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14 祖国へ



レイナ視点


  ↓


ネイト視点





「ユキ?」

「久しぶりだなレイナ」


ユキは赤い瞳を細めて笑った。

短かった黒髪は胸元まで伸びていて、私の知る彼よりも少し大人びていた。


「どうしてここに?」

「お前を助けに来たに決まってるだろ?」

「え?」

「レイドラントで魔女狩りが流行ってるって聞いて心配になってな」

「魔女狩り?」

「ははっ。やっぱり知らなかったか」

「えぇ。知らなかったわ」


魔女が襲われたところで、この国ではニュースにならないだろうし・・・。

もしかしてこの男たちが一連の犯人なの?

男たちは未だに同じポーズのままで動きを止めていた。


「どうする?腕の一本でも折っておくか?」

「だめ!とりあえず眠らせてくれる?」

「レイナは相変わらず甘いな」


ユキはそう言うと、魔法で彼らを眠らせて床に転がした。

別にこの人たちを庇ったわけじゃなくて、ユキにそんなことさせたくなかっただけなんだけど。


「ごめんね。ありがとう助けてくれて。こんなに遠くの国までわざわざ来てくれたの?」

「転移魔法を使えばそこまで遠くもない。1日かかったけどな」

「え??すごい・・・馬車でも5日はかかるのに・・・」

「俺を誰だと思ってるんだ?」

「そうよね。魔法学院で常に首席だったあなたなら、驚くことじゃないわよね」

「まぁ、万年ビリだったお前には理解が出来なくて当然だけどな」

「ちょっと!黒歴史を思い出させないでよ」


私は魔導師のくせに生まれつき魔法が使えなかったので、昔から親や周りから期待されないどころか、いない存在のように扱われてきた。

それでも魔法学院には一応入学させてもらえたけれど、魔法第一主義の学校にはまったく馴染めなくて。

18歳になった時に祖国を出てレイドラントに来たけれど、やっぱりここにも私の居場所はなかった。


「レイナ、今はこの国に留まるべきじゃない。こいつら以外にも魔女狩りをしてる奴らがいるかもしれないしな。一旦スカンシュナに帰るぞ」

「でも私に帰るところなんて・・・」

「俺の家に住めばいいだろ?今は首都で暮らしてるから」

「え?家を出たの?」

「三年前にな」

「そうだったんだ・・・」

「ほら、行くぞ。荷物をまとめろ」

「わかった」


どうせこの国を出ようとしていたところだったから丁度良かったのかもしれない。

どこの国に行くのかはまだ決めていなかったけれど、ユキがいてくれるなら祖国に帰ってもいいんじゃないかと思えた。

荷物を持った私は、庭先に出て我が家を見上げた。

この家ともお別れね・・・。

この国で過ごした6年間は決して無駄なものではなかった。

初めて愛する人と過ごす喜びを知ることが出来たから・・・。


「ほら、掴まれ」

「うん」


ネイトへのこの想いも思い出もこの国に置いていこう。

私はユキが差し出した手をぎゅっと掴んだ。

さようなら・・・ネイト。








私は彼女の家までの道のりをなぜか覚えていた。

馬を走らせて2時間、丸太の柵に囲われた家が見えてきた。

あれだ!

馬を降りた私は店の扉をノックした。

しかし彼女は不在なのか、何の応答もない。

ここに住んでいないのか?

窓から中を覗いて見ると、店内がめちゃくちゃに荒らされていて、カウンターの側に二人の男が倒れていた。

なにがあったんだ??

急いで中に入って呼びかけると、男たちが目を覚ました。


「くそ・・・なんだったんだ?」

「あの女はどこに行った?」


あの女?


「おい、お前たち。ここにいた女性を知らないか?」

「はっ?お前誰だよ?あの女の知り合いか?」

「おいやべぇ!こいつ騎士だぞ!逃げろっ!」


私の装いを見た男たちが慌てて店から出て行った。


「おい!待て!」


男たちは私の制止も聞かずに馬に乗って行ってしまった。

彼女はどこだ?

顔も思い出せないというのに、なぜか彼女への恋しさが込み上げてきた。

きっと私にとって大切な人だったに違いない。

会えば何か思い出せるのではないかと思っていたが・・・彼女はどこに行ってしまったんだ?


それから私は休みの度にここを訪れてみたが、彼女に会うことは叶わなかった。



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