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第1話 努力の先にある希望-1-

 ダレク少年は眠りから覚め、勢いよく起き上がった。心臓が鼓動を早め、汗が額を流れていた。酷い悪夢を見たからだ。


 彼はまだリリエルという名前すら知らない。夢の中で愛したその存在も、一騎打ちで対峙したマクシムという少年も、今はただの幻に過ぎない。しかし、その夢はあまりにも現実味を帯びていた。リリエルが他の男に微笑む姿、マクシムが笑顔で彼女を守る姿、それらがダレクの心に深く突き刺さっていた。


「ただの夢だ……そうだ、夢に過ぎない」


 彼は自分にそう言い聞かせるが、胸の奥に残る不安は消えない。夢の中で見た未来の断片、学園での孤立、リリエルとの別れ、そして、命を落とす瞬間。そのすべてがまるで実際に経験したかのように生々しかった。


「何なんだ……これは?」


 ダレクはベッドの上で膝を抱え込み、夢の内容を振り返る。学園祭の後、彼がリリエルを強引にデートに誘った瞬間、マクシムが彼女を守るために現れた。その時、彼の胸に渦巻く嫉妬と怒りに任せて、手を上げてしまった自分の姿が頭にこびりついていた。そして、それをきっかけに彼の人生が大きく狂っていく――婚約の破棄、家名の失墜、そして孤独な死。


 まだ八歳の少年には、それが何を意味するのか完全には理解できなかった。ただ、その夢が警告のように思え、未来が定められているかのような不安が彼を包んでいた。


 エラナル伯爵家は、王国建国以来続く名門であり、王都を中心とする王室直轄領に隣接した広大な領地を持っている。ダレクは次期伯爵として、王立学園に入学する十二歳までの間、本邸で英才教育を受ける予定だ。政治学、語学、社交術、哲学、文化、芸術など、様々な分野の教育が行われる。午前中、歴史の授業が行われていたが、ダレクは上の空の様子だった。


「ダレク様、少しお疲れのご様子ですが、休憩にいたしましょうか?」


 教師は心配そうに声をかけたが、ダレクは「いや、続けてくれ」と短く答えた。しかし、授業に対する集中力は途切れたままだった。昼食や他の授業を受ける間も、どこか魂が抜けたような様子で、側仕えの者たちも心配していたが、結局その日をなんとかやり過ごした。


 夜、ダレクはベッドに横たわり、再び夢の内容に思いを巡らせた。あれはただの夢なのか? いや、そうではない。何か未来を予知する力が自分に宿ったのだろうか。そんな考えが、彼の頭から離れなかった。もしあの夢が未来を示すものであるなら、彼には時間が残されている。今からその未来を変えるために、努力するしかない。

 

 夢の中で見たダレクは、十歳で社交界デビューを果たし、その後リリエルとの婚約が決まった。それを機に、彼は自分が同世代の子女たちよりも優れていることを自覚し始めた。不幸なことに、彼は天才だった。不真面目な態度でも、周囲よりはるかに優秀で、王立学園の入学試験でも3番目の成績を収めた。だが、その優越感は彼を孤立させ、最終的にマクシムとの一騎打ちで敗北を喫することになる。その後、ダレクの評判は地に落ち、リリエルとの婚約は破棄された。


 「そうはさせない……」


 ダレクはベッドの中で静かに決意した。未来を変えるために、誰よりも努力し、必ず幸せな未来を掴んでみせると。

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