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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第一章 推しの妹に転生しました

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第21話 お守りを作ろう

 聖剣に針に憑依してもらって、糸はモコの毛をもらって。


 じゃじゃーん!

 お守りを作りまーす!


 袋は首から下げられる巾着にして、中に入れる布に刺繍をする。


「守護、って言葉は難しそうだから、何かないかなぁ。絶対防御とかどうかな。これも難しそうだけど……お兄様の為だし、がんばる!」


 刺繍をやった事はないけど、メイドのドロシーがやってるのを見てるから多分大丈夫……のはず。


「巾着の色は、お兄様の目の色と同じ水色かなぁ」


 ドロシーから綺麗な色の布をもらって、教わりながら巾着を作る。

 ちょっと縫い目がガタガタだけど、初めてだし、こんなものよね?


「お上手ですわ、お嬢様」


 ドロシーはとても褒め上手だ。

 お兄様の為の努力を褒められるのはとても嬉しい。


 私はがぜんやる気に満ちて、刺繍に取り組む。


 さて、次はお守り作りだ。


 本当は小さな布に刺繍をしたかったんだけど、初心者の私にはハードルが高かった。

 とりあえず初心者向きのハンカチサイズからチャレンジだ。


 でも、これがとんでもなく難しい。


 なんていうか針を刺すごとに、疲れが溜まってしまうのである。絶対防御の「糸」も文字すら、刺繍できていない。


『それはそうだろう。魔力をこめておるのだからな』


(聖剣さん、なんとかして)


『無理だな。これ以上の力を貸すと、魔力があふれるぞ』


 ううう。それは魔力の暴走を引き起こすやつ。

 だめじゃない……。


 聖剣は私が持つ金属には力を流せるので、私が聖剣にお願いしたのは、私の魔力が流れ過ぎないように調整する事。


 聖剣の持つ力を流してもらってもいいんだけど、それより私の魔力を使ってお守りを作った方がいいだろう、って事になった。


 その魔力を留めておくのが、私の使い魔になったモコの毛なのである。

 モコと私は繋がっているから、モコの毛で作ったお守りはずっと効果を保つ。


 つまり、私の魔力が続く限り、お兄様を守れるのである。


 でも私の魔力を流すには、細かい調整が必要らしく、それで刺繍が進まないのだ。


『おそらく、その文字自体も力を持っているのだろう』


 私が刺繍しようとしているのは「漢字」だ。

 この世界にはない文字なので、なんとなく効果が大きくなりそうだなと思ったのだ。


(じゃあどうすればいいの)


『もっと簡単な字にしてはどうだ』


(簡単だと……やっぱり『守』かなぁ)


 複雑にしないで、とりあえずお兄様の無事と安全を守る事だけを祈って刺繍してみよう。


 私はやりかけの刺繍をほどいて、一文字だけ刺すようにする。

 そうすると不思議とするすると刺繍ができる。


 始めに作ったお守りはちょっと字が歪んだので、もう一つ作ってみる。

 多少字が歪んでるけど、これならお兄様にあげても大丈夫かな。


(聖剣さん、どう? これならいけてる?)


『ふむ。まあまあだな』


(まあまあかぁ……。でも無いよりましだよね)


 私が作ったお守りに対する聖剣の評価はイマイチだったけど、初めて作ったにしては上出来だよね。


 私は「見て見てー」とモコと遊んでいるドロシーに、真ん中に大きく「守」という文字を刺繍したハンカチを見せた。


 薄いハンカチを使ったから、これならお守り袋に入れても大丈夫だろう。


「これはなんの模様ですか?」


 不思議そうにハンカチを見るドロシーに、そっか、漢字を知らなかったら文字じゃなくて模様に見えるんだねと納得した。


「ええっとね。これがお兄様を守ってくれるの」

「まあ、そうなのですね。きっとセリオス様もお喜びになりますね」


 にこにこと笑うドロシーに、私も満面の笑みを返す。


「えへへー。そうかなぁ。そうだといいな」

「絶対そうなりますとも。では、こちらが旦那様に差し上げる分ですね」


 最初の、字がかなり歪んだお守りを示されて、じゃあついでにお父様の分も作ろうかって事になった。


 ミランダに薬を盛られて、モコがちょっとずつ解毒してくれてるからだいぶ良くなったけど、まだ本調子には遠いみたいだもんね。


 お守りを入れる袋はどうしよう。お兄様とお揃いにする?


 どうしようかとうんうん悩んでいたら、ドロシーが綺麗な紫色の布を持ってきてくれた。

 肖像画で見たお母様の目の色にそっくりだ。


「お父様も喜んでくれるかなぁ」

「それはもう大喜びすると思いますよ」


 ドロシーの言葉に同調するように、モコはぴょこんぴょこんと跳ねている。

 基本的に、モコは普段はあんまり喋らない。でもその仕草で喜怒哀楽がすぐに分かって可愛い。


 私はお守りを仕上げると、ちょうど出かける所だったお兄様とお父様に渡した。


 お父様は私からの初めてのプレゼントだという事で、涙を流して喜んでいた。

 こんなに喜んでもらえるなら、あげた甲斐があるなぁ。


 もちろんお兄様も喜んでくださった。


 アイスブルーの目を細めて私の頭をなでてくれるお兄様……。


 うっとり。

 もっとです。もっとなでてください。


 至高のひと時です。ありがとうございます。


 そうして私はお兄様のなでなでタイムを満喫した後、名残惜しいながらも、領地に視察に行くというお兄様たちを見送ったのである。









 でも、それから数時間後。

 私は、お父様とお兄様の乗っている馬車が、賊に襲撃されたという知らせを受けた。



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