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第20話



 しかし、アンナは決意を固めた様子でナーフィの体を引き剥がそうとその肩を掴む。

 ナーフィは離れない。アンナが引っ張るとさらに抵抗するように俺の体にギュッとしがみついてくる。


「痛い痛い痛い……っ」

「す、すみません! ……な、ナーフィちゃん全然離れる気がしないです……!」


 どうすればいいんだ。ナーフィを何度か起こすように声をかけていたのだが、全く起きる気配はない。

 そんなこんなで話していると、隣のベッドからむくりとリアが起き上がった。


「んー……久しぶりに、よく寝たわね……って何やってんの?」


 リアがこちらを見てきて、じとっとした目を向けてくる。


「り、リアちゃん。ナーフィちゃんがご主人様のベッドに間違えて入っちゃったみたいで……」

「全く離れる気配がないんだよ……助けてくれ」

「ああ、なるほど。そういうことね」


 リアはすぐに状況を理解したようだ。こちらへとやってくると、収納魔法からハンバーガーを取り出し、ナーフィの眼前にかざした。

 その瞬間だった。ナーフィがパチリと目をあけると、口を大きく開けた。


「ナーフィ、食べる前にシドー様から離れなさい」

「ん?」


 ナーフィはちらとこちらを見てから、不思議そうに首を傾げてくる。

 まるで「ベッドでも間違えたの?」とばかりの表情である。


「ここは俺のベッドだぞ?」

「ん」


 俺が答えるとナーフィは納得したようで、ベッドから体を起こし、リアからハンバーガーを受け取るとすぐにパクりと食べた。


 朝からハンバーガーを一口で食べるなんて……。

 さすが、ナーフィだ。


 ひとまず、無事解放された俺は朝食の準備を行う。


 ……さて、どうするか。昨日からずっとハンバーガーでの生活だった。さすがにジャンクフードばかりは良くないだろう。

 それに、白米が食べたいので、白米のみの弁当でも召喚しようか。


 あとは、サラダはもちろん、卵が食べたい。……生卵かけご飯食いたいなぁ。

 決まりだな。俺は早速生卵のパックを召喚する。賞味期限を見た限り、生卵で問題なさそうだ。

 せっかくだし、生卵用の醤油とかも召喚してみるか。

 スーパーで見かけたことはあるが結構いいお値段だったはずだ。

 今は召喚で手に入るし、お試しで召喚するには悪くないだろう。


 ……この力、日本に持ち帰ることができれば弟妹たちに好きなだけ好きなものを食わせてやれるよな。

 まあ、この召喚が実物を召喚しているとなると窃盗になってしまうのでおいそれとは使えないが。


 今は緊急事態だから多少は目を瞑ってもらおう。

 白米のみの弁当を召喚した俺は、早速それに卵を割入れる。それから醤油をかけ、かき混ぜる。


「……た、卵を生で大丈夫なの……?」


 心配そうにこちらを見てくるリア。


「こっちの世界の卵はダメかもしれないが、日本のものは大丈夫になっているんだ。リアたちも食べてみるか? それとも、他のものがいいか?」


 問いかけると、ナーフィが俺の生卵かけご飯をじっと見続けてくる。

 とりあえず、食べやすいように召喚したスプーンで一口食べさせてみると、


「ん」


 ナーフィはこちらが気に入ったようだ。すぐに要求してくる。

 大きめのどんぶり皿を召喚し、いくつも召喚した白米の弁当をそちらに移していく。

 最後に生卵を三つほどかけ、醤油を入れて完成だ。

 スプーンと共にナーフィに渡すと、俺が食べていたように食べていく。スプーンなどの持ち方も、知らないだけで教えればすぐにできるようだ。


「……あたしも、そっち食べてみたいんだけど」

「……わ、私も。いいでしょうか?」


 ナーフィの食べっぷりをみて、どうやら気になってきたようだ。

 まあ、ジャンクフードばかりを食べるよりもこちらの方がいいだろう。

 二人に白米を召喚してやり、それぞれで準備してもらっていく。

 生卵をかけたところで、ぐるぐるとかき混ぜていく。


「……そういえば、卵とかってアレルギーもあるけど、大丈夫なのか?」

「亜人はなんでも食べられはするわよ?」

「そうか」

「最後にかけてる……ソースのようなものはなんなのよ?」

「醤油って言ってな……塩みたいに味をつけるための調味料なんだ。ちょっとずつかけてみて味を調節してみてくれ」


 細かく説明してもいいが、リアたちには味つけのものくらいで説明しておいたほうが分かりやすいだろう。


 リアたちは醤油を手に取り、少しずつかけていく。それから、渡していたスプーンでかき混ぜていく。

 ……俺は箸だが、彼女にはスプーンを渡しておいた。

 箸を使えないだろうし、そもそも卵かけご飯は結構ドロッとするからスプーンの方が食べやすいだろうしな。

 サラダ用にフォークも用意してあるので、問題はないだろう。


 準備している頃には、ナーフィが二杯目を要求してくるので、俺が再び用意する。朝から凄まじい食欲だ。

 全員の準備が終わったところで俺たちは両手を合わせる。


 リアとアンナは目を閉じて何かに祈りを捧げる。


「食事の時に祈りをしているのは、神様とかなのか?」

「精霊神様よ」

「精霊神?」


 飛び出したワードはファンタジー感溢れるものだ。


「あたしたちエルフ族は…………普通は精霊の力を借りることができるのよ」


 普通は、という言葉にアンナとナーフィが反応した。

 ……アンナは少し元気がなくなり、ナーフィは特に気にした様子はなく食事を続けている。

 リアも、ちょっと元気がないのをみるに、何か昔にあったのかもしれない。

 あまり深く突っ込んでも傷つけるだろう。話したければ本人たちが話してくるだろうし、無理に聞く必要はないだろう。

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[一言] 16行目の  リアはすぐに状況を理解したようだ。こちらへとやってくると、収納魔法からハンバーガーを取り出し、ナーフィの眼前にかざした。  その瞬間だった。ナーフィがパチリと目をあけると、口…
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