13 魔女狩り
ん・・・もう朝なのね。
昨夜久しぶりに我が家に戻った私は、寝室だけ軽く掃除を済ませてベッドに入った。
けれどネイトのことや今後のことを考えるとなかなか寝付けなくて、私は久しぶりに睡眠を促す魔法薬を作って飲んだ。
そのおかげか今朝の目覚めはすこぶる良くて。
我ながらよく効く薬ね!
ネイトのために作っていた頃が懐かしいわ・・・。
あ、だめだめ!
ネイトのことはもう忘れないと!
ネイトだってもう私のことを忘れてしまってるんだから・・・。
気を取り直すために熱いシャワーを浴びた私は、さっそくこの国を出る準備を始めた。
もうここには戻って来ないだろうから、持っていけない物はすべて燃やしてしまわないと・・・。
私は薬草や動物生薬などを庭先に出して火をつけた。
もったいないけれど、この家を見つけた人に悪用されても困るしね。
これで全部かな?
カウンターの棚が空になったのを確認していると、馬の蹄の音が聞こえてきた。
こんな時間にお客さん・・・?
窓の外を見ると、二人の男性が馬から降りて店に入って来た。
「ここは魔法薬の店か?」
「はい。そうですが・・・」
「お前、魔女か?」
「え?」
「でもこの女、瞳が赤くないぞ?」
「確かにそうだな」
そうだ。
昨日の夜ネイトの家を出る時に目薬をさしたから、効果がまだ続いているんだわ。
「あの、どのようなご用件でしょうか?」
「俺たちは魔女を探してる」
「魔法薬をお買い求めで?」
「そんなところだ。店主はどこだ?」
「ただいま薬草を摘みに行っております。戻るのは夜になるかと・・・」
私は咄嗟に嘘をついた。
どう見てもこの男たちは怪しかった。
「ちっ。いないのか」
「どうする?」
「ふんっ。ここまで来てこのまま帰れるわけないだろ?」
「そうだな」
男たちはニヤリと笑ったかと思うと、カウンターに並べてあった瓶を薙ぎ払った。
パリーンッ!
「きゃあ!!」
「店にあるもんは全部壊せ!」
男たちは手当たり次第に物を壊していくと、テーブルや椅子を蹴り倒してカウンターの中にまで入ろうとしてきた。
「やめて!!」
「はははっ!どけ!邪魔だ!」
男が拳を振りかぶった瞬間、私はぎゅっと目を閉じた。
すぐに衝撃が来るかと思ったけれど、いつまで経っても殴られることはなくて・・・。
恐る恐る目を開けると、男たちはまるで時間が止まってしまったかのように静止していた。
え・・・?
何が起こったの?
目を瞬いていると、コツコツという靴音が聞こえて。
「レイナ、大丈夫か?」
聞き覚えのある男性の声がした。
私が驚いて振り向くと、そこには懐かしい人が立っていた。