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第19話 ラスボスお兄様は、それはそれで格好いいかも?

 私が倒れてから数日が経った。


 結局、私とお父様に薬を盛っていた料理長は、どこかに姿をくらませてしまっていた。


 私のホットミルクに入っていたのは、魔力の少ない貴族がよく飲む、魔力を増幅させる成分のある砂糖のようなものだった。


 私にとっては毒になりうるそんなものが厨房にあるはずがないのだから、明らかに故意だ。


 でもそれは普通に売っているものだったから、ミスだと言い張られればそれまでだ。

 姿を消した料理人を探して罪に問うという事まではできず、捜索を断念した。


 ミランダの部屋からは確かにその魔力増幅剤が見つかった。


 でも一応貴族であるミランダが自分で使うためのものだと言い張られてしまえば、それ以上の追及はできない。


 料理人とミランダが私を殺す計画を話しているのを見たのは私だけだし、ちゃんとした証拠にはならないという事で、ミランダもまた厳重注意だけで無罪放免となってしまった。


 お兄様は証拠があろうとなかろうと関係なくクビにしたかったみたいだけど、ミランダが王妃様に相談しますとか言い出したんでそれ以上強く言えなくなってしまった。


 お父様は、魅了まではいかないまでも長年に渡って薬を盛られていたせいで、ミランダに関しては正常な判断ができないみたい。


 クビにするほどではない、なんてのほほんと言うお父様に向ける、お兄様の冷たい視線ときたら……!


 さすがラスボスお兄様、なんて感心しちゃったわ。


「確か、小説でお兄様が笑顔を見せなくなったのは私が死んでしまったのが最大の原因だけど、それだけじゃなかったはず」


『お主の言っていたこの世界の物語か?』

「うん」


『不思議なものだな。知らぬ世界で我らが物語になっているというのは』


 一応、聖剣にはいかにお兄様が素晴らしいかの話をするついでに、私には前世があって、そこでこの世界の物語を読んだと説明している。


 魔王が復活するという話をしたら、聖剣は驚かずに「そうだろうな」と納得していた。


 最近、大気の中の瘴気が増えているのを感じていたんだそうだ。いずれ大地の女神レカーテが勇者を選定するだろうとも。


 ただ聖剣にとっては会話ができる相手だけが重要なので、大して気にしていなかったらしい。


 聖剣さん、どれだけ会話に飢えてたの……。


『しかし兄が魔王よりも強くなるとは』

「うふふ。お兄様は最高に強くて最高にかっこいいですからね!」


 ただし勇者に倒されちゃうからラスボスにはしないけど!


 と、そこでふと思いつく。

 聖剣を持たない勇者が、果たしてラスボスお兄様に勝てるのかしら、って。


 だって勇者の能力を底上げしてるのは、明らかに聖剣だった。


 学園で剣術の稽古をしていたけど、すぐにマスターしたのは聖剣のおかげ。


 つまり、勇者より先に私が聖剣と契約しちゃえば、たとえお兄様がラスボスになったとしても、勇者に倒されることはない!?


 魔王はこの世界をすべて瘴気で覆ってしまって生きる者のいない世界を創ろうとするけど、お兄様が世界を破壊するとは思えない。


 という事は、勇者に聖剣を渡さなければ、お兄様は死なない。


 そっか。

 今までラスボスにならないようにとがんばってたけど、ラスボスになっても勇者に殺されなければいいのよね。


 ラスボスになってダークサイドに堕ちたお兄様……。

 それはそれでカッコよくて素敵……。


『待て待て、それでは本末転倒だぞ。お主の望みは兄を悲しませる事ではあるまい』


 はっ。そうだった。

 私までダークサイドに堕ちるところだった。


 危ない危ない。


 これもお兄様が、どんなお兄様でも素敵すぎるからいけないのよね。


 私の使命はいつもお兄様が穏やかに笑って過ごすこと。


 そうだよね、推しを不幸にするなんて、ファンの風上にもおけない裏切りだよね。

 心の底から反省します!


「聖剣さんの言う通りだわ。お兄様の憂いは全て取って差し上げなくては」


 私は両手で拳を握って決意を固める。


「えーっと、確か小説で信頼してた使用人に裏切られて、それで信用できるのは家族だけってなったのに、私が死んでしまって、お父様はあっさり再婚しちゃって絶望したんだっけ……」


 信頼してた使用人、っていう事だから、それはミランダではない。


 お兄様はローゼンベルク公爵家の後継ぎだから、専属の執事や侍従がいる。そのうちの誰かが裏切るって事だけど……。


 私はお兄様に仕える彼らの顔を思い浮かべる。

 うーん。誰一人怪しい人はいないなぁ。


 そもそも公爵家くらいの家になると、そこに仕える使用人たちはほとんどが、代々仕える家柄の者たちばかりだ。


 というか、うちと全く関係ない人なんて危なくて雇えない。


 それこそ敵対する貴族に命令されて暗殺されるかもしれないわけだし、スパイだっているかもしれない。


 特に公爵家の直系であるお兄様とか私の側に仕える使用人は、厳密な審査を経て雇われてると思うんだけどなぁ。


 さすがにミランダみたいに王妃のごり押しで雇われたって人はいないみたい。それも王妃がミランダを気に入ってるからっていう例外中の例外だし。


 ……王妃様って、趣味悪いよね。


 それはともかく、ちょっと使用人たちを探ってみようかなぁ。


 こいう時って子供は便利よね。

 屋敷の中をうろちょろしてても怪しまれないもの。


 それでは捜査に乗り出しますか!



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