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第130話 フィオーナ姫がなぜここに

 ついに魔王を倒した。


 小説ではここからお兄様が闇落ちしてラスボスになるんだけど、私もエルヴィンも生きているし、ラスボス化は阻止したって考えていいと思う。


 ここまで長かったけれど、あっという間だったような気もする。


 とにかくお兄様が死ななければそれでいいや。


 魔王を倒したからといって、世界が急に変わるわけじゃない。


 だって小説のように魔王が力を蓄えていたら、倒した時に暗雲となって立ちこめていた瘴気がパーッと晴れる奇跡が起こせただろうけど、発生したての魔王じゃ無理だもの。


 それでも、なんとなく軽くなったような気がする空気を感じながら、元来た道を戻る。


 ネヴィル子爵の屋敷には立ち寄らなかった。

 だって叔父とアマンダを閉じこめてからまだそんなに日にちが経ってないからね。


 もう少し反省してほしいところ。


 屋敷の場所はもう分かっているから、もう少し経ったら折り紙くん一号にお願いして玄関の扉に貼りつけてある「敵は内」のお守りをはがしてもらおうかな。


 いつ頃がいいか、後でお兄様に相談してみようっと。


 人のいない荒廃したネヴィル子爵領を抜けて、ハーピーの巣があった山を下りる。

 その先には、アベルとマリアちゃんが婚約式をした花の村がある。


 私たちは魔王を討伐した報告を兼ねて、村へと向かった。


 すると村の入り口には大きな花のアーチが作られていた。「祝魔王討伐」「歓迎勇者御一行様」なんて垂れ幕がかかっていたら、完璧だったかもしれない。


 村の入り口で馬車から下りると、村人たちが私たちに気がついて、出迎えてくれた。


「おお、勇者様、ご無事で」


 魔王を倒すのは勇者、という認識なので、まずはアベルの無事を喜ぶ。


 それから私たちの誰一人として欠けていないのを確認しながら、期待と不安の混ざった顔で恐る恐る尋ねてくる。


「勇者様、魔王は……」

「皆で協力して無事に倒したよ」


 アベルの言葉に歓声がわいた。

 そして村人たちが喜びもあらわにアベルを中心に取り囲む。


 私も囲まれそうになったけど、お兄様とランの鉄壁のガードで無事だった。

 マリアちゃんはアベルと一緒にもみくちゃにされていた。


 でもそんな風に喜び合えるのが嬉しくて、思わず笑みがもれてしまう。


 そこへ、新たなざわめきが聞こえてきた。

 視線を巡らせると、驚いたことに、ここに居るはずのない人がいた。


「おかえりなさい、皆様。ご無事で何よりです」


 そこにいたのは、村中に飾られた花を背景に、まるで小説のイラストそのもののようなフィオーナ姫だった。


 素朴な村人たちの中で、その姿はとても際立っていた。

 光に照らされて輝く金色の髪はふんわりと風に揺れていて、大きな赤い瞳は宝石のように澄んでいる。


 旅装ではなく、首元に沿って繊細なレースがあしらわれている、きっちりとしたドレスを着ていた。

 ちゃんと手袋まではめている。


 ラフな服装のエルヴィンとは大違いだ。


「お兄様のことが心配で……追いかけてきましたのよ」


 いつもより掠れた声に、風邪でも引いたんだろうかと思う。

 体調が悪いのに無理してやってくるほど、エルヴィンとフィオーナ姫って仲が良かったっけ。


 疑問に思いながらエルヴィンを見ると、その顔は明らかに腹違いの妹姫を歓迎をしていない。


 だよね。だってエルヴィンを暗殺しようとした黒幕は、王妃なんだもの。その娘であるフィオーナ姫を警戒するのは当然だ。


 けれど、強張っていたエルヴィンの顔は、フィオーナ姫の後ろを見て喜びに変わる。

 なんとそこには、エルヴィンの一番の側近で幼馴染のイアンがいたのだ。


「イアン、来てくれたのか!」


 イアンはどこか緊張した様子でエルヴィンに駆け寄る。

 そして全身をくまなくチェックすると、ほっとしたように息を吐いた。


「どこにもお怪我はありませんね」

「心配してくれたのか」


 嬉しそうに聞くエルヴィンに、イアンは眉尻を下げた。ずっとエルヴィンの心配をしていたからか、顔色が悪い。


「当たり前じゃないですか。本当に、ご無事で良かった」


 主従の再会にしんみりしていた私たちだが、ずっとこうしてはいられない。


 このまますぐに王都へ戻ろうかと考えていたけれど、フィオーナ姫とイアンが、村長の家でお祝いを用意してくれているというので、久しぶりのご馳走を満喫することにした。


 王都でも魔王討伐の祝賀会が開かれるだろうけど、そっちは堅苦しいからこの方が嬉しい。


もしも「面白かった」「続きが気になる」などと思って頂けましたら、

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どうぞよろしくお願いします!


いつも誤字報告をしてくださってありがとうございます。

感謝しております(*´꒳`*)

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