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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第一章 推しの妹に転生しました

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第39話 聖剣をわが手に

「こんなところに剣……?」


 黄金のリコリスしかないと思っていたお兄様は、地面に刺さっている、いかにもいわくありげな剣を警戒している。


 そしてエルヴィンは――。


「おおっ、凄い剣だな」

「殿下、危ないです!」


 護衛のイアンの制止を無視して、大喜びで聖剣の元へ走っていった。

 そして躊躇せず剣に手をかける。


「なんだ? 抜けないぞ」


 なかなか抜けない剣に苛立ったエルヴィンは、両手で剣を持って引き抜こうとする。

 でも抜けない。


『ふわっはっは。我はその辺のこわっぱには抜けぬ』


 そこにいるのはその辺のこわっぱじゃなくて、一応王太子だけどね……。


「抜けないじゃないか」

「殿下、このような得体のしれぬ剣など触ってはいけません」


「だがこの剣は見るからに業物だぞ。きっと名のある名工が打ったに違いない。イアンなら抜けるか?」


 さあ抜いてみよ、とにこにこしているエルヴィンに、イアンは呆れたようにしている。


 でも自分ならば剣が抜けるかもしれないと思うのか、結構真剣な顔で剣を見つめている。


 男子って、こういうの好きだよね。

 いつもは生真面目そうな顔のイアンも、どこかわくわくしたような期待に満ちた目を聖剣に向けている。


 そっと聖剣の柄を握って力をこめる。

 かなりの力をこめているのが分かるけど、聖剣はビクともしない。


『はっはっは! それしきの力で我を抜こうとは片腹痛いわ』


 聖剣は興が乗ったのか、悪役みたいなセリフを言ってイアンを煽ってる。


 多分、聞こえてないけど。


 そもそも聖剣は私と契約しちゃってるから、他の人には抜けないと思うんだよね。

 だったら早く止めればいいのかもしれないけど、こっちはそれどころじゃないし。


「僕にも無理でした」


 イアンはしばらく奮闘していたけど、諦めて手を離した。


「じゃあ今度はセリオスの番だな。ってお前、何をやっているんだ?」


 そしてお兄様は、聖剣には目もくれず黄金のリコリスの観察をしている。もちろん私も。


 だって絶対抜けないのが分かってるもん。


 モコは黄金のリコリスに興味津々なのか、花の匂いをかいで、ふわふわの毛に花粉をつけちゃってる。

 花粉も少し光ってるのか、発光する毛玉になってて可愛い。


「お兄様、やっぱりこの土ごと持っていくのが良いですよね」

「土自体はそんなに多くないね。その下の岩にも根が張っているみたいだ」


「根っこを傷つけないように持って帰りたいですよね」

「いっそここに研究所を作りたい」


 いや、それは無理かなぁ。

 ここはミランダのとこの領地だし。


「おい! セリオス!」


 聖剣にまったく興味を持たないお兄様に焦れたエルヴィンが、大声を出して注目を集めようとする。

 その横ではイアンが申し訳なさそうにしていた。


「セリオスも試してみろ」


 絶対に無理だろうという視線に、私の方がムッとしてしまう。


 そりゃあお兄様は勇者じゃなくて、ラスボスだけど。


 でも勇者よりずっと強くてかっこいいんだから。

 だから聖剣なんて抜けなくても別にいいのだ。


 そう思っていた私に、聖剣から驚きの発言があった。


『娘の兄か……。まあ、資格はなきにしもあらずではあるが』


 えっ、そうなの。

 じゃあ私が契約者にならなかったらお兄様が聖剣の主になってたかもしれないんだ。


 私は聖剣をよく見る。


 本物の聖剣は、持ち手に宝石がついてるわけじゃなくて、本当にどこにでもあるような装飾のない素朴な剣だった。


 ただその刀身には複雑な刀紋があって、剣自体がキラキラと輝いている。

 エルヴィンが言うように、一目で凄い剣だって分かる外見だ。


 それを持ったお兄様を想像すると……、かっこよすぎじゃないですか!?


(聖剣さん、契約者の変更ってできるの?)


 思わず食い気味で聞くと、呆れたような声が帰ってきた。


『できなくはないが、そうすると我の分身である針は使えなくなるぞ』


 そ、それは困る。


 多分、モコの毛を使わせてもらえば多少はお守りの効果があるだろうけど、今までのような劇的な効果は望めない。


 でも、私にあんな重そうな剣が持てるかなぁ。


『試しに持ってみればいい』


 それもそっか。


 私は興味なさそうなお兄様の横を抜けて、てくてくと聖剣の元へ行く。


「レティ?」


 無理だろうという顔のエルヴィンとイアン、そして慌てて追いかけてくるお兄様を横目に、私は聖剣の柄をぐっと握った。


 するっと剣が地面から抜ける。

 ほんとだ。軽い。


 やっぱり、こういう時は、これだよね。

 剣を高々と掲げた私は叫んだ。


「取ったりー!」


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