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第7話 聖剣グランアヴェール

 超びっくりした。


 なんと、聖剣さん、喋れました。

 しかもグランアヴェールなんて名前があったらしい。


 グランアヴェール――そう、この世界を描いた小説のタイトルである。


 まさかそんな伏線があったとは知らなかった。

 ただ単に作者様が語呂だけでタイトルを決めたのかと思ってました。


 というか、勇者アベルが聖剣と喋ったなんて表現はなかったけどなぁ。

 呼ばれたような気がする、くらいだったはず。


『それは勇者の魔力がお主ほど大きくないからであろうな』

(そうなんだ)


『そもそも勇者というのは――』

(あ、また後でね! お兄様の部屋に着いちゃった)


『お、おい、待て』


 聖剣の話よりも、お兄様の方が重要。


 はあ、今日も推しが麗しい。


 銀の髪が光を反射して、まるでお兄様自身が光り輝いているように見える。

 お兄様はもしかして、地上に降りた天使かもしれない。


「にーたま!」


 ドロシーと繋いでいた手をふりほどいて駆けていくと、お兄様はちょっとしゃがんで両手を広げてくれた。


 わーい。お兄様とぎゅー!


 ぽふんと抱き着いて、お兄様のお腹にほっぺをぐりぐりする。


『娘、おい娘、聞いておるか』


 聖剣がうるさい。

 私とお兄様の至福の時間を邪魔しないで!


 私は心の中で通路にシャッターを閉めるイメージを浮かべた。


 後で黄金のリコリスの事を聞かなくちゃいけないし、さすがに切断したらダメな気がするから、一時的に遮断っと。


『何を――』


 ブツッ。

 いい感じにうるさい声が切れた。


「レティ、体調はどう?」

「いいでちゅ!」


「それは良かった」


 お兄様、大好きー!

 それにいい匂いがする。


 はっ。変態だと思われないように、すんすん匂いをかぐのは止めなければ。


「今日は天気がいいから、庭で遊ぼうか」

「あい!」


 最近のお気に入りの遊びは、ボール遊びならぬモコ遊びだ。


 ふわふわでモコモコのモコを、お兄様と投げ合ってキャッチするのである。


 ボールみたいに当たっても痛くないし、必ず私の手の中に自分からキャッチされにくるので、動く必要がない。


 投げられるモコも楽しそうなので一石三鳥だ。

 十回くらい投げっこをした後は、おやつの時間だ。


 まだ椅子にちゃんと座れないので、芝生の上に敷物を置いてそこに座っている。

 公爵家の庭は公園かと思うくらい広いので、気分はすっかりピクニックだ。


「おいしいかい?」

「あい!」


 さくさくで口の中に入れるとほろりと溶ける、公爵家の料理人が私の為に作ってくれたクッキーだ。

 焼きたてだからまだほんのり温かい。


 推しと向かい合っておやつを食べる素晴らしさと言ったら!


 しかもこの庭は小説にも出てきてた、聖地!


 聖地と推し!


 完璧で最高です!


「ナッツ入りはまだレティには早いから、もう少し大きくなってからね」


 誤解ですお兄様。


 私が見ていたのはクッキーじゃなくてお兄様です。


 でも確かにお兄様用のナッツ入りクッキーはとてもおいしそうだから、もうちょっと大きくなったら作ってもらおうっと。


「あい」


 ニコニコしながら頷くと、お兄様が私のほっぺに残ったクッキーのかけらを指でつまんで、それをひょいと口に入れた。


「うん。甘い」


 お兄様のその微笑みのほうが甘いです!!!


 あ……まずい……。

 魔力が……膨れる……。


「レティ!」


 急激に膨れる魔力に髪の毛が総毛だつ。


 モコがぴったりくっついてくれるけど、増えすぎた魔力が吸収しきれないのか、楽にならない。


 ごめんなさいお兄様。

 あまりの麗しさに許容範囲を超えました……。


 息ができない……!


 ああああ、でも死んだらお兄様にトラウマがぁぁぁ!


 こんなところで死ねない。

 でも、く……苦しい……。


 誰か助けて!


『娘、大丈夫か、娘!』


 その声は聖剣さん。


 聖剣さんは聖なる剣なんでしょ。私を助けて!


もしも「面白かった」「続きが気になる」などと思って頂けましたら、

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どうぞよろしくお願いします!

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