第122話 思いがけない再会
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警戒態勢を取る私たちに、宿屋の外から声がかかった。
「領軍、突撃せよ!」
は?
領軍?
意味が分からないと思っているのは私だけじゃなく、あのお兄様までもが何が起こったのか把握できてないみたいで対応が遅れた。
「勇者様、今助けに参りますぞ!」
ドタドタと階段を上る音がすると、顎髭を生やした兵士が部屋の様子を見て急に立ち止まった。
助けにきたって言われても、もう倒しちゃってるけど。
後のことは、この人に全部丸投げしていいのかなぁ。
と、思っていたら、その後ろから、まさかこんなところで会うとは思っていなかった人が現れた。
「まああ、お二人とも、ご無事で良かったですわぁ」
少しやつれていて、記憶にあった姿より年を取ってはいるものの、その顔は良く知っているもので――。
私は思わずお兄様と目を見交わした。
「皆様が狙われていると聞いて、私、急いで駆けつけましたのよ。ここは危険です。ちょうどお二人の叔父様もネヴィル子爵の家に滞在しているので、安全な場所でお休みするとよろしいですわ」
親切そうな声だけど、絶対に裏がある。
だって彼女は。
「よく僕たちの前に顔を出せたな、ミランダ」
お兄様と私を殺そうとした、ミランダ・ヘルなんだもの。
明らかに罠だと分かっていたけれど、私たちはあえてその思惑に乗ることにした。
私が見たこともない叔父が、ネヴィル子爵の屋敷にいるというのも大きい。
ネヴィル子爵、ミランダ、叔父、私たちの敵になりうる三人が揃っているのだから、できれば一網打尽にしたい。
だって魔王と戦っている時に後ろから襲われたら大変だもの。
魔王との戦いの前に、ほんのわずかな危険でも排除しておきたい。
「本当に叔父様がここにいるのかしら」
今まで乗ってきた馬車で、ネヴィル子爵の領軍とミランダの後をついていく。
通り過ぎる村にはやはりひと気がなく、異様な雰囲気だ。
「あいつに様なんてつけなくていいよ。腐れ外道で十分だ」
いつになく過激なお兄様の発言に、アベルとマリアちゃんが驚いていた。
仕方なく、ローゼンベルク家における叔父の立ち位置を二人に説明することになった。
元々女性関係がだらしなかったのに加えて、結婚したばかりのお母様に迫ったことで愛妻家のお父様の怒りを買って放逐されたことを話すと、アベルとマリアちゃんはかなり引いていた。
「本当にセリオス先輩と血がつながってるのか?」
「残念なことにね」
私は一度も会ったことがないんだけど、お兄様はあるらしくて、めちゃくちゃ毛嫌いしている。
兄弟なのでお父様にちょっぴり似ているのも腹が立つそうだ。
というか、お父様に似ているっていうことは、お兄様にも似ているのよね。
そう考えると、そんなクズがお兄様に似ているっていうのは、ちょっと許せない気がする。
……お守りで、顔を変える効果とかないかな……。
「俺は一度だけ会ったことがある」
へ~。エルヴィン、会ったことがあるんだ。
「エル様、どこで会ったんですか?」
「婿入りした伯爵家の代替わりの時だ。あそこは一人娘が爵位を継いでいて、継承の時には必ず夫婦で登城するから、その時に見かけた。セリオスが言うほど似てないぞ?」
この国では、後継の男子がいない場合のみ、女子が爵位を継げる。
そして爵位は国王が与えるものなので、継承の時には必ず国王に認めてもらわないといけないのだ。
だからその時に、エルヴィンは腐れ外道叔父を見たことがあるんだろう。
「たとえ似ていたとしても、お兄様はこの世界で唯一無二なので関係ないですね」
結局はその結論になる。
うんうん、と一人で頷いていたら、ガタンと馬車が止まった。
どうやらネヴィル子爵邸に着いたようだ。
御者をしてくれていたランがドアを開けてくれたので、手を借りて下りる。
子爵の屋敷でありながら、なかなか立派な建物が立っていた。
階段を上って正面玄関をくぐる時に後ろを見ると、両脇の花壇の花はすべてしおれていた。
瘴気のせいなのか、それとも人手が足りずにこの状態なのかは分からない。
でも貴族の家で、顔になる正面玄関の手入れを怠るなんて絶対にありえない。
屋敷の中でなにかが起こっているのは確実だ。
そこで私たちは分断されないように、二人組で手をつなぐことにした。
お兄様と私、アベルとマリアちゃん、ランとエルヴィンはさすがに嫌がったので、すぐ手をつかめる距離で最後尾を歩いてもらっている。
「ようこそ、ネヴィル子爵邸へ」
扉を開けたミランダが振り返って私たちを迎える。微笑んではいるけど、目が笑っていない。
私はミランダに見つからないようにそっとお守りを玄関に落とした。
よし。これで仕込みはオッケー。
後は屋敷の中にいる人たちを確認するだけ。
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