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なろうラジオ大賞4の投稿シリーズ

ポーカーフェイスな魔女が見上げていた星座は

 親は気付いてないが僕はもう大人だ。

 母子家庭とは言えもう親離れしてもいいよなと、時々考える。

 だからかな。

 夜中によく家出する。少し離れた高台から夜景を眺めるだけの家出。


 ある寒い季節にそこで魔女と出会った。

 本人は正体を隠しているつもりらしいが、僕は最初からピンときてた。僕の洞察力を舐めてもらっちゃ困るワケ。

 だって全然笑わないんだよ。



 雲のない夜に度々出くわす僕たちは、沢山話をした。よく分からない話もあるけど、星座の話は面白かった。夜空に物語があるのは何か素敵だ。


 ある日魔女がポツリとこぼしたんだ。


「おうし座のトコ、あの星団が昴っていうのよ。

 あそこに私のお友達がいるの。目が良ければもっと見えるのに…見えづらくなってきたな…」


 そっか、魔女はすばるを見に高台へ来てたのか。

 夜空にいるなんて、さすが魔女の友達だな。


 空を見上げる。

 細く冷たい風が鼻を撫でる。

 その風に魔女の気持ちも嗅ぎ取る。

 で、決めた。



 翌日、母親に一緒に暮らしたい人が居るから家を出ると打ち明ける。

 寂しそうだったけど僕の頑固さを知ってる母親は、

「辛かったらいつでも帰って来るのよ。」

 って許してくれた。


 だけど僕は帰らない。

 実は気付いてる事がもう一つある。

 それは母親に新しい彼氏がいるって事。

 僕が出ていけばきっと楽になるよね。




 雲ひとつない夜。


 魔女はいつものように高台へ来た。

 しばらく昴を眺めた後、魔女が立ち上がって帰ろうとし、すかさず僕は無言で付いて行く。

 魔女は怪訝な目で僕を見る。

 僕は平然な顔で魔女を見る。


「アンタは自分の家に帰りなさい。」

「いや、僕はアンタの家に住む。」


 このやり取りを何度も繰り返し「今晩だけよ。」と溜息まじりに魔女が折れ、僕は魔女の家に住み着いた。

 まかせろ。あの日感じた寂しさの匂いは僕が消す。


 魔女の家は森の奥でひっそり、…ではなく商店街の喫茶店だった。

 一番驚いたのは、店の中では明るく笑う事。


 えっ、もしかして魔女ではない?

 いやまてよ。

 そいつは仲間か?


 あるじいさんと親密に小声で話す魔女。

 話を聞こうとそっと店内に入る。


「あ!コラ。こっち入っちゃだめよ。」

「あれ、ママ。猫飼ったの?」

「何だか付いて来ちゃってね。」

「可愛いな。名前は?」

「…(すばる)。」

「昴…昴子(こうこ)から…?」

「勝手にごめんね。」

「いやいや、うん、いい名前だ…」


 フン。可愛い、ね。

 それよりじいさんも魔女と同じ匂いしてるのかよ。

 しょうがないなぁ。まとめて世話してやっか。

良ければ他のなろラジ大賞4への応募作品にもお立ち寄り下さい。本文のタイトル上部『なろうラジオ大賞4の投稿シリーズ』をタップして頂けるとリンクがあり、それぞれ短編ですがどこかに繋がりがあります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 魔女と僕との関係が、読み始めと読み終わりではガラッと変わって、面白かったです。 「まとめて世話してやっか」のセリフが、お気に入りです。
[一言] 最後まで読んでみて「なるほど!」と。 主人公が魔女の顔を覗き込んだ時、彼女はどんな表情をしていたのだろう……? そんなことを想像してみながら読みました。
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