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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第一章 推しの妹に転生しました

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第28話 リコリスの活用法

 突然のレブラント枢機卿の訪問には驚いたけど、とりあえずお守りを研究材料として渡して帰ってもらった。


 いくら調べても、お守りは呪いではないから、魔女の証明はできない。


 呪いって禍々しい魔力を持つらしいけど、そもそも聖剣自体が鍛冶神へパトスに作られた眷属みたいなものだから、その聖剣の力を反映させた針で刺繍したお守りには、呪いじゃなくて神様の祝福が宿ってる。


 ひょっとするとモコが神様の遣いとかで祀り上げられちゃう可能性もあるけど、それは心配しても仕方ないよね。


 無理やりさらおうと思っても、この屋敷はお守りの効力によって守られてるから、敵は入ってこれない。

 つまりここから出ない限り、モコの身は安全なのである。


「でもミランダの故郷には行きたいんだよね」


 私の主治医であるロバート先生が王太子の持ってきてくれた白いリコリスを栽培して薬ができないか研究してくれているけど、まだこれといった成果がない。


 リコリスの花を煎じて飲めば多少の効果があるのは分かったが、発作が起きた時にすぐ用意ができない。


 それにリコリスは乾燥させると毒素を持つので、普通の茶葉のように乾燥させた物を保存しておくという手段が取れないのもネックだ。


 常に新鮮な花を用意しなくちゃいけないっていうのも、ハードルが高いんだよね。


 黄金のリコリスさえ手に入れば特効薬が作れるんだけど、「敵は外」お守りで弾かれてしまったミランダの故郷に私が行くというのは現状では厳しい。


「お湯に花を入れて煮詰めて、その残った液体を瓶につめる、とか……」


 でも瓶詰めした液体って、すぐ腐りそう。

 腐らなくするには保存料とかが必要だけど、そんな物は存在しないし。


 じゃあ抗菌作用が強い物を一緒に入れるっていうのはどうだろう。


 そうだなぁ。この世界で手に入りそうなのって何かあるかな。


 例えば、蜂蜜とか。

 蜂蜜を入れたらトローって固まって……。


 うん?


 もしかして飴みたいにならないかな。


 昔、手作りのハーブキャンディーにハマって自分で作った事があるんだけど、濃く淹れたハーブティーに砂糖と蜂蜜を入れて沸騰させてからレモン汁を加えて冷やして固めればいいから簡単だった。


 それと同じ作り方でリコリスキャンディーが作れるのでは。


「そっか。薬だって考えるから難しいけど、ただ固めるだけなら飴でもいいんだ」


 そう思いついた私は、早速侍女のドロシーを連れてロバート先生のいる温室へと向かった。


「モコおいでー」


 声をかけると部屋の中でぽわんぽわんと跳ねていたモコが私の腕の中に飛び込んでくる。


 もふもふして手触りの良いモコをぎゅっとしてから、私はドロシーと手をつないだ。


「モコ、温室に行こう」


 王太子から白いリコリスを譲ってもらったお父様は、我が家に早速温室を作った。そしてその隣に、研究室兼、ロバート先生の住む家を建ててくれたのだ。


 魔力過多で娘さんを亡くしたロバート先生は、奥様も既に亡くなっていて独り身だった。


 そして研究者というのは家族がいないとちゃんとした食生活を送れずに、研究三昧の日々を過ごす事が多い。


 ロバート先生もその一人で、しかも娘を奪った魔力過多が治るかもしれないという事で研究に没頭しすぎて倒れてしまったらしい。


 それを知ったお兄様が、研究に専念しても倒れないようにと、衣食住を提供したのだ。


 さすがお兄様。研究室だけじゃなくて住む場所も考えるなんて素晴らしい。


 食事も使用人たちと一緒に摂る事もできるけど、食堂が開いてる時間を忘れる事が多いからドロシーが運んでいる。


 ロバート先生はそんな至れり尽くせりの待遇に恐縮してたみたいだけど、お兄様の「恩義を感じるならば魔力過多の特効薬を開発してレティシアを救って欲しい」という言葉に、ここでの生活を決めたのだとか。


 はあああああ。

 お兄様、大好きですー!


 私のためにありがとうございます!


 なんていうか推しに貢ぎたいのに貢がれてしまった感が凄いけど、幸せなので良しとしましょう。


 そんな訳で、温室に行けば、とりあえずロバート先生に会えるのだ。


「ロバート先生、いらっしゃいますかー?」


 小型犬くらいの大きさになってるモコを抱きしめながら温室に入ると、むわっと花の香りがした。


 前世の世界でのリコリスがどんな香りをしているのか知らないけど、この世界では百合をちょっと薄めたような香りがする。


 だからずっと温室で研究をしているロバート先生からはいつも百合の香りがする。


「レティシア様、ここですよ」


 温室の横には研究室と繋がるドアがある。

 その近くにいた先生はフラスコを手にしながら返事をしてくれた。


 茶色い髪と目は柔らかい印象で、眼鏡をかけた姿は小説『グランアヴェール』の挿絵で見た、優しい保健室のお兄さんそのものだ。


 そのロバート先生は、私の後ろにいるドロシーに気がついて少し目を細めた。


 おや?

 おやおや?


 そっと後ろを振り返ると、なんとなくドロシーの耳が赤い気がする。


 これは、もしかして……?


もしも「面白かった」「続きが気になる」などと思って頂けましたら、

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どうぞよろしくお願いします!

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