第90話 いいこと思いついちゃった
私が衝撃を受けている間に、魔王討伐メンバーの顔合わせが終わっていた。
小説では既に死んでいる私がまだ生きているんだから、現実との乖離は仕方ないにしても、それでもやっぱりヒロインの属性が全然違ってるなんてこと、あるんだろうか。
それとも、これから聖女として目覚めるとか?
うーん。分かんないなぁ。
アベルが持ってるのも聖剣グランアヴェールの代わりに、鍛冶神へパトスに頼んで打ってもらった「勇者の剣」だし、魔王出現の時期もズレてるし、フィオーナ姫が聖女として目覚めなくても問題はないかな。
むしろお兄様のラスボス化に繋がるかもしれないから、このまま目覚めないで欲しい。
あ、でも聖女がいない状態で魔王に勝てるのかな。
マリアちゃんが聖女になりそうだけど、まだ確定じゃない。
そうなると回復役が足りないのでは!?
「ねえ、ラン。魔王の居場所って分かる?」
『我にかかればすぐだぞ』
アベルたち勇者一行は、魔王の居場所を突き止めるのに時間がかかっていた。
その間に魔王は力を蓄え、強くなっていった。
でもまだ、そこまで強くないはず。
だったら今のうちに魔王を倒しちゃえばいいのよ。
私、もしかして天才では!?
「だったらどこにいるか教えて!」
私はうきうきしながらランに尋ねる。
弱い魔王なら、きっとお兄様とアベルがすぐにやっつけてくれるよね。
だって二人ともとっても強いもの。
もちろん一番強いのはお兄様だけどね。
最高にナイスなアイデアを思いついた喜びのあまり、膝の上のモコも両手で掲げて頬ずりしちゃう。
「うふふ~。モコ、いいこと思いついちゃった♪」
でもそこに水を差すようにランが話しかけてくる。
『大体の場所は分かるが、近くに行かねばはっきりした場所は分からぬぞ』
ええーっ。それじゃあんまり役に立ってなくない?
ぬか喜びさせないでほしいよ。
せっかくお兄様が大変な旅をしなくても良くなると思ったのに。
肩を落とす私を慰めるように、モコが私の手に前足を乗せる。
「モコ~、近くに行かないといけないんだって。それじゃあ、意味がないよねぇ。ランが執事として同行するわけにもいかないだろうし……」
いや、待って。
もしかしたら、ううん、もしかしなくても、それは結構良い案なのでは。
魔王討伐メンバーは少数精鋭とはいえ、フィオーナ姫のお世話係として侍女がついていたんだから、ランが同行しても問題はないはず。
というより、ランが行ってもいいなら、私が同行したっていいんじゃない?
だって私も行けばお守りで防御したり回復したりできるもん。
だからマリアちゃんがカバーできないところは私がお手伝いすればいいんじゃない?
もちろん私はお兄様の回復を最優先するけど、マリアちゃんはアベルを優先すればいいわけだし……、エルヴィンは、私かマリアちゃんの手の空いているほうが回復するっていうことで。
うん。エルヴィンは後回しかな。
一応婚約者なのに扱いが雑でごめんね。
ちょっとだけ悪いとは思ってるんだよ。
でもお兄様への愛には勝てないんだもの。
ほんとーに、ごめんねー。
「攻撃も折り紙君一号たちがいれば戦いが楽になるかな」
で、ついでにランも連れていけば、魔王の居場所がすぐに分かって、弱いうちにサックリと倒せちゃうのでは?
「ということで、私も行くから」
そう宣言すると、呆れたようなランの声が聞こえてきた。
『なにが「ということ」なのか分からぬが……兄が許可するであろうか』
それは確かにー!
お兄様、過保護だからなぁ。
でもランがいると魔王の場所が特定できるわけでしょ?
本体の聖剣としてお兄様が持っていくっていう手もあるけど、それだと意思疎通ができない。
つまり、執事姿のランを連れていくには主人たる私が行かないといけないのよ。
ランはお兄様の執事じゃないからね!
契約している私がランだけ連れて行くのを却下すれば、私も一緒に行けるはず。
私、頭い~い♪
『兄が許可しても、父が許可せんだろう』
ランの言葉に私は膝の上のモコを見る。
「それは大丈夫。モコにちょっと不安な気持ちを吸い取ってもらえば……」
ほら、あのミランダの魅了を解除した時みたいにすれば、説得できると思うの。
『それは洗脳ではないのか……』
さらに呆れたようなランの声に、私は自信をもって否定する。
「えっ。違うよ。心配かけないための、優しさだよ~!」
ねっ、モコ!
「きゅぅ……?」
戸惑ったようなモコは、残念ながら私に同意はしてくれなかった。
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