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狭間に見る夢

 ゆらゆら、ゆらゆらと揺れる風景。寄せては返す、それはさながら波のように。

 ふわり、ふわりとたゆたい、わたしは半ば眠るような心地でそこにいた。

 そこは霧がかった乳白色の海。

 わたしは一糸纏わぬ姿のまま、一人浮かんでいる。

 わたしがなぜここにいるのか、ぼんやりした頭ではわからない。

 ただ、とても大事なことをしていた気がする。

 ずっと探していたそれを、ようやく見つけて掴んだはずだ。


 それはとても大事なこと。

 それはとても大切な人のために必要なこと。

 それはわたしに必要なこと。とても大切な人のために。

 それはとても大事なこと。とても大切な人に償うために。

 それはわたしに必要で、とても大事なこと。たとえ許してもらえなくても。


 そうだ。わたしは最初彼の絶望を忘れさせようとして。

 でもそれはわたしのエゴだって彼女に気づかされて。

 だから本当に彼の助けになることを、必死で、探して。


 ――命をかけることだって、躊躇わなかった。


 ふと霧が晴れて、一つの光景を映し出す。

 わたしが知っているよりもずっと大人びた仁がテレビでよく見るユニフォームに身を包み、インタビューを受けている。

 仁は真っ直ぐにインタビュアーに答えている。

 誇らしげなその顔を見て、わたしはよかった、と思った。

 

 よかった、上手くいったんだ。


 画面が少し横にずれる。

 仁の隣にいる女性が映る。顔はよく見えない。

 それはわかっていたこと。

 わたしのいない世界で、わたしじゃない女性に仁が微笑みかける。

 それはわかっていた、選択の結末。

 だからこれでよかった。いいはずなんだ。

 だってわたしは誓ったんだから。

 彼のためにこの身を尽すと。


 

 でも――

 でもやっぱり――

 仁の隣にいるのがわたしじゃないのは、寂しいよ――

 

 わたしは目の前の光景に笑みを浮かべようとして、結局失敗した。




 ゆらゆらと、目の前の情景が滲んで見えなくなって。

 わたしの意識はまどろみの中、海へと溶けるように、消えていった。


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