Prologue. 凄惨な公爵の息子
始めます.
この俺が誰だか分かっているのか?
俺は王国に二つしか存在しない公爵家の一つであり、大陸最強の武家と称される「デオドル」唯一の後継者だ。
王国を左右できるほどの強大な権力、そして叶わぬものなどないほどの財力がいずれ俺のものになる予定だ。
だが、もう終わった。すべて投げ出してしまいたい。
ああ、死にたい、本当に……。くそっ!あの忌々しい父親のせいで、このクソみたいな場所に来てから何もかもがめちゃくちゃになっちまった!
「おい、前でうろちょろしてんじゃねえよ。ちょっとどけよ、この野郎!」
教室の扉を通り過ぎた少年は、後ろから押され、ドンッという音と共に後頭部を殴られ、罵声を浴びせられる自作家門の同級生の行動に立ち止まった。
そして、まるでそれが日常の些細な出来事であるかのように、殴った相手がそのまま走り去っていくのを睨みつけ、腰の剣の鞘に手をかけた。
『くそったれめ!俺がうろうろしていたって?俺は確かに真っ直ぐ歩いていただけだ!そもそもお前こそ、アカデミー内で走るのは禁止って知らねえのか?』
と心の中で叫びながら、再び肩を落とし、力なく歩き出す少年だった。
ジオン王国の王都レドオラの南東に位置する騎士アカデミー「ライオン砦」。
ライオン砦は350年の歴史を誇る由緒ある名門アカデミーであり、多くの英雄を輩出し、王都に存在する7つの騎士アカデミーの中でも最も高い評価を得ていた。
入学を希望する者たちは全国から集まり、その競争率は非常に高かった。
ここに入学するためには、文武両道で秀でていることが求められた。
そのため、ライオン砦の騎士見習いたちは「俺はすでに十分な資質を備えているからこそ選ばれたのだ」という意識をアカデミーで叩き込まれ、皆が自分自身に大きな誇りと自信を持っていた。
その誇りと自信こそが、恐れずに敵に立ち向かい、守るべき人々に信頼を与える「騎士」の力の源だった。
しかし、肩を落とし、深く頭を垂れたまま、孤独な昼食時間を迎えているこの少年、クラウゼルは他の騎士見習いとは異なっていた。
『くそったれ。』