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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第ニ章 学園に入学しました

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第72話 聖女マリア

コミックファイア様にてコミカライズ連載開始です。

漫画・夏河もか先生

ぎゃんかわレティと麗しのお兄様の物語をぜひご覧くださいませ!

「でもそのマリアって子は、本当に聖女なのか?」


 エルヴィンの疑問に、お兄様は二個目のチョコレートを私の口に入れながら答える。

 あまーい。おいしーい。


「聖女であろうがなかろうが、レティの安全のためなら我がローゼンベルクは全面的に聖女として後援するよ」

「ああ、うん。セリオスらしいな」


 呆れたようなエルヴィンを見て、お兄様はくすりと笑った。


 私がお兄様最推しなのと同じで、お兄様も私をとても可愛がってくれる。


 だから私がお守りのせいで聖女認定されて教会に拉致されるのをずっと阻止してくれてるんだけど、それでマリアちゃんが教会行きになるのはちょっと後味が悪いというか……。


 マリアちゃんのことを知らなかった時ならなんとも思わなかったかもしれないけど、もうお友達になったから、心が痛む。


「心外だな。確かにレティを教会に取られるなんていうのは認められないからなんとしても阻止するけど、それはそれとして、マリアも聖女として認定されたほうがいいと思う」


「なんでだ?」

「アベルの幼馴染だから」

「あぁ、なるほどね」


 納得するエルヴィンに、私は首を傾げる。


 アベルの幼馴染だと、教会に拉致されてもいいの?

 どうして?


「今はまだ学生だからアベルは寮で生活しているけど、基本的に勇者は王都の大聖堂を拠点にしているから、卒業しても王都から離れることはないんだ」


 私の疑問に答えてくれたお兄様が、控えていたランに合図をする。


 すっかり執事が板についているランは、空になった私のカップに新しく紅茶を淹れてくれた。


 ランが選んだ紅茶はアールグレイだ。ほんのりとした柑橘系の香りとシャープな味が、チョコレートにぴったり合う。


 うちに来た最初の頃はめちゃくちゃ濃い紅茶とかうっすーい紅茶を出してたのに、成長したなぁ。


「でも回復術師は教会によって色んな地域に派遣される。自分の出身地の教会に派遣されればいいけど、マリアのように小さな村の出身はなかなか自分の希望が通りにくい。でも聖女であれば勇者と同じように大聖堂の預かりになるから、ずっとアベルと一緒にいられる」


 んん?

 なんだかお兄様の言い方だと、まるでアベルとマリアちゃんが恋人同士みたいに聞こえる。


 でもただの幼馴染だよね?

 あれれと思いながらも、口の中の紅茶を飲みこむ。


「アベルのやつ、幼馴染に会いたい会いたいってうるさかったもんな。ようやく一緒に学校へ通えるようになったけど一年間だけだし。マリアって子が聖女になればずっと一緒にいられるから万々歳だ」


 一応ちゃんとした場所ではそれなりの態度を取ってるけど、エルヴィンはうちに来るとその辺のお兄ちゃんみたいな言葉遣いをする。


 安心しきってソファでだらけている姿は、とても王太子殿下とは思えない。


「でも聖女じゃないのに、聖女だって言われても後で困るんじゃないのかな」


 そもそも小説で聖女はフィオーナ姫だった。

 だからマリアは聖女にはなれない。


 そう思ったんだけど。


「彼女は本物の聖女の可能性が高いから、大丈夫じゃないかな」

「えっ、そうなんですか?」


 マリアちゃんが聖女?

 だとすると聖女が二人?


「ランはそう言っているよ」


 執事のお仕着せを身にまとったランは、私の疑問に頷きで答えた。


 ほんとに!?

 本当にマリアちゃんが聖女なの?


「ランはどうしてそう思ったの?」


 執事らしく白い手袋をしたランは、剣だった時の騒がしさが嘘のように静かに部屋の隅に控えている。


 完璧な執事のお手本のようなランが実は聖剣だなんて、知らない人が聞いても信じられないに違いない。

 黒髪に赤い目というミステリアスな美貌もあいまって、ランを引き抜こうとする人はかなり多い。


 あの王妃ですら、噂を聞いてランに接触してきたほどだ。

 もちろんすぐに断ってたけどね。


「私がいた洞窟はいわゆる魔素だまりのような場所になっていたので魔素が濃く、あの村はその影響を受けていました。そうした場所は神々の目に留まりやすいので、そこで生まれたものは加護を受ける確率が高くなります」


「ってことは、アベルはあの村で生まれたから勇者になったの?」

「覚醒するまでは誰が勇者になるか決まっていないので、おそらくはそうではないかと思います」


 そうなんだ。


 つまり、アベル以外にも勇者候補はいたけど、聖剣がいた洞窟に近くて魔素の多い村に住んでいたから神様の目に留まってアベルが勇者になったってことか。


「聖女も同じ?」

「ええ。そのマリアという娘も、聖女候補の一人なのでしょう。勇者と並び立てば、いずれ覚醒すると思いますよ」


 なるほど~。

 じゃあ小説ではフィオーナ姫がアベルと一緒にいたから聖女として覚醒したんだ。


 いずれ魔王が復活するとして。


 魔王討伐パーティーが組まれた時に、お兄様がそのメンバーに入らないという確証はない。


 お兄様もパーティーメンバーとして組み込まれるのを前提にするならば、聖女にはフィオーナ姫じゃなくてマリアちゃんがなってくれたほうが良い。


 だって今のところお兄様はフィオーナ姫とは婚約してないし特別な感情は持ってないみたいだけど、魔王討伐パーティーで一緒に旅をしていたら好きになっちゃうかもしれないじゃない。


 でもフィオーナ姫はアベルを好きになる可能性が高いわけで……。


 そんなの許せるわけないよね。


 こんなにもカッコよくて素敵で優しくてミラクルパーフェクトなお兄様が失恋するなんて、世界が許しても私が許しません!



もしも「面白かった」「続きが気になる」などと思って頂けましたら、

広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援いただけると嬉しいです。

どうぞよろしくお願いします!

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