第57話 実は光るだけじゃないんです
入学式が終わると、私はすぐにお兄様の元へ駆け寄った。
今日は式だけなので、後は家に帰るだけなのだ。
生徒たちの注目を浴びながら二人で親族席にいるお父様の元へ戻る。
ローゼンベルク公爵の一家が揃っているということで、生徒たちだけじゃなくて先生方もこっちを見てざわざわしているので、話しかけられないうちにさっさとローゼンベルク家の紋章が描かれた馬車に乗りこむ。
すると、すぐにモコが飛びついてきた。
「モコー!」
全身真っ白でふわふわのモコを抱き留めると、すぐに頭を撫でる。
「モコ、寂しかった~」
もう魔力過多の発作で倒れることはないと分かっているのに、今までこんなに長くモコと離れたことがなかったから、凄く心細かった。
モコも、全身で私に体を寄せる。
ふわぁ。
もこもこのもふもふだ……。
癒されるぅ……。
モコの柔らかい手触りを楽しんでいると、向かいの席に座ったお父様が感動したように目を潤ませていた。
「レティが学園に入学するなんて夢のようだ」
「モコとランと、そしてお父様とお兄様、ロバート先生、みんなのおかげです」
私はモコを抱きしめたまま、隣に座るお兄様と正面にいるお父様を交互に見る。
二人とも慈愛に満ちた目で私を見ていて、私って本当に愛されてるなぁとしみじみ思う。
きっと誰一人欠けていても、今の私はいなかった。
最初にお兄様に頼まれたお父様がモコを連れてきてくれたから、魔力過多の症状で寝たきりにならずに済んだ。
モコとランが魔力過多の特効薬ができるまでの間、私の過剰な魔力を吸収してくれなかったら魔力の暴発が起こっていた。
ロバート先生は魔力過多の薬を開発してくれた。
そしてお兄様。
お兄様をラスボスにしないために絶対に生き延びなくては、という強い意志が、私の生きる目的になった。
「レティが一番がんばったからだよ」
お兄様が極上の微笑みを浮かべる。
これは私へのご褒美ですか。ご褒美ですよね。
入学祝いとしてもらっておきます。
「発作が起きても諦めなかった。そんなレティを誇らしく思う」
「お兄様……」
わーん。
お兄様にそんなこと言われたら、感動で泣いちゃうじゃないですか。
私もお父様のように目をうるうるさせていたら、感極まって体がペカーっと光った。
しまった。油断してたから光っちゃった。
ほろりとこぼれそうになった涙が、秒で引っこんだ。
学校では光らないように注意しようと思ってたのに、これじゃ前途多難だなぁ。
思わず肩を落としてしまうと、私を元気づけるためなのか、お兄様が馬車の目立たないところに貼ってあるお守りに触れる。
「お守りの効力が薄れそうだと思ってたから、ちょうどいいね」
お守りにはモコの毛で刺繍をしている。
刺繍の文字は、私がレベルアップしたので『守』じゃなくて『絶対防御』だ。
これで馬車の中にいる限り、物理攻撃も魔法攻撃も効かなくなっている。
お父様が使う馬車とお兄様が使う馬車のそれぞれにお守りを貼っているから、万が一襲撃されたとしても前みたいに怪我をすることはないから安心だ。
聖剣の力を分けた針でモコの毛で刺繍をすると、モコの毛が金色に光る。でもお守りの効力がなくなってくると、その輝きが薄れてしまう。
つまり、取り替え時が分かるのだ。
分かりやすくて、とっても便利。
今は私が光ると魔力が充填されるので、新しくお守りを作る必要がない。
最近はモコの毛が余り気味になってるから、集めた毛で、毛玉だった頃のモコの人形を作ってみてもいいかなぁ。
(本当はモコにもお友達が必要かもしれないんだけど……)
モコは、今でこそ小型犬くらいの大きさの犬のような姿をしているが、元々は目があるだけの毛玉だった。
ドラゴンが生息する近くにしかいない精霊の一種と呼ばれていて、魔力を吸収する能力があるということで、魔力過多の発作を起こす私のためにお兄様が手に入れてくれたのだ。
私は特に魔力が多かったらしく、なんとモコが成長した。
手の平に乗るくらいの大きさだったモコは、今では耳としっぽが生えて、小型犬くらいの大きさになっている。
実はフェンリルの幼体だったなんて、凄く驚いた。
元聖剣のランの説明によると、いずれもっと育つと、自在に大きさを変えられるようになるらしい。
わんちゃんみたいなモコは可愛いけど、あの毛玉サイズのモコも可愛いから楽しみ。
「ピアスのほうも色が濃くなったね」
お兄様がその美しい指で私の耳についたピアスに触れる。
ふおおおおおお!
顔が……顔が近いです!
お兄様の、神様が完璧に造形した麗しい顔が近づくと、私の体はさらに光り輝く。
この状態になると、魔力過多が完治する前は命の危険があったんだけど――。
「レティ!?」
魔力過多の特効薬を飲んで完治した今は、興奮して魔力が増えすぎるとリミッターが発動して。
「ぐー」
眠ってしまうのだ。
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