第66話 お兄様、今の凄くラスボスっぽいです
と、そんな私の決意を知るはずもなく、アベルとマリアちゃんは和気あいあいと話をしている。
仲良しなんだなぁ。
それにしてもマリアちゃんはどうして学園に入学できたんだろう。勇者の幼馴染だからってことはないはずだし。
そんなことを考えながらぼーっとマリアちゃんを見てると、アベルと目が合った。
一瞬、刺すような鋭い視線。
も、もしかしてお兄様がラスボスだってバレた!?
いやいやいやいや、お兄様はまだラスボスになってないし、ラスボスにはさせないし、絶対それじゃない。
だとするとなんでだろう。
ふいっと目を逸らしたアベルは、クラス中に視線を向ける。
それはまるでけん制するみたいで。
要するに、マリアちゃんの後ろには勇者がいるぞ、って威嚇してるのかな。
確かにさっきの自己紹介してきた令嬢三人組とか、平民には当たりが強そうだもんね。
でもそろそろ止めておかないと、授業が始まっちゃうぞー。先生が来ちゃうぞー。
そういえば学園のシステムって、日本と同じような感じなのよね。担任がいて、それぞれの教科担当がいて、生徒会もある。
このクラスの担任の先生って誰かな。
お兄様だと超嬉しいけど、臨時講師だからきっと無理だよね。
優しい先生だといいなぁ。
モコをなでながら、教室の入り口を見る。
モコがピクっと耳を動かしたのと同時に、入り口に人影が現れた。
あっ、あれは――。
「こらアベル。お前の教室はここじゃないだろう」
お兄様ぁぁぁぁぁ!!!
興奮した私の魔力をモコが吸い取ってくれる。
さらに足りないのでポケットの中の魔石をつかむ。
さすがに初日から光りたくないから、なんとか抑えなくちゃ。
すーはー。
深呼吸、深呼吸。
「セリオス先輩」
お兄様の姿をとらえたアベルが、嬉しそうに名前を呼ぶ。
気のせいか、お尻にわんこのシッポが見えた。
「今は先生だ。名字で呼びなさい」
「ローゼンベルク先生」
アベルの耳に幻影のわんこ耳も見えた。
嬉しそうにパタパタしてる。
「幼馴染が気になるのは分かるが、もう授業が始まる。自分の教室に戻りなさい」
「あ、ヤバッ」
壁にかけられた時計を見たアベルは、お兄様に頭を下げると、慌てて教室へ戻っていった。
お兄様はそんなアベルを「まったくあいつは」という顔で見送る。
そして振り返って私を見た。
アイスブルーの瞳がほんのりと柔らかさを増して、形の良い唇がわずかに笑みの形を作る。
片手に教科書を持って白いシャツにジレを着ているお兄様は、まさに乙女の理想の教師という出で立ちで、教室のあちこちからうっとりするようなため息が漏れる。
くうううううっ。
お兄様、かっこよすぎではないですか。
「さて、早速だが授業を始めるので、みんな席に着きなさい」
当然のことながらえこひいきなどしないお兄様は、私から視線を外して教壇へ立った。
わーい。正面以外から見るお兄様の顔も素敵。
「さて。私は今日から君たちの担任としてクラスを受け持つセリオス・ローゼンベルクだ。一年間、よろしく頼む」
お兄様が喋るたびに、女生徒たちから抑えた黄色い声が上がる。
うんうん。分かる分かる。
声すらもカッコいいもんね。
さっき私に絡んできた三人組なんか、声を抑える気もないらしくキャーキャー言っててちょっとうるさい。
「最初に言っておくが、卒業したばかりの私が教師として教壇に立つのは、魔力過多から回復したばかりの妹、レティシア・ローゼンベルクのためだ。回復したとはいえ、魔法を使う際にはまだ命の危険がある。そこで私が魔法学の講師とこのクラスの担任を務めることになった」
教室中から私に視線が刺さる。
私は、ここぞとばかりににっこり微笑む。
第一印象ってとっても大事だからね。スマイル0円で好印象を持たれるなら、いくらでも振りまいちゃいます。
そんな生徒たちに注意を促すように、お兄様は持っていた教科書を、わざと音を立てて机に置いた。
「妹をえこひいきしていると思う者もいるかもしれないが、はっきり言おう。その通りだ。ローゼンベルクを敵に回したくないならレティシアに危害を加えるな。学園は平等を謳っているが、そんなものは建前だ。ここは社会の縮図で、君たちは大人になってからの立ち位置を学ぶために学ぶのだ。だが上位貴族が理由なく下位のものを虐げるのは許さないから、そのつもりでいるように」
お兄様は公私混同をしないと思ってたけど、それは私の間違いでした。
思いっきりえこひいき発言してます。
もちろんそんなお兄様の発言に、教室がシーンとした。
私もびっくりした。
でも、今のちょっとラスボスっぽくてカッコよかったです!
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