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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第ニ章 学園に入学しました

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第75話 勇者の剣

「レティシアさんは、神話を歴史と考えているのですか?」


 ずり落ちそうな眼鏡を直しながら聞く先生に、私は頷く。

 すると周囲から、クラスメイトたちのくすくすと笑う声が聞こえてきた。


 でも腹は立たない。

 私だって聖剣ランがいなければ、神話が事実に基づいてるなんて想像もしなかったもん。


「すべてではないけれど、神話のお話は実際にあった出来事ではないかと思います。たとえば勇者が持つ聖剣ですけど」


 勇者、という言葉に、隣のマリアちゃんがハッとしたように私を見るのが視界の隅に入った。

 勇者アベルはマリアちゃんの幼馴染だもんね。名前が出たら気になっちゃうよね。


「今の勇者は聖剣を持っていないので歴代の勇者に比べて力が足りないのではないかと言われていますが、神話を調べると、実際は勇者と聖剣の間に何の関係性もないことが分かります」


 そうなんだよね。

 私が聖剣を抜いちゃったから、アベルは聖剣を手にできなかった。


 一般的に勇者は聖剣の所有者だと思われている。


 でも勇者を選定するのは大地の女神レカーテで、聖剣を作ったのは鍛冶神ヘパトスだ。


 二柱の神様が特に仲良しっていうわけでもないけど、勇者に認定されると、たまーに女神の神託があって、そこで「この場所に聖剣があるから使いなさい」って言われるんだって。


 鍛冶神ヘパトスはとにかく強い剣を作るってことだけに興味を持っているから、作った剣が誰の手に渡るかはあんまり興味がないみたい。


 だからレカーテが勇者に聖剣を渡しても、聖剣がいいならいいぞ、というスタンスだった。


 でも今は聖剣が私を選んじゃってるから、勇者の手に聖剣はない。


 剣なんて使えない私が契約者になって鍛冶神が怒ってないかなって心配だったんだけど、ランによると、剣以外の使い方をしてるのをおもしろがってるんだって。


 確かに聖剣の分身を縫い針にするとは思わなかっただろうしね。

 それに人型を取って執事にまでなっちゃってるし。


 ただそれだとアベルが魔王を討伐するのが大変になるから、鍛冶神には新しい剣を作ってもらった。


 出来上がったのは、聖剣よりもちょっぴりパワーダウンしてて、勇者にしか使えない剣。

 その名も「勇者の剣」だ。


「神話には鍛冶神ヘパトスの鍛えた剣、というのは出てきますけど、勇者は出てきません。つまり、聖剣の方がその存在は古いのです」


 私の言葉に先生は首がもげるかと思うほどウンウンと頷いている。

 もしかしてこの先生も、私と同じ考えなのかな。


 え、そしたら先生凄い。


 私は直接ランから説明されてるからこの考えになったけど、先生はそんなのもなくて、残された資料から想像したわけでしょ。


 勇者と聖剣はセットって考える人が多い中、その考えに至ったってことは、この先生もかなり神話を研究してる。


 ランと会って話したら狂喜乱舞しそうだなぁと思いながら、話を続ける。


「もし聖剣が勇者のために作られたものであれば、神話に勇者の話が出てこなければおかしいです。でも、魔王も勇者もまったく出てこない」


 実は魔王が現れたのって、神様たちのせいなんだよね。


 仲の良くない神様同士が、ある時、庇護してる人間のどっちが強いかで喧嘩になって、決着をつけるために人間たちを戦わせたの。


 それまで仲良く暮らしていた人間たちは、二つの陣営に分かれて激しく戦った。

 大地にはたくさんの血が流れた。

 冥府には収容できれないくらい亡者が増え、その恨みが瘴気になって地上にあふれてしまった。


 瘴気は人や動物や植物を襲い、その命を枯らしてしまう。


 そこで大地の女神レカーテが夫である冥府の神クトニオスに頼んで、瘴気を形あるものに変えてもらい、人間が討伐できるようにした。


 でも瘴気が強くてなかなか倒せなくて、それでレカーテが人間に力を与えて、やっと瘴気を消滅させることができた。


 これが勇者と魔王の始まりなのである。


 そして一度争うことを覚えてしまった人間たちは、いつもどこかで戦いを起す。

 そのせいで冥府には恨みを持つ魂が増え、瘴気があふれる。瘴気は靄から形あるものに進化して、勇者に倒される。


 というサイクルを、ぐるぐる繰り返しているのだ。


「だから聖剣と勇者には、本当はなんの関係もないっていうのが史実です」


 きっぱり断言すると、先生はずり落ちそうな眼鏡を押さえてワタワタと焦った。


「いや、しかし、それは僕もその可能性を考えましたが……。でも、歴代の勇者はみんな聖剣を持っているはずです。だとすると、聖剣は勇者のために鍛冶神が鍛えたと考えたほうが……。だけど、そうか。それだったら神話に勇者のことが書かれているはずだ」


 しばらく考えこんだ先生は、ハッと我に返った。


「あ、レティシアさんありがとう。とても参考になったよ。じゃあマリアさんの興味のある時代は?」


 私が着席すると、入れ替わりでマリアちゃんが立ち上がった。


「私は名前の由来になった聖女マリアの時代を勉強したいです」

「古王国の時代だね」


 聖女マリアっていうのは、初代勇者と一緒に魔王を倒した女性だ。

 魔王を倒した後に勇者と結婚して一緒にこの国を建国した女性なので「マリア」っていう名前はとても人気がある。


 そっかー。

 初代聖女から名前をもらってるんだ。


 ……これはもう、マリアちゃんが聖女で正解じゃないかな。

 魔王が復活する前後で覚醒しちゃうんじゃない?


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