第67話 折り紙君1号
3月24日(金)よりコミックファイア様にてコミカライズ連載スタートです!
夏河もか先生の描くぎゃんかわレティと素敵セリオス様の二人をぜひご覧になってください(*´꒳`*)
お兄様は爆弾発言をした後、何事もなかったかのように授業を始めた。
教室の中は怖いくらい静まり返っていて、周りの生徒たちはなるべく私と視線を合わせないようにしている。
まあねー、それは無理もないよねぇ。
お兄様に逆らうのはローゼンベルク公爵家に逆らうのと同じだから、何かあったら自分だけじゃなくて家にも影響が出ちゃうもんね。
ただお兄様が私をえこひいきするのって、主に体力的なものと、魔力の発動の特殊性についてだと思う。
だって私、普通の魔法は使えないんだもん。
「さて。諸君はこれまでにも魔法を使ったことがあると思うが、それぞれ得意な魔法を教えて欲しい。ではまずレティシア・ローゼンベルクから」
お兄様からのご指名に、私はもちろん喜んで席を立った。
膝に乗っていたモコは、サッと私の肩に移動した。
肩乗りモコ、可愛い~!
周りの生徒たちの目がモコに注目する。
隣の席のマリアちゃんは口元に両手を当てて「可愛い」と小さく呟いていた。
うんうん、うちの子は可愛いもんね。
「はい。私の得意な魔法は『お守り』です」
「それはどんな魔法ですか」
「守護の魔法になります。詳しくは魔法の秘匿とさせてください」
魔法の秘匿というのは、その人の魔法が特殊で、詳細を他人に説明できない場合に適応される。
つまりネタバレしちゃうと弱点が分かっちゃうから、内緒にするよ、ってことだ。
もちろん学園側にはきちんと説明しているので、問題はない。
「他にはありますか」
お兄様が丁寧に聞いてくれる。
実はこの質問って私のためなんだよね。
魔力過多は治ったけど、アベルと違って私の場合は、魔法を使うと魔力が一気に流れ過ぎて意識を失ってしまう。
お兄様とランの考察によると、魔力を流す出口が小さいので詰まってしまって体内に逆流するんじゃないかってことだった。
完治してもうまく魔法を使えない私は、下手すると魔力なしだと思われて侮られるかもしれない。
貴族は魔力があるのが当然だから、魔力なしは相当肩身が狭いのだ。
で、私の魔法はお守りに特化してるから、最初にそれを説明して、私が魔力なしではなく、常に魔法を発動していることを証明しなくちゃいけない。
でもそうするとお守りの秘密を公開しなくちゃいけなくなる。
だけどそんなにたくさんの人のお守りを作ったら、モコのふわふわもこもこの毛がなくなっちゃうじゃない。
それにローゼンベルク家と敵対する家に手の内を明かすことになるから、学校内でほいほい教えられない。
魔力を流す出口がもうちょっと大きければ、有り余る魔力を使って派手な魔法をドーンと使えたんだけど。
魔力過多の時は魔法を使うと出口が壊れて魔力を垂れ流しにして、治っても出口が詰まるとか、本当に厄介な病気だわ。
死ぬ確率はだんぜん減ったからそれだけでも良いんだけど、やっぱり転生したからには派手な魔法をガンガン使いたかったなぁ。
「使い魔とは少し違うのですが、形代を使って戦うことができます」
クラスメイトたちが私の肩の上のモコに注目する。
いや、モコは使い魔じゃありませんので、そんなに見ないでください。
「ではそれを見せてください」
「はい」
私は頷いて、用意していたものを取り出した。
じゃじゃーん。これが私の最終兵器でーす!
「なんだあれ……」
「紙?」
「見たことない形だぞ」
私はたたんでいた紙を取り出して、広げる。
するとそれは紙で作られた折り鶴になった。
手の平の上に載せた折り鶴をそっと空に離すようにすると、折り鶴はふわっと空に浮かんだ。それからまるで滑空するかのように羽を動かさず真っ直ぐに宙を飛び、そのままお兄様の元へと飛んでいく。
うふふふふ。
これぞ私の秘密兵器。折り紙君1号だ。
だってほら。お守りって紙にモコの毛で刺繍するじゃない? だけどそれだけじゃ効果が分からないし、絶対防御に近い効果のあるお守りを、敵か味方か分からない人たちに公開するのは危険だ。
というわけで他に魔力を発揮できる方法を考えて、陰陽師の使う式神を思いついた。
陰陽師が人型や鳥形の紙に霊力をこめて式神として使役し、使役された式神は人や鬼神、あるいは異形へと姿を変えて怪異と戦う。
この世界に式神はいないけど、使役された魔物である使い魔がいる。
つまり「魔」を従えるシステムがある。
ただの紙が動き出したら、それを得体のしれないもの、悪いものだと連想する人も多いだろう。
だがその「悪いもの」を使役すれば、あら不思議。なんだか凄く力のある味方ができる、というわけだ。
もちろんうちの折り紙君1号も、ただ飛ぶだけじゃない。
その羽はまるでカッターのように鋭く、目にもとまらぬ速さで敵に攻撃できるのだ。
もちろんそこに至るまでの研究は大変だった。
なにせ紙にどんな字を刺繍すれば式神のように使役できるか分からなかったからだ。
でも色んな試行錯誤の末、やっと式神ができた。
なんのことはない。紙に「式神」と刺繍すれば良かったのである。
人型に切った式神は、紙のままだったけれど、私の命令通りに動く事ができた。
でもぺらっぺらの紙は、何かをやらせるには向いていない。
陰陽師の式神のように人間になったり鬼神になったりしてくれれば良かったんだけど、さすがにそれは無理だった。
そこで立体的にするにはどうしたらいいかと考えて思いついたのが折り鶴だ。これなら少しくらいの風で吹き飛ばされるようなこともないに違いない。
改良を重ねていくうちに、なぜだか折り紙に個性が出てきた。
折り紙君1号はリーダー気質で、折り紙君2号は頭脳派。そして折り紙君3号は末っ子気質で好奇心旺盛である。
折り紙が壊れて使い物にならなくなっても、名前をつけ直した途端に元の性格が現れるから、もしかしたら本当に式神を生み出しちゃったのかもしれない。
折り紙君1号は私の使い魔になって、折り紙君2号はお兄様、折り紙君3号はお父様にあげた。
するとなんと、折り紙君を通して、遠く離れていても三人の間で会話ができるようになったのだ。
つまり、お兄様と離れていても、いつでもどこでも会話ができる。ついでにお父様とも会話ができる。
これって、控えめに言って、最高です!
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