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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第三章 魔王の出現

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第124話 豚さん退治

 ミランダはお父様に横恋慕してたけど、ローゼンベルクの一族なら誰でも良かったってことかな。


 叔父は脂ぎった頬をゆるめて、私たちを見た。


「うむ。いやなに、魔王討伐の旅をねぎらおうと思ってな、ここで待っていたのだよ」

「ネヴィル子爵はどうしたのですか」


 お兄様が尋ねると、叔父はわずかに目を逸らした。

 この態度って、なんかもう、怪しいどころの話じゃないんですけど。


「お前たちが来るのを楽しみにしていたんだが、あいにくと体調を崩してしまって臥せっているところだ」

「この屋敷の中にはいるんだな?」


 念を押すエルヴィンに、叔父はニヤニヤと嫌な笑いを見せる。

 感じ悪~い。


「それはもちろん。本人がいないのに、僕が我が物顔でここに座っているわけがないだろう」


 その言葉に私はお兄様と頷きあった。


(ラン、この屋敷の中にいるのは人間なのね?)


 後ろに控えているランに尋ねると、すぐに返事がきた。


『ドッペルゲンガーの類は紛れこんでおらぬようだ』


 人間に化ける魔物といえばドッペルゲンガーが有名だ。

 姿や声、さらに記憶や性格も完璧に模倣する能力を持っている。この力を使って混乱や不和を引き起こし、信頼を失わせる。


 ナイトメアは悪夢の中に取り込んでその精神を吸収する魔物だったけど、ドッペルゲンガーは人間同士の信頼を失わせることによって孤立化させ、絶望した精神を吸収する。


 どちらも人間の魂を糧とする魔物で、武器での攻撃が効かない厄介な魔物だ。


(分かった。ありがとうラン)


 もし魔物が入りこんでいたら、人間の方も探さなくちゃいけないから大変だった。


 だけどここにいるのが人間だけなら、簡単だ。

 私たちで制圧して、魔王討伐までここで大人しくしていてもらおう。


 私はお兄様に目で合図をした。

 お兄様はエルヴィン、アベルと一緒に叔父を制圧にかかる。


「なっ、なにをする!」


 お兄様に足元を凍らせられた叔父は、慌てて立ち上がろうとする。


 でもただでさえ体重が重くて立てなかったなのに、足元が凍ってたら身動きもできなくなるのは当然。

 ただその場でジタバタするだけだった。


 アベルはそんな叔父の首に剣をつきつける。

 叔父はヒュッと喉を鳴らせた。


 エルヴィンはミランダを後ろ手に拘束していた。


 楽勝だね!


 と思っていたら、叔父がぶるぶると体を震わせ始める。


「アベル離れろ、様子がおかしい」


 お兄様の警告に、アベルが飛び退る。

 すると叔父の体から黒い触手のようなものが飛び出してきた。


「ひぎぃっ」


 叔父が豚の鳴き声のような悲鳴を上げる。


「なんだこれは」


 うねうねと蠢く触手は私とマリアちゃんの方へと向かってくる。

 ぎゃー、気持ち悪い。


「折り紙くん、切り裂いて!」


 ボケットから折り紙くん一号を取り出して飛ばす。赤い折り紙くんは羽を使って黒い触手を切断していく。


 触手が切り落とされる度に、痛みを感じるのか叔父が絶叫する。


 そのうちに黒い触手が現れなくなると、叔父は口から泡を吹いて背もたれに頭を乗せて動かなくなった。


 うわ、死んじゃったのかな。

 と思ったけど、よく見るとピクピクと痙攣している。


 一応腐れ外道とは言え血がつながっているので、死ななくてよかったってホッとする。


「魔物に乗っ取られていたのか」


 用心しながら叔父の様子を見ていたお兄様が、もう動かないのを見て少しだけ肩の力を抜いた。


「こんな魔物聞いたことないぞ」


 とっさにマリアちゃんを庇ったアベルは、まだ警戒を解かない。


「これで倒したのか。それとも……」


 倒せていたのならいいけど、そうじゃなかったら叔父を殺さなくてはいけなくなる。

 魔物の種類が分からない以上、判断ができなかった。


「これはほかの生き物に寄生する種類の魔物ですね」


 ランの説明にアベルが続きを促す。


「どうすれば倒せるんだ」

「寄生型なので、エネルギーがなくなれば自然と消滅します」


「えっ。エネルギーがなくなるってことは殺さないと駄目なのか?」

「いえ、そうではありません。この場合のエネルギーはおそらく」


 ランが説明している間に、叔父の体がシュルシュルと萎んでいく。

 もしかして魔物が必要とするエネルギーって、脂肪?


 まさかそんなと思うけど、仰向けに気絶している姿は、豚さんから人間になっていた。

 ただ太っていたのに急激に痩せたからか、老人のように皺だらけだ、


 でもよく見ると、兄弟だからかお父様の面影があると言えばある。

 弟というよりも、お父様の親に近い外見になっているけど。


「へえ、こうしてみると顔だけは似ているんだね。中身は……大分違うけれど」


 じっくりと叔父の顔を見たお兄様の言葉に、私も頷く。

 お父様はへたれだけど、外道じゃないから。


 同じ兄弟だっていうのに、どうしてこんなに性格が違うのか本当に不思議。


「これでもう魔物は消滅したってことでいいのか?」

「いえ、まだです」


 アベルの質問に、ランは否定で返した。


 少し緩んでいた空気が、すぐに張り詰める。


もしも「面白かった」「続きが気になる」などと思って頂けましたら、

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どうぞよろしくお願いします!


いつも誤字報告をしてくださってありがとうございます。

感謝しております(*´꒳`*)

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