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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第ニ章 学園に入学しました

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第88話 やっぱり私の最推しはお兄様

 それからの話し合いは、もっぱら再発防止についての話だった。


 途中でどうやってケルベロスを倒したか、って話をしたけど、そこは後で一緒に攻撃した先生たちからも詳しく聞いて報告書を作るって話になった。


 呪い学のブラウン先生が私の作るお守りに凄く興味を持っちゃって、お兄様が助けてくれなかったらそのまま研究室に連れていかれそうな勢いだった。


 ちょっとマッドサイエンスっぽくて怖い。お兄様がいてくれて良かった。


 とにもかくにも、小説と同じように学園にケルベロスの襲来があったけど、現実ではちょっと変わってた。


 まず時期が違うし、それによるアベルのさらなる成長はなかった。


 ただ学園に入学したばかりの頃と今とでは当然強さが違っているから、小説でケルベロスを倒した時よりも強くなってると思う。


 だとしたら、アベルを成長させるためのイベントとしてのケルベロス襲来は必要なかったってことになる。


 何が言いたいかって言うと、ここは小説『グランアヴェール』の世界だから、なんらかの修正力が働いて結果的には小説と同じ結末になるんじゃないかって不安だったのね。


 でも実際には、小説と同じようなことが起こっても、その結果が小説と同じにはならない。


 つまり、小説で起きたような事件はこれからも起きるかもしれないけど、それによってお兄様がラスボスになるとは限らないってことが証明されたのだ。


 ふおおおおおおお!

 これって大発見では?


 お兄様が闇落ちするのは、私が死んじゃったのとフィオーナ姫に裏切られたことの二つが原因じゃない?

 その二つをこれからも阻止すれば、お兄様はラスボスにはならない!


 フィオーナ姫との婚約は阻止したし、私が死ななければ、お兄様はずっと優しい私のお兄様でいてくれるということで……。


 ああ。目の前に最推しとの薔薇色の日々が見える……。


 学園ではお兄様の分かりやすい授業を受け、帰宅すればお兄様と一緒に食事をしたりお茶をしたり庭の散策をしたりと、お兄様三昧の毎日。


 最高ですね!


 そんな風にお兄様との幸せな日々を夢想している間に、話が終わったらしい。


「レティ、レティ」


 横にいるお兄様の美声で名前を呼ばれて、ハッと我に返った。

 またかよ、って目をしているエルヴィンの呆れた視線から、そっと顔をそむける。


 だって仕方ないじゃない。

 お兄様は、私の前世からの最推しなんだもの。


 お兄様たちと一緒に学園から出ると、ケルベロスの襲撃の後始末に右往左往している先生方の姿が見えた。


 結局、ケルベロスがどうして現れたのかとか、結界はどうなったのかっていう謎は解けていない。


 でも、お兄様が生きて、笑って、私の隣にいてくれる。

 もう、それだけでいいや。


 ふと空を見上げると、目の前には青い青い空が広がっている。


 空は深い碧色に染まり、白い雲が優雅に舞っていた。太陽は全てを照らし出すように輝き、希望そのもののように見える。


 吸いこまれそうなほどの空の青さが、心の中に溜まった全ての重荷を吹き飛ばしてくれるかのように思える。


 ああ、終わったんだ。


 お兄様をラスボスにしないために、今までずっとがんばってきた。

 モコと聖剣と、ロバート先生とドロシーと。


 そして他でもないお兄様のおかげで私は死なずにすんだ。


 それは、お兄様のラスボス化を阻止する結果につながった。


 まだまだ安心はできないけど、でも絶対に小説で書かれた結果になるわけじゃないって分かって、心が軽くなった。


 空を見上げて、大きく息を吸う。


 清々しい空気が、新鮮な香りを運んでくる。

 これは、新たな始まりの香りだ。


 これから何があっても大丈夫。


 魔王が復活しても、お兄様はラスボスにはならない。私がさせない。

 そして皆で力を合わせて、これから復活するであろう魔王を倒すのだ。


 絶対に。

 きっと。


「お兄様!」


 私の呼びかけに振り返るお兄様のアイスブルーの瞳が、柔らかく溶ける。


「ずっとずっと、大好きです!」

「僕もだよ、レティ」


「ちぇーっ、お前ら仲が良すぎだろ」


 ふてくされるエルヴィンを横目に、私は笑いながらお兄様の差し出した腕につかまる。


「だって兄妹ですもん」

「そうかよ」


 羨ましそうなエルヴィンが可哀想だから、仕方がない、仲間に入れてあげよう。


 エルヴィンは妹と距離があるからね。

 エルヴィンに大切な人ができるまでは、私が仮の婚約者兼、仮の妹になってあげる。


「ほら、エル様はこっち」


 エルヴィンの腕を取って、私を中央に三人で並ぶ。


「こうしてると三人兄妹に見えると思わない?」

「お前なぁ……」


 なぜか肩を落としたエルヴィンに、お兄様が勝ち誇ったような顔をしている。

 そんな顔のお兄様も素敵!


 青空の下、私は二人の腕につかまって、いつまでもいつまでも笑っていた。


もしも「面白かった」「続きが気になる」などと思って頂けましたら、

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どうぞよろしくお願いします!

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