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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第三章 魔王の出現

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第118話 ナイトメアの本体を探せ

小説3巻が11月19日に発売です!

よろしくお願いします!

『そのように悩まずとも、ナイトメアを倒せばよいではないか』

「それができればこんなに悩まな――って、えっ、倒せるの?」


 もう既にナイトメアに取りこまれちゃってるから、小説みたいに聖剣で切り裂かないとダメなんだと思ってた。

 でも他に倒す方法があるなら、お兄様を救うためにもやってみるしかない。


「ラン、どうすればいいのか教えて」

『そなたは我の剣を持っておるだろう』

「剣? そんなの……って、あ、針のことね」


 お守りを作るために使っている針は、聖剣の分身のようなものだ。

 それを使えばナイトメアを倒せるの?


 聖剣の力を宿しているとはいえ針だけど、大丈夫なのかな。


『そなたは我の契約者だ。小さな針一本とて、我が望めばナイトメアを滅ぼす力を与えるくらい訳もない』


 そっか。

 私は聖剣の契約者だから、ちっぽけな針一本でも十分に威力を発揮できるってことか。


 それならなんとかなるかも。


「さすが聖剣」

『当然であろう』


 心から賛辞を贈ると、ランは自慢げな声を出す。

 よし、と気合を入れてポーチから針を取り出す。


 これでナイトメアを突き刺せばいいわけだけど、適当にその辺の壁を刺せばいいのかな。


『核を探せ。モコならば見つけられるだろう』


 やっぱりその辺を刺すだけじゃダメだったか。


「モコ、ナイトメアの核がどこにあるか教えて」


 私が頼むと、モコは元気よく「きゅうっ」と鳴いた。


 一応、心話で話をすることもできるんだけど、かなり疲れるらしいから、基本的にモコの返事は鳴き声になる。

 それでもちゃんと意思の疎通ができてるから問題はない。


 モコがしっぽをふりふりしながら歩く。

 いつ見ても可愛いなぁ。


「お兄様、ちょっと行ってきますね。すぐ戻ってきますから」


 私はずっと握っていたお兄様の手を離す。

 なんだか前よりも眉間の皺が深くなっちゃった。早くナイトメアを倒さなくっちゃ。


 屋敷の中はお兄様が綺麗にしたあの部屋以外は埃だらけだった。

 それほど広くない屋敷の中の中を、埃まみれになりながら進む。


「モコが灰色になっていく……」


 あまりにも埃が多いから、モコの真っ白で艶々の毛が灰色になっていく。


 廃屋にありがちな蜘蛛の巣は見当たらない。

 ここはナイトメアの中らしいから、生き物がいないのも当然か。


 でも埃まで再現しなくていいのに。

 これだけは幻影でいいんだけどなぁ。


 モコは屋敷の入り口まで行った。玄関のホールには来た時になかった像がある。


「えぇ……。こんなに分かりやすいの?」


 像はブロンズ製の黒い馬だった。

 ナイトメアのミニチュア像である。


「こう、生き物が全然いないはずなのに唯一蜘蛛の巣が張っていて、そこにいる蜘蛛が核とか、もっとひねりが欲しいんだけど」


 謎解きに来たわけじゃないにしても、もうちょっと頭を使う仕掛けがあってもいいのに。


「これの核って……どう見ても目だよね」


 黒い馬の赤く輝く目は、これだけ特別ですよって自己主張するように目立っている。


 ねえ、ナイトメアっておバカなの?

 なんでこんなに分かりやすくするの?


『そう言うな。核だと分かっていても壊せない絶望もまた、やつの好物なのだ』


 そういえば、普通の武器じゃ壊せないんだっけ。

 呆れながらも、聖剣の針でプスッと突き刺す。


 すると赤い目に亀裂が入った。

 亀裂はどんどん広がっていき、やがては馬の像から屋敷全体に広がっていった。


「えっ、これまずくない?」


 大きな亀裂がいくつも壁を走り、天井まで届く。


「もしかしてナイトメアを倒すと崩壊する?」


 そういえば小説でもそんな描写があったのを今思い出した!

 ミシリ、と家がきしむ音がした。


「お兄様たちを起こさなくちゃ!」


 私は慌てて部屋へ戻る。

 すると悪夢から目が覚めたお兄様が、すぐに私を見つけてくれた。


 エルヴィンやアベルたちはまだ目覚めていない。


「レティ、これは一体――」

「説明は後ですお兄様。急いで逃げないと」


 とは言っても玄関から崩壊しているわけだから、残るは窓から脱出しかない。

 アベルとマリアちゃんも連れてとなると、これしかない。


「モコ、大きくなって!」

「きゅうっ」


 子犬サイズからぐんぐん大きくなったモコは、大きなフェンリルになった。


「お兄様はエルヴィンとアベルを抱えて。私はマリアちゃんを抱えるから一緒にモコの背中に乗せてもらいましょう。モコ、あの窓から脱出よ!」

『分かったー!』


 珍しく返事をしたモコは、お腹をペタリと床につけて背中に乗りやすいようにしてくれた。

 お兄様がマリアちゃんを抱えた私ごと背中に乗せてくれて、それからアベルとエルヴィンを抱えて私の後ろに乗る。


「モコ、GO!」


 モコは背中を揺らさないように立ち上がると、助走もつけずに窓に向かってジャンプする。


「氷の息吹」


 モコに当たって窓ガラスが割れる直前に、お兄様が氷魔法で氷雪の渦を作って、ガラスの破片が私たちに当たらないようにしてくれる。


 こんな危機一髪の状況でも気配りを忘れないお兄様って、なんて素敵なのかしら。

 やっぱり最推しお兄様は世界一カッコイイ。


「レティシアお嬢様!」

「ラン!」


 外で待機していたランが、脱出してきた私たちを迎えてくれる。


 その後ろには、朝焼けに染まった村が見える。

 あれから一昼夜経ったってことかな。


 つまり私たちは、一晩中、悪夢を見ていたってことになる。


 私はランにマリアちゃんを任せると、モコの背から下りた。


「モコ、ありがとう」


 屋敷の中で埃まみれになっていたモコは、埃も幻影だったのか、元の白さを取り戻していた。

 だから思いっきり、そのもふもふした首に抱きつく。


「きゅう」


 抱き着いたモコの体がどんどん小さくなって、いつもの中型犬サイズに戻る。


「きゅっ」


 私の腕の中におさまったモコは、やっぱりこれがいいとばかりに、私に頭をすりつけた。

 もー、モコったら、可愛くてカッコよくて、最高のフェンリルなんだから。


 その直後、背後で屋敷が崩れる大きな音が聞こえた。

 振り返ると、屋敷の残骸は黒い瘴気になって、すうっと地面に吸い込まれていく。


「消えた……?」

「瘴気は冥界へ戻ったのでしょう」


 ランの言葉に、消えたわけじゃないんだと思う。


「だったらまた現れる可能性があるってこと?」

「ナイトメアは瘴気から生まれる魔物なので、形が作られるほど瘴気が濃くなればまた現れるでしょうけれど、その前に魔王を倒せば良い話です」


 なるほどね。

 魔王も瘴気の塊だから、ナイトメアって同じような発生の仕方をするんだ。


「ええ。ですから、魔王のいる近くに発生していることが多いですよ」


 ランの言葉にお兄様と顔を見合わせる。


「つまり、魔王に近づいているってこと?」

「ええ。ここからならはっきり分かります。魔王はあの山にいます」


 ランの指さす方向は、奇しくもネヴィル子爵領の方向だった。


もしも「面白かった」「続きが気になる」などと思って頂けましたら、

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どうぞよろしくお願いします!


いつも誤字報告をしてくださってありがとうございます。

感謝しております(*´꒳`*)

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