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第128話 ついに魔王と対峙

『グランアヴェール お守りの魔導師は最推しラスボスお兄様を救いたい』コミックス3巻

漫画・夏河もか先生

発売しました!

幼少期編クライマックスです。

「ここが……魔王のいる洞窟か」


 洞窟を見上げるエルヴィンが、緊張と覚悟の混ざり合った静かな声で言った。


 洞窟の中から吹き上げてくる冷たく、それでいて腐敗したような不快な臭いの風が、エルヴィンの髪をさらう。

 エルヴィンは鬱陶しそうにその髪を払った。


「瘴気が濃いわ」


 思わずといった風に口に出したマリアちゃんの瞳には、隠しきれない恐怖が浮かんでいる。


 無理もないよね。私も怖いもん。


 でも私の場合は、腕の中のモコが瘴気を浄化してくれているみたいで、それほどの息苦しさはない。


 ありがとうね、モコ。

 心の中で呟くと、モコはどういたしましてというように、短く「キュッ」と鳴いた。


 洞窟の中には一切の光がなく、ただ深い闇が広がっていた。

 時折闇に混じった瘴気がうねる。

 黒い闇がまるで生きている者達を誘いこもうと、手招きしているかのようだった。


「明かりが必要だね」


 洞窟を見据えて、腕を組んだままのお兄様が振り返って私を見る。


 ここは「灯り」のお守りの出番かな。

 そう思って用意しようとしたけれど、ランのほうが早かった。


「では私が」


 いつの間にか収納からランタンを二つ取り出したランが、片方を私に渡してくれる。


 なんかこれ、魔力も火も要らないオーバーテクノロジーのランタンな気がする。聖剣と同じように、迂闊に外に出しちゃいけないやつなんじゃないのこれ?


『深く気にするな』


 ランが心話で言ってくるってことは……やっぱりー!


 ちらっと横目で見ると、お兄様もなんだか複雑そうな顔をしている。きっとこのランタンの性能に、思うところがあるんだろう。


 でも安全には変えられないと思ったのか、ランタンに関して何か言ってくることはなかった。

 安全第一だもんね。


「じゃあ中に入るよ」


 お兄様の号令で私たちは恐る恐る洞窟に足を踏み入れた。


 暗闇に目が慣れてくると、今まで何も見えないと思っていた洞窟の内部が薄っすらと浮かび上がってくる。


 洞窟の中はとても広く、まるで大聖堂のような天井の高い空間が広がっていた。

 岩壁には無数のひびが走り、その隙間からは不気味な赤い光が漏れ出していた。


 その光はまるで洞窟自体が生きているかのように、脈打ちながらゆっくりと明滅している。


「まるで生きているみたい」


 思わず口から出た言葉に、ランが同意する。


「ある意味、瘴気に染まったここは魔王の一部です。今まだ大した力を持ちませんが、瘴気が濃くなると人を襲うようになります」


 えっ、そうなんだ。

 小説のアベルたち、よく魔王を倒せたね。


 洞窟は下へ下へと向かっていく。

 それにつれて瘴気も濃くなっていき、聖剣であるランですら口数が少なくなった。


 やがて私たちの立てる足音すら、闇に飲まれ消えていく。

 ランが出してくれたランタンの光だけが道しるべだ。


 ただ、ランは直接魔王討伐に関わることができない。


 魔王とは、死者の国に溜まりすぎた瘴気を魔王という器におしこめて、増えすぎた人間の総数を減らすための存在だ。


 ランは神様の作った聖剣で、魔王というのは世界の理に属するものだから、バランスが崩れてしまうのだそうだ。


 とはいえ、禁止されているのは人間の姿で魔王を倒すことなので、人間の手にする聖剣としてならば、何度も倒したことがある。


 こうして暗闇を照らすためのカンテラを用意してくれるのは、ぎりぎりセーフなのだ。


 そしてついに私たちは洞窟の最奥へと到達した。

 そこには闇よりもさらに深い、黒い瘴気の塊が渦巻いていた。


 瘴気の中心には、目闇を切り裂くような威圧感を放ち、まるで二つの目のように見える、赤い光が浮かんでいる。


「あれが……魔王」


 女神レカーテによって魔王を倒す運命を定められたアベルが、剣の柄を握る手に力をこめた。


「まだ人型になってないから、今がチャンスよ」


 そう言って私は「結界」と書いたお守りを握りしめる。

 するとうっすらと光る結界が、私たちを包んだ。


「行くぞ!」


 お兄様が叫んで、氷魔法を発動させた。


もしも「面白かった」「続きが気になる」などと思って頂けましたら、

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どうぞよろしくお願いします!


いつも誤字報告をしてくださってありがとうございます。

感謝しております(*´꒳`*)

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