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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第一章 推しの妹に転生しました

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第27話 同担

 この世界における精霊とは、伝説の存在で、いるかいないのか分からないけど、神秘的で神様の遣いみたいなもの、という立ち位置にある。


 今までも魔王討伐の際に勇者を助けたっていう伝説があるので、教会としても精霊を「善なる存在」と認識している。


「その証拠に」


 と、お兄様は意味ありげに枢機卿を見た。


 悪そうなお兄様の顔も、滅多に見れないから貴重かも。


 心のアルバムにしっかり残しておかなくちゃ。


「当主である父が臥せって代理である私と幼い妹しかいない当家に、連絡もなく突然訪れるという暴挙をなさっても我が家の門をくぐれたのは、卿が神のしもべであるからでしょう。精霊は同じ神の使徒として、枢機卿を拒む事ができなかったのではないでしょうか」


 痛烈な当てこすりである。


 でも本当にいくら教会の偉い人だからって言っても、アポなしで突然来るのはマナー違反だと思うんだよね。


 ただ異端審問会っていうのは狂信者の集まりみたいなものだから、もし魔女がいたら隔離しなくちゃって急いで来たんだろうなぁ。


 それにしても敵味方判別扉が作動しなくて良かった。


 どういう基準で敵と味方を区別しているのか分からないけど、多分その人が「私たち家族に危害を加えようと思っているかどうか」で排除されているのかもしれない。


 枢機卿は、もし私が魔女だったら捕らえようと思ってやってきたわけだけど、最初から魔女だと決めつけてはいなかったから、扉をくぐる事ができたんじゃないかな。


「別に私は令嬢に危害を加えようと思っているわけではありません」


「でも魔力過多の子供に魔封じの腕輪をつけるというのは、死ねと言うのと同じですよね」


「魔女でないのであれば、そのような事にはなりませんとも」


 細い目を更に細くした枢機卿が笑みのような表情を浮かべる。

 でもなんていうか、笑ってる雰囲気が伝わってこなくて、怖い。


 私は思わずお兄様の服の袖を握った。

 するとお兄様は、大丈夫だよとでも言うように軽く頷く。


「お疑いなら、このお守りを持ち帰って研究なさったらいかがです?」


 お兄様の言葉に枢機卿は目を見開く。

 茶色い目の中に涼しい顔をしているお兄様の姿が映った。


「なんと、これを貸して頂けると?」


 お兄様はずっと後ろで控えていた執事長のセバスに命じてお守りをはずすと、そのまま枢機卿に渡した。


「どうぞ、お持ちください」


 お守りを受け取った枢機卿は、袋の中の札を見て動きを止める。

 敵は外、って書いてあるけど、漢字だから読めないみたい。


「この文様は一体……?」


 一瞬で警戒した表情になった枢機卿が、鋭い視線を向けてくる。


 なんと答えたらいいか分からず、私はお兄様を見上げた。

 するとお兄様が私の代わりに答えてくれた。


「夢で見たのだそうです」

「夢ですと?」


「はい」

「でもそれは魔の誘惑ではないのですか?」


 魔物の中には夢の中に入ってきて人を惑わす「夢魔」というのがいると考えられている。


 聖剣いわく、そんな魔物はいないみたいだけど。


 基本的に魔物は物理攻撃しかしてこない。

 ドラゴン……は火を吐いたりするけど、あれは魔法攻撃なんだろうか。


「いいえ。お兄様の無事を願う私の心に、神様が応えてくれたんです」


 そう。


 そもそも私がこの世界に転生したのも、セリオス・ローゼンベルクという至高の推しを幸せにしてあげるため。


 この転生に神様が関わってないはずはないから、つまりいずれかの神様も私と同じくお兄様を推してるはず。


 つまり同担――同じ推しを応援するファン仲間という事!


 どの神様か分からないけれど、これからもセリオスお兄様の幸せを祈りつつ、一緒に推していきましょうね!


もしも「面白かった」「続きが気になる」などと思って頂けましたら、

広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援いただけると嬉しいです。

どうぞよろしくお願いします!

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