!明日は休みなんで!」
「ははっ。仕方ないから付き合ってやる」
なんだかユキすごく偉そう・・・。
まぁ昔から誰にでもこうなんだけど。
キースさんとユキはとても気が合うようで、ディナーが始まってからも二人でお酒を飲みながら盛り上がっていた。
「ユキが楽しそうでよかったわ。キースさんのおかげね」
「そうだな。私はユキ殿のおかげでキースに付き合わなくて済んでいるしな」
「あははっ。じゃあ今日は苦い薬を飲まなくて済みそうね」
「あぁ。助かった」
日付が変わる頃にはキースさんとユキはベロベロになって広間で寝てしまった。
二人に布団をかけて寝室に行くと、お風呂からあがったネイトがベッドに座って待っていた。
「先に寝てくれて良かったのに」
「レイナを待っていた」
「そうなの?」
「あぁ。今日は二人がいたからレイナに触れられなかったからな」
ネイトはそう言うと、私を両足の間に引き寄せた。
「だから寝る前に充電させてくれ」
「ふふっ。仕方ないわね」
私が両手で彼の頬を包み込んでキスをすると、ネイトが目を細めた。
「それでは全然足りない」
「え?きゃあっ」
ネイトは私をベッドに押し倒すと唇を押し付けてきた。
「んんっ。ちょっとネイト、広間に二人がいるんだから」
「大丈夫だ。酒に酔ってるからちょっとやそっとじゃ起きない」
「だ、だめ。明日にしましょう?ね?」
「すまない。私も酔ってしまっているかもしれない」
ネイトはそう言いながら私のブラウスの中に手を入れてきた。
「ちょっ、ネイト?」
ネイトの手が徐々に這い上がってきて私の胸に触れそうになった時、ネイトがパタッとベッドに倒れ込んだ。
え・・・?
「ネイト?」
私がネイトの肩に触れようとすると、ギイッと寝室の扉が開いて、泥酔して寝てしまったと思っていたユキが私を見下ろしていた。
「お前ら・・・隣に俺たちがいるってのに何しようとしてるんだ?」
「ユ、ユキ、起きてたの??まさか、ユキがネイトを眠らせたの?」
「あぁ。お前が襲われそうになってたからな」
「こ、これはただのスキンシップでっ」
「この国では結婚するまでこういうことはしないのが普通なんだろ?」
「そ、そうだけどっ」
「レイナ、これから結婚するまでイチャつくことは出来ないと思え」
「え??冗談でしょ?」
「さあ、どうだろうな?そういう魔法がないわけでもない」
「もうユキ!」
私が枕を投げつけると、ユキがヒョイっと避けて逃げていった。
「ははっ。相変わらずコントロールが悪いな」
「待ちなさいよ!」
ネイトとキースさんがぐっすり眠る中、私たちは一汗かくまで枕を投げ合っていたのだった。
翌年の春、私はネイトと結婚した。
私たちは結婚式は挙げずに、お世話になった人たちを招待してレストランでお披露目パーティーを開催した。
その時のレストランがすごく気に入ってしまった私は、将来そのレストランを買い取って自分のお店をオープンすることになるのだけれど、それはまだまだ先のお話。
「わぁ、すごく綺麗」
先程役所に婚姻届を出した私たちは、国立公園の桜並木を歩いていた。
そういえば去年はネイトとここに来られなかったのよね・・・。
あの時はネイトと結婚するなんて思いもしなかったわ。
そんなことを考えながら結婚指輪を見下ろしていると、ネイトが私の手を引っ張った。
「あそこがいいんじゃないか?」
「ほんとね。そこにしましょう」
芝生の上に絨毯を広げて木漏れ日の中に座ると、ネイトが膝にブランケットをかけてくれた。
「まだまだ冷えるからな」
「ありがとう」
一緒にサンドイッチを食べ終えた私たちは、二人でブランケットにくるまって桜を見上げていた。
「寒くないか?」
「えぇ」
ネイトが後ろから抱きしめてくれているから温かくてウトウトしてしまって、私はネイトの腕に頭を預けた。
「眠いなら寝てくれ」
「ううん。なんだか寝るのがもったいないわ」
「今のうちに寝ておいてくれ。今夜は眠れないだろうから」
「え・・・?」
「レイナ・・・今夜は覚悟しておいてほしい」
ネイトはそう言って私の頬にキスをした。
覚悟ってまさか・・・初夜のこと?
「は、初めてだから、お手柔らかにね?」
「・・・すまない」
「え?」
その謝罪がどういう意味なのか、この日の夜私は身をもって知ることになったのだった。
Fin
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
レイナがネイトと結ばれて天職に就くことが出来て良かったです。
今からハッピーエンドのキーワードを追加しようと思います。笑
ブックマーク、評価、リアクションを頂きましてありがとうございました!
次回作も機会がありましたら覗いてみてください☺️
ぽーりー




