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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第一章 推しの妹に転生しました

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第36話 襲撃者の正体

 私が作った自白お守りはとっても良く効いた。

 それこそ、昨日の夕飯まで全部喋ってくれたのだ。


 そして襲撃者を雇った人の名前もしっかり吐いた。

 ネヴィル子爵って人のところの元騎士だったらしい。


「ネヴィル子爵……?」


 ダレソレ?


 お兄様からその名前を聞いても、ピンとこない。


 てっきりミランダの関係者かと思ったら違ってたし、そんな名前の人は小説にも出てこなかった。


 しかも「元」ってことは、今は無関係?

 そんなことはないか。きっと襲撃にあたって身分を隠したんだよね。


「三年前に飢饉が起きて領地の運営に失敗した家は、だいぶ騎士団を縮小したと聞くから、その時に解雇されてはぐれ騎士になったんだと思う」


 基本的に騎士っていうのは、貴族であっても爵位を継げない次男三男がなるか、それで騎士になって功績を立てて騎士爵をもらった人の子供がなる職業だ。


 この世界には魔物がいるから、強い魔物なんかを倒すのを仕事にしている。

 男の子が憧れる職業ナンバーワンだ。


 でも田舎の騎士団なんかは、農民が騎士になりました、みたいな人が多くて、領地の運営が厳しいと解雇されちゃったりするらしい。


 普通はそのまま農民に戻って、また何かあったら騎士に戻るんだけど、もう農民なんてやりたくなくて腕に覚えのある人は、そのまま冒険者として活動する。


 元騎士の彼らは新人とはいっても戦う訓練をしてきたので、すぐに頭角を現す。


 それで多少のやっかみをこめて、元騎士で冒険者になった彼らを「はぐれ冒険者」って呼ぶのだ。


「王妃様の侍女の一人が、ネヴィル家の出身だよ」


 首を傾げていたらお兄様が教えてくれた。

 さすがお兄様、王妃の侍女の出身まで把握しているとは。


「王妃様の……?」


 エルヴィンはさっきからうつむいて、一言も喋っていない。

 ただその両手は、真っ白になるまできつく握りしめられていた。


 これって、ミランダが王妃様に頼んで私たちを排除しようとしたって雰囲気じゃないなぁ。


 もしかして狙われたのって、私たちじゃなくて……。


「きっと、何かの間違いだと思う」


 エルヴィンの伏せられたまぶたの下から、いつもは明るく輝いている青い瞳が暗い色をまとって現れる。


 護衛のイアンは心配そうにそんなエルヴィンを見守っていた。


「狙われたのは俺じゃない。だって義母上が俺を殺そうとするなんて――」


 不思議だった。

 この世界に転生したのが分かって、社会の仕組みを知って。


 なぜ魔王討伐の旅に、王太子であるエルヴィンが同行したんだろうって。


 エルヴィンが勇者だったなら、それも納得できる。

 でもエルヴィンは王太子だ。


 本来であれば、絶対に傷つかない後方で守られて居なくちゃいけないはずだ。


 いくら剣が強いっていっても、聖剣を持った勇者には負ける。

 身を盾にして勇者を守るなら、他にもっと強い人がいたはず。


 小説のエルヴィンは脳筋でちょっと考えなしのところがあったから、自信過剰のまま突っ走って魔王討伐の旅にくっついて来たんだと思ってた。


 でも、もし、その旅で死ぬのを望まれていたんだとしたら……。


 能天気なまでに明るく強引で、俺様で。

 それが全部、表面上だけだったとしたら……?


「たとえエルヴィンが死んだとしても王族男子は他にもいるから、一人娘のフィオーナ殿下が王位に就くのは難しい。王弟殿下が王位を狙っているという可能性もある。ネヴィル子爵の年代だと、学園で王弟殿下と交流があったかもしれない」


 実を言うと、王弟殿下には王位継承権がない。


 国王に後継の王太子がいる場合、継承争いを避ける為に国王の兄弟は継承権を失い、その子供に移るのだ。


 つまり、王位継承権第一位はエルヴィン、第二位と第三位は王弟殿下の息子二人ということになっている。


 だからたとえエルヴィンを殺したとしても、王弟殿下じゃなくて息子が王位を継ぐ。


 息子たちの後見人になって国を治めるっていうのも有りかもしれないけど、そこまで権力に固執してるなら、継承権があるうちに何か問題起こしてそうな気もするんだよね。


 今まで特にそんな話は聞いてない、けど……。


 小説では息子二人は死んでいる。王弟の名前も出てこなかった。

 つまり原作開始時に王弟一家は、存在してなかったってことになる。


 これって、もし王妃が犯人だったら王弟を排除したから登場してなかったって考えられるし、王弟が犯人だとしたらそれがバレて粛清されたとも取れる。


 それか、どっちにも関係ないかもしれないし……。


 お守りの力で「自白」させても、実行犯が何も知らないんじゃ分からない。


「叔父上が……」


 王弟殿下とも仲が良いのだろう。

 エルヴィンは認めたくないようで頭を振っている。


「いずれにしても証拠がない。まったく関係のない第三者が黒幕かもしれないし、そこは父上に真相究明をがんばって頂こう」


 なるほどー。捜査を主導するのは王家じゃなくて公爵家にするんだ。


 まあねー。エルヴィンが狙われたってことは、確実に王家のゴタゴタだもんね。


 本来は王様が率先して解決しなくちゃいけないことだけど、王妃とか王弟が犯人だった場合、事件が闇に葬られる可能性もあるのか……。


「すぐに迎えがくるだろうから、襲撃してきたやつらを引き渡したら、僕たちは先に進もう」


 王都をすぐに出たところで襲われたから、引き渡しも楽だ。


「エルヴィンは、どうする?」


 もしこのまま先に進むとしても、また今回みたいに襲われる可能性がある。


 多分エルヴィンは、ちょっとした冒険のつもりでこの旅に押しかけてきたはずだ。

 ここまでの危険は感じてなかったと思う。


 しばらく悩んだエルヴィンは、なぜか私を見てから答えた。


「いや、このまま行く」


「そうだね。狙われてるのがはっきりした以上、誰が敵か分かるまで王都を離れた方がいいかもしれない。それにレティのお守りの効果は絶大だしね」


 やったー!

 お兄様に褒められたー!


 頭も撫でてもらってご機嫌な私だったけれど、エルヴィンの事もあるし浮かれてはいられない。


 とにかく聖剣と黄金のリコリスを見つけないと。

 お兄様をラスボスにさせないために、頑張ります!



もしも「面白かった」「続きが気になる」などと思って頂けましたら、

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どうぞよろしくお願いします!

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