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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第一章 推しの妹に転生しました

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第41話 聖剣執事

「それにしても聖剣が人になるとは……。どうしたらいいんだろう」


 ああ、悩まし気なお兄様も眼福です。


 っていうか、どんな姿にもなれるなら、人型じゃなくてモフモフの方が嬉しいんだけどなぁ。

 なんで人型になったんだろう。


『毛玉は既にいるだろうが。剣のままでは娘が持てぬだろうから、側にいてもおかしくない執事とやらになる事にしたのだ』


 えええ。そんな理由……?


『ずっと側にいられるのは護衛か執事だが、護衛だと剣を持たねばならないだろう?』


 うん。


『我は剣ゆえ、他の剣など手にしたくはない。執事なら剣を持たずに済む』


 あー、うん。

 確かにそれはそうなんだけど……。


 でも、聖剣が執事? こんなに偉そうなのに?


 執事の格好は似あうけど、言葉遣いがダメだと思う。


『む。これではいかんのか』


 うん。

 これではいけませんかお嬢様、って言わなきゃ。


『お嬢様とは誰だ』


 私です。


『娘ではいかんのか……』


 何となくうなだれている聖剣に、だったら人じゃなくて短剣とかにすればいいんじゃないかって提案したんだけど、一度人型になってみたかったらしく却下された。


「聖剣さんの呼び方は何にしたらいいだろう」

「我の名は――」


 グランアヴェール、なんでしょ?


 でも長くて呼びにくいから、違う名前がいいなぁ。アヴェールから取ってアベルだと、小説の主人公と同じ名前になっちゃうから、グランかなぁ。


 いっそ、もっと短くしてみてもいいかも。


「ランっていうのはどう?」


 これだったら呼びやすいし、元の名前からそんなに変わってない。

 それに何となく執事っぽい。


「ふむ。悪くない」


 聖剣改め、ランが納得したように頷く。

 気に入ってくれたみたいで良かった。


「じゃあ後はこの黄金のリコリスを持って帰りましょう」


 すっきりした気持ちでお兄様の方に振り返る。

 お兄様はこめかみに指を当てたまま、ランをじっと見据えていた。


「そうだね。僕はちょっとこの元聖剣とお話があるから、レティはリコリスを採集しておいで」


 そう言ってお兄様はランの手を引っ張っていく。


 まだ成長途中のお兄様のほうが背が低いのに、何だかランの方が気圧されているような……?


 とても気になったけど、それよりも黄金のリコリスを採集しなくては。


 ちゃんとスコップは持ってきたし、根っこから掘ればいいかな。


 私はモコがふわふわと飛んで遊んでいる黄金のリコリスの群生している場所へ行く。金色に輝く花粉まみれになったモコは、ふわふわでキラキラだ。


「根っこが岩にくっついてなければいいんだけど……」


 黄金のリコリスの根元は、金色の花粉で覆われている。

 しゃがんで指ですくうと、指がキラキラと輝いた。


「もしかして、これが土の代わり?」


 だとすると、運ぶ時にこの花粉も一緒に持っていかなくちゃいけない。

 これ全部を運ぶとなると大変そう。


「でもちゃんと栽培できるか分からないから、とりあえず何株か持って帰ってロバート先生に渡してみよう」


「おい」

「この洞窟で育つって事は、水はそんなに必要ないのかな」


「おいってば」

「だとすると、必要なのは何だろう。どうしてここにだけ黄金のリコリスが咲くんだろう」


 うーん、と腕を組んで考えている私の前に、にゅっとエルヴィンが顔を近づけてきた。


「うわぁ、びっくりした!」


 思わず飛びのくと、逆に私の声に驚いたエルヴィンが後ずさる。

 そしてそんな自分を恥じるように、ぶっきらぼうに口を開いた。


「これ、何がどうなってるんだよ」


 うーん。どこまで説明すればいいかなぁ。


 まず黄金のリコリスからは魔力過多を直す薬が作れるってところからかな。

 お兄様にも説明したように、精霊であるモコから聞いたって事にしよう。


 エルヴィンは何も知らないままついてきたけど、さすがにこの状態で何も知らせないという訳にはいかない。


 口止めもしておかないといけないしね。


「そんな薬ができたら凄いじゃないか」

「うん。でもまだ誰にも言っちゃダメですよ」


「なんでだ? 凄い発見じゃないか」

「そうだけど、これから薬の開発をするわけだし、絶対にできるってわけじゃないから」


 私はロバート先生が薬を完成させるって信じてるけど、それでも絶対はない。

 それにロバート先生の功績を横取りしようとして、どこからか邪魔が入らないとも限らない。


「分かった。完成したら、お前も一緒に学園に通えるな」


 もうすぐ入学するエルヴィンは、いつでもお兄様と遊べるようになると言って、学園に通うのをそれはそれは楽しみにしている。


 学園は遊ぶところじゃなくて勉強するところだというのは置いておいて、私はこのままだといつ魔力過多の発作を起こすか分からないから学園に通えないだろうという話をしたことがある。


 そもそも小説のレティシアはお兄様が学園に入学する直前に死んでしまうし、物語の強制力のようなものがあったら、完治していない私が死んでしまう可能性はゼロではないと思ってた。


 だけど、黄金のリコリスを使って薬が完成したら……。

 そうしたら憧れの、お兄様との学園生活が送れる。


 わぁぁぁぁ。何てパラダイス!

 何としても、黄金のリコリスを持って帰るわよー!




もしも「面白かった」「続きが気になる」などと思って頂けましたら、

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どうぞよろしくお願いします!

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