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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第三章 魔王の出現

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第106話 ネヴィル子爵領へ

 あ、だけど。


 アベルが魔力の暴発を起こしたのって、幼馴染が魔物に切りつけられたからだよね。

 それで幼馴染は無事だったけど、アベルの周りの木が全部なくなってしまった。


 もしその幼馴染がマリアちゃんだとしたら……。


 そんな風に魔力を暴発させたアベルが怖くなって、遠ざけてしまったなんていうことはない?

 そのせいで、マリアちゃんじゃなくてフィオーナ姫がアベルに愛されて、聖女になったとか。


 いやでも、マリアちゃんから遠ざけられたからって、アベルが諦めるとも思えないんだけどなぁ。


 アベルって、そこはかとなく、ヤンデレの気配がするもん。

 だってこの間、魔王を倒すのは、マリアちゃんが平穏無事に暮らすためって、言い切ってたし。


「それではここに、若き二人の婚約を認めます」


 神父様の声に、私は思考を中断させた。


 いけない、いけない。

 小説のことなんてもうどうでもいいじゃない。


 大切なのは、今なんだから。


「おめでとう、マリアちゃん!」

「おめでとうアベル」


 私とお兄様が声をかけると、二人とも幸せそうに笑った。

 そうだよ。今が幸せならいいよね。





 婚約式の後、すぐに私たちは村を後にした。


 村でゆっくりしたかったけど、魔王は発生から時間が経つにつれ強くなる。のんびりしている暇はない。


 婚約の証書はマリアちゃんとアベルが署名して、神父様の署名と、証人としてエルヴィンとお兄様が名前を書いた。


 証書というか、本に名前を書くんだよね。

 各教会に必ず一冊ある神具で、そこに名前を書くと、大聖堂にある本に同じ内容が転写される。


 どういう仕組みになっているのか謎だけど、どこで婚約や結婚をしても大聖堂にすべて記録されるってことみたい。


 だからいわゆる重婚とかはできない仕組みになっている。


 これでアベルとマリアちゃんが、無理矢理誰かと結婚させられることはなくなったから安心だね。


 ちなみに神父様はエルヴィンの名前を見てびっくりして、穴が開きそうなくらい見つめてた。


 お兄様が小さく「魔王討伐の旅なので、あまり大々的に知らせていないのです」って言うと納得していたけど。

 小綺麗な旅人たちが観光ついでに婚約式をしたと思っていたら、勇者一行だったんだもん、そりゃあ神父様も驚くよね。


 神父様は村で歓迎パーティーをしましょうって言ってくれたんだけど、先を急ぐからってお兄様が辞退した。


 婚約したばかりでラブラブなアベルとマリアちゃんには悪いけど、魔王は時間と共に強くなっていくから、なるべく先を急ぎたい。


 少し残念そうだったけど、アベルもマリアちゃんもお兄様に従った。


 私たちは再び馬車に乗って先を急いだ。

 しばらく進むと、道がガタガタして、お尻が痛くなってきた。


 やっぱり王都から離れているから、こんなに道が悪いんだろうか。

 でも、アベルの村も遠かったけど、道はそれなりに整備されていて、こんなにガタガタじゃなかったけどなぁ。


 窓の外を見てみると、なんだか木の数も減ってきている。

 今までは道の両側に緑が見えていたんだけど、なんだか森とか林が少ない気がする。


 前方には灰色の岩山があって、荒涼とした雰囲気を漂わせている。

 思わず後方の緑豊かな大地との落差を見比べてしまった。


「この先はネヴィル子爵家の領地になる」


 ネヴィル子爵家は王妃の侍女の実家で、以前エルヴィンを襲ったかもしれない家だ。


 本当なら避けて進みたかったんだけど、ネヴィル子爵領は王都からランが察知した魔王の発生場所の一直線上にあるんだよね。


 下手に迂回して発生場所が分からなくなるよりも、突っ切ったほうが良いっていう判断になったのだ。


 それにしても、こんなに岩がゴロゴロしている領地だとは思わなかった。


「この辺りにはかつて希少な宝石が採れる鉱山があったんだけど、今はすっかり掘りつくしてしまっていて閉山しているんだよ」


 私の視線に気づいたお兄様がこの土地の説明をしてくれる。


「以前は伯爵家だったんだけどね。閉山してから爵位を落として、今は子爵家になっているんだ」


 ああ、なんで王妃の侍女に子爵家の人がいるんだろうって疑問だったけど、昔は伯爵家だったからなんだ。


 侍女って身分の高い人の身の回りのお世話をするから、王妃の侍女だと、普通は伯爵家以上じゃないと採用されない。


 子爵家とかだと女官だね。王宮全般の仕事をする人。

 平民もいるけど、王族の前に姿を見せられない下働きにしかなれない。


「最近は傭兵業をやって稼いでいるらしい」


 エルヴィンがじっと前を睨むようにして言った。

 そしてアベルとお兄様を交互に見る。


「この先で、襲われることがあるかもしれない」

「魔物……って、意味じゃないんだろうな」


 アベルが手に持った勇者の剣を握りしめる。


「魔物も襲ってくるだろうけど、それ以外も気をつけてくれ」


 それは人間が――というより確実にネヴィル子爵家の傭兵たちが襲ってくることを示唆している。


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