第132話 イアンの忠誠
ひゃー
まちがって101話をアップしていましたので修正しました
メッセージくださった皆様ありがとうございます
132話をアップしましたー!
ワインとは違う、もう散ってしまったはずの金木犀の花の香りが、どこからか漂ってきた。
するとイアンは泣き笑いのような表情を浮かべ、エルヴィンの持つゴブレットを奪い取る。
「イアン?」
何をするんだ、というエルヴィンの声は、途中で消えた。
イアンがエルヴィンから奪ったワインを一気に飲み干したのだ。
一体何が起こったのかと戸惑う私たちの耳に、ランの呟きが聞こえた。
「この匂いは……毒か」
えっ、毒?
もしかして、さっきの金木犀の香りって……。
何が起こったのか分からないうちに、イアンの体が震え始めて、口元が痙攣する。
イアンの体がくの字に折れ曲がり、ゴブレットが手から落ちた。
金属音が鳴り響くと同時に、イアンの口から真っ赤な血がごぼりとあふれる。
手で口を押えるけれど、深紅の血が指の隙間からこぼれ落ちた。
「イアンッ」
お兄様がすぐに駆け寄ってイアンの体を支えた。
エルヴィンは、何が起こったのか理解できていないのか、呆然自失している。
毒って、どうして……。
ランが床に転がったゴブレットを手に取った。そしてその表面に刻まれた幾何学模様を
指でなぞる。
「なるほど。この幾何学模様が注いだ液体を毒に変えるのですね」
なんでそんなものがあるの⁉
そしてなんでそれをイアンが持っていて、自分で飲むの⁉
「それ、は……王家の秘宝……」
イアンの体を支えていたお兄様が、ハッとしてエルヴィンを見る。
エルヴィンは顔を真っ青にして震えていた。
王家の秘宝がどうしてこんなところに……。
っと、そんなとこより。
「マリアちゃん、回復を!」
回復魔法じゃ解毒はできないけど、時間稼ぎにはなる。
「分かった!」
もう足に力が入らないのか、イアンは自分の血だまりの中に倒れている。
その姿が、小説で見たお兄様の最期と重なった。
ドクン、と心臓が嫌な音を立てる。
これはお兄様じゃない。分かってる。
だけどどうしてもお兄様の姿と重なってしまって……だから、絶対に死なせたくない。
「モコ! 回復して!」
「きゅうっ」
すぐにモコがイアンの元へ走り、回復をする。
でもイアンの顔色は良くならない。
モコの解毒でもダメなの?
だったら――。
私はバッグの中から作り置きのお守りを探す。
「あった」
取り出したのは「超解毒」のお守り。作るのが難しくて一個しかないんだけど、今使わないでいつ使うの。
マリアちゃんとモコと私の聖なるパワーで、救えない命なんてない!
私はお守りをイアンに持たせた。
でも握る力がもうないから、落とさないように、上から両手で包む。
「イアン、お前どうして……」
おぼつかない足取りでエルヴィンがイアンの元へ行く。
そしてお守りを持っていないほうの手を取った。
「殿下……すみ、ません……俺には、やっぱり……できない……」
「だからってお前が毒を飲むことはないだろう!」
今にも泣きそうなエルヴィンに、イアンは弱々しく微笑んだ。
「一度、でも……裏切ろう、と思った俺に……生きる資格なんて……」
「ないとか言わないでね。裏切れなかったから自分が死ぬのを選んだんだろうけど、そんなのただの自己満足だから。エルヴィンに忠誠を誓うなら、生き延びて一緒に敵を倒しなさい」
生きるのを諦めようとするイアンに、私は厳しい言葉をかける。
だって、いくら私たちが救おうとがんばっても、イアンが生きたいと思わなければ無理だもん。
そのためには、まずイアンに罪を犯させようとした真犯人を捕まえて、その人にこそ罪があるんだって示さなくちゃ。
更新すっかり遅くなってすみません
このまま最後までUPしますね~




