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【書籍化・コミカライズ連載中】グランアヴェール~お守りの魔導師はラスボスお兄様を救いたい~  作者: 彩戸ゆめ
第三章 魔王の出現

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第100話 トロールとの戦い

「トロールだ!」


 その姿を認めたエルヴィンが叫ぶ。


 トロールは身の丈が三メートルを超える巨人で、全身が岩のような硬い皮膚に覆われている魔物だ。肌の色は灰色がかっていて、ところどころ苔や泥が付着している。


 大きな黄色い目はぎらついていて、その目の下には深いしわが刻まれている。


 鼻は大きく潰れ、口元には鋭い牙がむき出しになっていて、口を開けて吠えるたびに、悪臭を放つ唾液が飛び散る。


 うわぁ。めっちゃキモい。


 確かトロールって凄く強いんじゃないっけ。


 長い両手の先の爪は鋼のように鋭くて、何でも切り裂く力を持っているようだった。


 トロールの足元には大地を踏みしめるたびに深い足跡が刻まれ、地面が揺れる。


 動きは遅いけど、あの腕で攻撃されたらひとたまりもなさそう。

 攻撃を受けないようにして倒さなくちゃいけない。


「トロールには魔法が効きづらい。ラン、レティとマリアを守れ! エルヴィンとアベルは剣でトロールの足を狙え」


 トロールは低く唸り声を上げながら、ゆっくりと私たちに近づいてくる。

 それを見たお兄様が指示を飛ばす。


「アベルは右から回りこんで右足を狙え。エルヴィン、最初は風魔法で援護を。レティ、足止めのお守りを飛ばして。マリアは怪我をしないように注意して! ランは僕と一緒に腕の攻撃を防御だ」


「分かった!」

「任せろ」

「了解です!」

「はい!」

「承知した」


 ほぼ同時に返事をして、トロールと対峙する。

 私はあらかじめ作っていた『足止』お守りを取り出す。


 角ウサギで実験した時はちゃんと足止めができたけど、トロール相手でも効きますように!


 思いっきり投げると、ペタッとトロールに貼りついた。


 このお守りは二重構造にしていて、表を『足止』裏を『貼』にして縫い合わせてあるのだ。


 ゆっくりと、トロールの足が止まる。


「ぐわおぉぉ」


 動けないことに怒ったトロールが腕を振り回す。

 その風圧だけで倒れそうになるけど、ランが前に立って庇ってくれる。


「ありがとう、ラン」

「どういたしまして」


 黒髪に執事服のランはめちゃくちゃカッコイイ。


 中身が聖剣おじいちゃんだって分かってても、こうして守られるとキュンキュンしちゃうね。


 腕の攻撃をお兄様とエルヴィンが引き付けている間に、アベルがトロールの右後ろに回りこんできた。


 アベルの持つ勇者の剣が、トロールの皮膚を切り裂き、血が飛び散る。


 でもトロールはその痛みに怯むことなく、さらに激しく腕を振り回してアベルを追い払おうとする。


 トロールが右足とアベルに気を取られている隙に、エルヴィンが左足に切りつける。


 お兄様はトロールの腕を凍らせて動きを止めようとしていた。


「折り紙君一号もトロールの足を攻撃!」


 私は千羽鶴をポケットから取り出す。紙に「式神」と書いて折った鶴は、本物の式神のように自在に動く。


 なんとなく個性まである、私の強い味方だ。


 折り紙君一号はリーダー気質で一番攻撃力が強い。

 カッターのような羽が、トロールの足を切り裂いた。


 そして目にもとまらぬ早さでトロールの足元を飛び回り、トロールの意識を釘づけにしている。


 それでもトロールの体は固くて、なかなか致命傷を与えられない。


「先に腕を落とす」


 そう言ってお兄様が、鋭い氷の矢をいくつも作ってトロールにぶつける。


「凍てつけ」


 ああああああ。

 こんな場合じゃないのにカッコイイ~!


 白銀の髪が風になびいて、アイスブルーの瞳が鋭さを増してトロールを睨む。


 この世の美の結晶とでもいうべきお兄様の美貌に、全世界がひれ伏してしまいそう。


「グオアァァ」


 氷の矢がトロールの足元に刺さり、そこからどんどん凍りついていった。


 トロールが大きく右腕を振りかぶる。


「トロールの右腕に、折り紙君カッター!」


 私は折り紙君に命令をして、右腕を狙わせる。

 アベルとエルヴィンが同時に同じ場所を狙った。


 いける!


 トロールの右腕が根元から切り落とされていく。

 次は左腕!


「左腕に折り紙君カッター!」


 びゅんと飛んでいく折り紙君一号が、鋭い羽でトロールの左腕を狙う。

 するとアベルが大きく跳んだ。


「うおおおおおおおぉぉ!」


 勇者の剣を振りかぶって、トロールの左腕を一刀両断にする。

 折り紙君一号は、紙一重でその攻撃に巻き込まれるのを避けた。


 あっぶな。

 もうちょっとで折り紙君まで切られるところだった。


 攻撃の要である腕を落としたトロールは、すでに脅威ではない。


「エルヴィン止めを!」


 お兄様の号令で、エルヴィンの大剣がトロールの首を刎ねる。


「やった!」


 嬉しそうなエルヴィンの声と同時に、どうと、トロールの首が地面に落ちる音がした。


 やがてゆっくりと足元の氷が溶け、トロールの岩のように巨大な体がドォーンと地響きを立てて、倒れていった。


 ふぅ。倒したね。


 攻撃を受けたら即死っていうくらい強そうだったけど、やっぱりこのパーティーって規格外だわ。


 こんなに大きなトロールをあっさり倒しちゃった。


「トロールをこんなにあっさり……」


 アベルがなかば呆然としながら呟く。


 もしアベルたちの住んでいた村にこんなに大きなトロールが現れたら、大騒動だもんね。


 小さな村の一つくらいは軽く全滅してしまう。


「凄い……」


 マリアちゃんも、驚きのあまり目を丸くしていた。


 いや、でもこれさ、ランとモコがほぼ参戦してない状態だし、私も指輪の魔力を使ってないから、全力じゃないのよね。


 全力で戦ったら、発生したての魔王くらいはすぐ倒せちゃうんじゃない?


『おそらくそうなるだろう』


 ランが心話で伝えてくる。


 だよねぇ。


 そう思いながら、私はトロールとの戦いによってグチャグチャにされたテントを見る。


(こっちの片づけのほうが大変そう)


『違いない』


 ため息をこぼすと、ランが唇の端で笑うのが見えた。


もしも「面白かった」「続きが気になる」などと思って頂けましたら、

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どうぞよろしくお願いします!

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