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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第ニ章 学園に入学しました

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第87話 ハッピーハロウィン!

11月1日

本日コミックス1巻発売です!

夏河もか先生の描くぎゃんかわレティシアと最推しお兄様をぜひご覧になってください。

モコ第三形態とか回転木馬ミランダとか、見所満載です。

ぜひお手に取って頂けると嬉しいです。

よろしくお願いします。

 この世界にはハロウィンなんてものはない。


 そもそもハロウィンとは、ローマ人がやってくるまでヨーロッパに住んでいた古代ケルト人の、秋の収穫をお祝いして、ついでに悪霊を追い払っちゃおうという祭礼だ。


 そもそもケルトの暦では、十一月一日から一年が始まる。

 新年の前日は、大晦日。


 つまり十月三十一日のハロウィンの日は、ケルト人の大晦日なのである。


 そしてこのケルト的大晦日のハロウィンは、現世と来世を分ける境界が弱まり、死者の魂が家族の元へ戻ってくると信じられていた。


 要するに、お盆である。


 うん。前世でハロウィンの由来を調べた時は驚いたね。

 ぶっちゃけ、お盆と大晦日が一緒になったようなお祭りじゃない、って。


 そりゃあ、祭りが二つも重なってるんだから、どんちゃん騒ぎして盛り上がっちゃうよね。


 で、そんなお祭りに乗じて、悪い妖精もやってくる。

 その悪い妖精から身を護るため、人間だとバレないように仮装をするのである。


 一方、この『グラン・アヴェール』の世界には魔王がいて魔物がいる。

 前世でいるかどうか分からない恐ろしく怖いものが実在するのである。


 ただ、死者の魂が家族の元へ戻ってくるというような信仰はない。


 だから仮装する必要がないというか、下手に仮装すると教会から『魔の誘惑』を受けたととらえられて異端諮問会にかけられてしまうかもしれないので、できない。


 お兄様がドラキュラ伯爵の仮装をしたら、超絶カッコいいのになぁ……。


 というか、学園を卒業して白皙の美貌に磨きがかかったお兄様が吸血鬼のコスプレをすると、迫力がありすぎて、どこからどう見ても魔王になってしまいそう。


 ラスボスと魔王、どっちも避けたーい!

 でもお兄様のコスプレは見たい。


 だって推しのコスプレ、見たくない? 見たいよね?

 私は問答無用で見たい。


 というわけで。


 私はにっこり笑って袋からそれを取りだした。


「レティ、それはなに?」

「じゃじゃーん!」


 ここ数日、ドロシーに手伝ってもらって完成した、カチューシャでーす!


「ケモ耳カチューシャです!」

「ケモ耳カチューシャ?」


 実は前世のハロウィンの時期に、公式の神絵師イラストレーターさんが『グランアヴェール』の仮装イラストを何枚か描いてSNSにアップしてくれたんだけど、そのうちの一枚がメインキャラのケモ耳バージョンだったのだ。


 お兄様の耳は銀狼で、エルヴィンはライオン。

 そして勇者アベルは、ちょっとたれ耳で犬っぽかった。


 フィオーナ姫はロップイヤーみたいなウサギのたれ耳。


 もちろんお兄様のケモ耳が一番カッコよかったのは言うまでもない。


 だからその姿を再現したくてがんばりました!

 ドロシーに手伝ってもらって何度も試行錯誤して、やっと完成したの。


 羊毛を銀色に染めてもらって作ったんだけど、なかなかね、お兄様の艶々で綺麗な銀色の髪に色を合わせるのが大変だった。


 でもお兄様が身につけるものは、たとえ仮装用のカチューシャといえども妥協したくない。

 その一心でがんばりました。


 出来上がりは、自分でいうのもなんだけど、なかなか良くできたと思う。

 お兄様の髪にそっくりな銀色で、ピンと立った凛々しいケモ耳を、うやうやしくお兄様の前に捧げる。


「お兄様、これを頭につけてください」

「よくできてるね。本物の狼の耳みたいだ」


 カチューシャを手に取ったお兄様は、私とドロシーの力作をじっくりと見た。


 実は耳の中につめた綿の中には、守護のお守りを入れています。

 どんな時でもお兄様の身の安全には心を配らないとね。


「これでいい?」


 ああああああ!

 お兄様の頭に銀色のケモ耳がああああああ!


 萌える。

 推せる。


 神様、この世界に転生させてくれて、ありがとおおおおお!


「お兄様、ぜひこのまま一緒にお茶をしてください。仮面舞踏会はまだ参加できないですけど、仮装お茶会ならできますもの」


 仮面舞踏会はあれだね、大人の社交の一環だから、まだ子供の私は、仮装お茶会でいいと思う。


「仮装お茶会ということは、レティも仮装するのかい?」

「そうですね。一応……」


 私のケモ耳は、うさぎだ。


 フィオーナ姫もうさぎだったからあんまり乗り気じゃなかったんだけど、ドロシーが絶対うさぎがいいって言うから、そっちにしてみた。


 たれ耳じゃなくて普通のピンと立ったうさ耳だけど。


 袋からうさ耳を取り出して、頭につける。


「とっても可愛いよ、レティ」


 うひゃあ。

 ケモ耳お兄様のスペシャルスチル頂きました~!


 ああ、ここにスマホがあったら、写真撮りまくって永久保存するのに。

 心のアルバムに保存しておかなくちゃ。


 ちなみにお父様の分も作ってある。

 さすがに一人だけ仲間外れはかわいそうだし。


 お父様のカチューシャはネズミだ。某テーマパークの人気者をイメージしたんだけど、耳を小さめにして色を灰色にしたからか、なんだかちょっと違うイメージになった。


 どっちかっていうと、カピバラ?


 お兄様には絶対似合わない耳なんだけど、なぜかお父様には似合いそうなのが不思議。顔は同じなのにね。


 私はお兄様を中庭のテーブルに誘った。

 そこには三段に飾られた、アフタヌーンティーセットを用意してもらっているのだ。


「モコもおいで~」


 ふわふわと飛んでくるモコには猫耳とコウモリの羽をつける。

 うん。可愛い。


 思わずぎゅーっと抱きしめながら、席に着くと、カピパラっぽいお父様も休憩にやってきた。


 丸いテーブルに、狼とうさぎとカピパラ。

 ファンタジーでメルヘンな空間がいいよね。


「レティ、可愛い」


 うるうるしているお父様に、ちょっと照れちゃう。


「お父様も、ネズミさん似合ってます」

「そうかい? でもなぜネズミなんだろう。私もセリオスと同じ狼が良かったなぁ」


 羨ましそうなお父様だけど、お父様は狼っていうイメージじゃないし……。

 こう、どっちかっていうと、草食系男子っていうか。


「父上。レティの手作りなのですから、いいじゃないですか」

「確かにそうだね!」


 お兄様の言葉に、たちまち機嫌を直すお父様。


 たんjy……。


 あ、いや、うん。

 お父様って素直だよね。


 ほんとに、どうしてこのお父様から、ラスボスお兄様が生まれたのか不思議。


「こうして仮装してお茶をするのも楽しいね。なんだか特別な日みたいだ」


 目を細めるお兄様に、私は心の中で「ハロウィンなので特別です」と呟く。


 でも、この世界にはハロウィンなんてないんだから、いつでも特別な日にしちゃってもいいよね。


「またこんなお茶会をしましょう。私にとっては、こうしてお兄様とお父様とお茶を飲める毎日が特別な日ですもの」

「レティ……。うん。そうだね」


 感慨深く呟くお兄様の隣で、お父様が「こんなに元気になって」と、涙をにじませている。


 そう。

 魔力過多で死ぬ運命だった私が、こうして二人とお茶ができるなんて、本当に嬉しい。


 だからまた、その素敵なケモ耳姿を披露してくださいね。




 ハッピーハロウィン!


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