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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第ニ章 学園に入学しました

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第65話 勇者の幼馴染

 勇者に対しての私の感情は複雑だ。


 魔王からこの世界を救ってくれるありがたい存在なんだけど、原作ではお兄様を殺しちゃうんだよね。


 もちろんお兄様が闇落ちしてラスボスにならなければその未来は訪れないんだけど、少しでも可能性があるならあんまりお近づきにはなりたくない。


 学校に入学しても新入生と最高学年だからそんなに接点がないし、一年間だけ避ければ何とかなるかなと思っていたのに、まさかこんな罠があるとは……!


 まあでも学年が違うしそんなに接点がないよね、って思ってたら――。


「マリア!」


 ぎゃああああああ。

 勇者、なんでいるのおおおおおお。


 幼馴染を心配した勇者アベルは、なんと授業が始まる前にマリアの様子を見にうちのクラスまでやってきました。


 まだ魔王が復活してなくて名誉職みたいな扱いだけど「勇者」の肩書は強力だ。

 クラスメイトたちがアベルの登場にざわついている。


 栗色の髪に金の混じる琥珀色の瞳。

 かつて聖剣のある洞窟の近くの村で見た時よりも、成長してたくましくなっているアベルがそこにいた。


 ただ小説の挿絵で見た時のような陰はない。

 正義感にあふれ希望に満ちた、人々が想像する「勇者」そのものの眩しいほどに光り輝くオーラがあった。


「アベル」


 アベルの姿を見たマリアちゃんが嬉しそうに立ち上がった。


 席に座ったままの私は貴族らしく微笑みを顔に張りつけながら、ただのクラスメイトですよー、無害ですよー、とアピールしておく。


 小説のようにお兄様がアベルに討たれるなんてことはないだろうけど、もしもの時のために、少しでも勇者からの好感度は上げておかないとね。


 注目されているのが分かっているアベルは、ぐるりとクラス中を見回した。


「僕は勇者アベル。この子は僕の幼馴染なんだ。仲良くしてあげてね」


 うーわー。


 貴族だからといって平民のマリアちゃんをいじめるなって、けん制してる。


 少し威圧もかけてるのか、空気がピリピリする。


 モコが心配そうに私を見上げているのが分かったけど、これくらいなら何ともないから平気だよ、とそっとモコの体をなでる。


 モフモフが気持ちいい。


「もうアベルったら心配性なんだから」


 マリアちゃんはそんなアベルの威圧にまったく気がつかず、アベルの肩をペシペシ叩いている。

 幼馴染だからこの威圧に気がつかないのかなぁ。


 マリアちゃん、結構大物かもしれない。


「だって村から来て心細いだろうと思ってさ」

「大丈夫だよ。それにね、もうお友達ができたの」


 へー。凄いなぁ。やっぱりコミュ強っているんだなぁ。

 と思っていたら、マリアちゃんがくるんと振り向いた。


「レティシアさんって言うのよ」


 えっ、私?

 挨拶してちょっとお喋りしただけで友達認定してくれたの?


 それは……嬉しいかも。


 いや、私はお友達になれたらいいな、って思ってたけど、相手もそうかは分からないからね。


 お兄様を殺すかもしれないアベルの幼馴染っていうのが引っかかるけど、考えようによっては近くで見張ることもできるわけだし、今からお兄様の素晴らしさを語っておけば良いのでは。


 そうだよ。

 同担にしちゃえばいいのよ。


 私ったら頭いい。


「初めまして、レティシア・ローゼンベルクです」

「ローゼンベルク……セリオス様の妹さん?」


 えっ。もしかしてお兄様ともう知り合ってるの?

 魔王討伐パーティーなんてまだ組まれてないのに?


「お兄様をご存じなのですか?」

「うん。同じ魔力過多の妹さんがいるからって目をかけてくださって……。そうか、君がその妹さんなんだね」


 そういえば、学年も違うし貴族と平民だから接点がないと思ってたけど、魔力過多で、しかも勇者であるアベルをお兄様が気にかけないわけない。


 お兄様はきっと、私と同じ病気で苦しむアベルを放っておけなかったんだろう。


 小説でもそんな描写があったような気がする。


 アベルはそんなお兄様に感謝して、共に戦う喜びを伝えていた。

 アベルとお兄様とエルヴィンと――魔王討伐パーティーの三人は、深い信頼で結ばれた仲間だった。


「君の病気を治すための薬が、結果的に僕を救ってくれた。本当にありがとう」


 アベルの強いまなざしが私を見つめる。


 あぁ。

 小説と一緒だ。


 真っ直ぐで眩しくて、そしてその正しさはすべてを焼き尽くす。


 主人公らしい正義感で、アベルはラスボスになってしまったお兄様を殺してしまう。


 でもさー、親友に婚約者を奪われたお兄様の悲しみも考えてほしい。


 お父様もエルヴィンも、そして私もいなくなって、お兄様の手の中に残されたのはフィオーナ姫とアベルだけ。


 それなのにその二人に裏切られたお兄様の悲しみを思うと、小説の中のこととはいえ、胸が張り裂けそうに辛くなる。


 人を好きになる気持ちは止められないから二人が恋に落ちてしまったのは仕方がないとしても、陰でこそこそ密会するんじゃなくて、お兄様に心から謝って許しを得るとか、もっとやりようがあったんじゃないかと思う。


 お兄様は優しいから、きっと二人が真摯に向かい合っていたら、きっと最後は許してくれたはず。


 それをお兄様を騙すような形で二人の婚約が決まったから、闇落ちしてしまったんだよね。


 もっとも、今はお父様も私もついでにエルヴィンも生きてるし、なんだったら魔王は復活してないし、フィオーナ姫とも婚約してないから、そんな未来は来ないと思うけど。


 お兄様を、絶対ラスボスなんかにさせないんだから!



もしも「面白かった」「続きが気になる」などと思って頂けましたら、

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どうぞよろしくお願いします!

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