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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第一章 推しの妹に転生しました

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第46話 僕の妹は凄い(セリオス視点)

 目覚めた妹の姿に喜ぶ間もなく、レティシアはすぐに苦しみだした。

 ロバート先生に診てもらうと、魔力過多の発作だという。


 魔力過多というのは、体内の魔力が多すぎて体が耐えられなくなってしまう病気だ。


 魔力は成長と共に増えていく。


 生まれてすぐに発作を起こすほどの魔力を持つとなると、増えていく魔力に体が耐え切れず、成人する前に命を落としてしまう。


 一度は目覚めたはずのレティシア――レティだが、その後何度も魔力過多の発作を起こした。


 しかも僕が見舞いに行くとなぜか発作を起こす確率が高くなってしまうので、遠くからそっと見守るしかない。


 何度も発作を起こすうちに、レティの体力はどんどん失われていく。


「このままではレティシア様の体力はもたないでしょう」


 主治医のロバート先生は、青白い顔のレティを治そうと必死に努力してくれたが、それでも限界がある。

 このままではいつかレティも死んでしまう。


 ロバート先生に、最近の研究によるとドラゴンの住処にいる毛玉が魔力を吸収する性質を持つのが分かったので、もしかしたらレティの回復に役立つのではないかと提案された。


 他に有効な手段がある訳ではなく、藁にもすがる思いで、父の代理として公爵家の権限をたっぷり使って依頼を出した。


 ドラゴンを倒すのではないとはいえ、その住処から毛玉を持って来るには相当な手練れが必要だ。


 冒険者ギルドでも相当な実力者のパーティーを複数雇い、やっと一匹の毛玉を入手できた。


 さっそくレティに与えてみると、魔力過多の発作が起きそうになっても、本当に毛玉が魔力を吸収してくれて発作が起きない。


 毛玉の入手が難しいとはいえ、今までまったく治療法のなかった魔力過多という病気に対して、画期的な発見だった。


 ロバート先生の喜びようは凄く、なんと涙まで流していた。

 その時、初めてロバート先生が娘を魔力過多で亡くしているのを知った。


 ロバート先生は娘の代わりに、レティを必死に治そうとしてくれているのだろう。


 ある程度の発作であれば毛玉が抑えてくれるのが分かったので、僕は思う存分可愛い妹と触れ合えた。


 母を亡くし、父もあの状態なので、身近な家族は僕しかいない。

 だからだろうか。レティは小さな体全体で僕への愛情を示してくれた。


 小さな手が僕に伸ばされ、柔らかく甘い体を抱きしめると、心が幸せで満たされた。

 母が亡くなってから止まっていた時間が、少しずつ流れていくようだった。


 幸せが、ピンクブロンドの髪を持つ天使の形を取って訪れてきた。


 レティが初めて僕を呼んでくれた時には、公爵代理として働く辛さも吹き飛ぶほどだった。


 しかし、いくら僕が年の割には優秀だといっても、まだ子供だ。

 レティの為にも、そろそろ父には立ち直って欲しい。


 それにこんなにも可愛らしいレティの姿を一度でも見れば、きっと父もレティの為にと母の死を乗り越えてがんばってくれるに違いない。


 今さらどんな顔をして娘に会えばいいのか、などと言っていた情けない父の背中を押してレティに会わせると、予想どおりに父はレティを溺愛した。


 当然だ。

 レティはこの世界の誰よりも可愛いのだから。


 ただ毛玉のおかげで発作が少なくなったとはいえ、完治したわけではない。


 それからも大きな発作は何度もあった。

 しかも僕がそばにいる時に起こる確率が高い。


「レティは僕といる時の方が発作を起こしやすいと聞いた。……もう、会わない方がいいのかな……」


 思わず漏れてしまった弱音に、レティがつたない言葉で必死に反論する。


「レチーはにーたまがだいしゅきです。毎日会いたいでしゅ!」


 そして恐る恐るといった様子で僕の顔を見上げてくる。


「にーたまはレチーが嫌いでしゅか?」

「そんな事、ある訳ないだろう。でも……」

「だいじょぶでしゅ。もうたおれまちぇん」


 なぜか自信を持っているレティだったけれど、僕は一度手にした幸福を失うのが怖かった。


 こんな小さな子供に弱音を吐くなどいつもの自分だったら考えられなかったけれど、言わずにはいられないくらい、臆病になっていた。


「お母様に続いてレティまで失ってしまったら僕は……」

「ちにまちぇん! 絶対でしゅ!」


 レティには何か確信があったのだろうか。

 そのやり取りの後は、比較的穏やかな日々が続いていた。


 それなのに、父の後妻を狙う侍女のミランダの企みで、危うくレティが殺されそうになった。

 かろうじて命はとりとめたものの、屋敷の中にそのような者がいるので気が休まらない。


 父は母が亡くなった後よりは良くなったものの、まだ本調子ではないらしく頼りにならなかった。


 だから、僕が、この命に代えてもレティを守るのだと誓った。

 レティは僕の光だから。


 そんなレティは「お守り」という物を発明した。


 モコの毛と特別な針を使って作っているらしいのだが、盗賊に襲われて瀕死だった父をあっという間に回復するなど、その効果は恐ろしい程で、下手な魔法よりもよほど効き目があった。


 お守りのおかげで、我が家に害なす奴らは屋敷に入れなくなり、どこよりも安全な家となった。


 そしてレティは精霊の一種だったというモコから、魔力過多を治療できるかもしれない花があるのを教えてもらった。


 王宮で王妃が育てている、リコリスという花がある。王宮で咲いているのは白に赤い縁取りのリコリスだが、黄金色に輝く花は魔力過多の特効薬になるというのだ。


 それを聞いたロバート先生が、黄金色ではなくてもリコリスに魔力過多を抑える効き目があるのではないかと考えて研究した結果、あまり大きな発作でなければ防げる事が判明した。


 魔力過多の発作で娘を亡くした先生の悲願――魔力過多の治療という目標の達成に、大きく貢献する発見だった。


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