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第三話「オドの魔物」

オド・テンペスタについて、こんな話もある。秩序が乱れる時

神により強制的に乱れを修正される。その手段として起こされるのが

流れが狂ってしまったオドを正すべく事象を起こす。



「一度だけ見た事もあったし、実戦したこともある。先に、

控えているものもある。お前がやれ、レイラ」

「私がやるの!?」

「今回だけだ。補助はしてやる。破壊してからが、本番だからな」


不穏な事を口走っている。惨劇を目の当たりにしたキースの言葉には

重みがある。オド・テンペスタの勢いは増すばかりだ。長引かせると

修復できない程に世界のマナが枯渇する。


「それに、補助はキースだけじゃないわよ」

「ミッシェル…!分かった、よく分からんけどやってみる」


大気が震える咆哮が轟いた。ドラゴン、か。魔法陣から姿を

表した。体に現れた線が力を知らしめるように発光する。

あれは神の遣いと称されるオドの魔物。竜の形をしているが、あれは

マナの塊だ。


「魔法陣の破壊は、任せた」

「キース」

「ん?」


レイラに名前を呼ばれて、顔を向けた。腰まであるラピスラズリの髪が

大きく揺れ動く。


「気を付けてね。私、頑張るから」

「…あぁ」


キースの背中から大きな蝙蝠のような羽が現れる。鋭い牙が露わになる。

ドラゴン相手に手抜きなど出来るはずもない。吸血鬼の顔だ。彼は

この側面を嫌っている。護る為なら、仕方ない。


「三分だけ、な」



「さぁ、レイラ。私がしっかりサポートするからね」


大きくなっている魔法陣。狙いは定まるが、妨害だってある。

頑丈な魔法陣、分かりやすいように扉と称する。その扉は非常に

頑丈である。


「<運気(フォーチュン)付加(エンチャント)上昇(アップ)>」


付加術を操るミッシェル。運勢は神の領域だ。彼女の扱う

運気付加は人間の領域内で行われているので彼らの領域には踏み込んで

いない。


「大丈夫。貴方の魔術なら、必ずどうにか出来る」

「うん」


ミッシェルに渡されたのは銃だった。二丁拳銃。レイラは理解

しているだろうか。この二丁拳銃、非常に特別なものだ。この世に

二つとない物だ。


「使って。これもまた、運命よ」

「ありがとう」


二丁拳銃。しっかりと名前がある。双神輝銃ディオスクロイ、幾つかの

形態を持つ銃である。この時にふと疑問は浮かんだが、それよりも

優先するべきことがあり、もう頭の中から消えていた。

ディオスクロイ:モード・ポールスター。魔力上昇、最大出力。

一撃の威力は非常に高い。高まる魔力に反応するオドの魔物。

行く手を阻むのは人間と吸血鬼の混血。彼の目は魔物にすら

効果がある。キースの背後で、上へ通り抜ける光線。

僅かに掠り、表情を歪める。


「痛い」

「ごめんて!」


キースの瞳が赤く輝く。


「星へ還れ、オドの魔物よ」


魔眼:消滅。魔物はマナとして霧散し、そして還る。一つの

オド・テンペスタが消えた。ふわりと着地したキースは辺りを

見回す。騎士団も幾つかのオド・テンペスタを収束させたようだが、

一つだけ未だに勢いが弱まらない。


「資格者と思われる女が向かった場所だ。気付いたらしい。

行くぞ。お前が授ければ、こっちのものだ」

「分かった。行こう。あ、背中は大丈夫?」

「問題ない。掠ったと言っても、少し服が破けただけだ」




別の場所のオド・テンペスタに異常が発生していた。ただのオドの

魔物ではない。どす黒いマナを帯びた黒獣が騎士たちを蹂躙する。

立ち上がる女性騎士。皮肉な事だ。王国の騎士団は女性騎士をかなり

卑下しているのに、彼女だけが今、ここで生き残って戦っている。

とは言え、かなり押されている。


「騎士さん、手を貸すわよ」

「貴殿らは…」

「私はミシェル。こっちはレイラとキース。細かい事は後にしましょう。

こう見えても強いわよ!…私以外」


ミシェルはレイラとキースを推す。


「いや、正しくはキース()、ね」

「キース…か。ん?君のそれは」

「命と矜持、前者のほうが大事なのは当然だろ。あれは黒獣(オルタビースト)

オドの魔物が黒化した存在だ。もうあれは、星に還すことは出来ない。

ここで消滅させる」


誤魔化すことは出来ない。ミランダ・アシュレイという女騎士は

キースと言う男が純粋な人間では無いとすぐに察知した。確信しつつも

他に目をやり、そして目を瞑ることにした。


「騎士としては柔軟な思想の持ち主だ」

「ここには既に騎士団はいない。私は私の考えを信じるだけさ。

助太刀、感謝する」

「礼は俺では無く、お前を見出した彼女に言うんだな」

「見出した…?」


気になることは全て、後で聞くとしよう。ミランダが、細剣を

抜いた。突きを主体とした剣技だ。女性の騎士が少ない、そして

卑下される理由。誰が言い出したか、女性は軟弱であり、戦線に

立つ者として才が無いと。その思想、真っ向から否定しよう。他でも

無い、混血の男が否定する。彼は舌を巻いた。


「アシュレイ…、あの侯爵家アシュレイ。なるほどな」



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