華麗なる女子会?②
サクヤに呼び掛けられ、ヒビキ達とは別の席で俯せになる灰色の髪の美少女が、気怠そうに顔を上げて返事をする。
「なに…? 俺…いま…とっても眠いから……手短にして欲しいんだけど……」
「ごめんねぇ〜♪ あのね、僕と一緒にやってほしい依頼があるんだけど、お願い出来るかな?」
「べつに良いよぉ〜…。用件は…それだけ……? じゃあ…俺……寝るから…」
そう言って再び俯せになる、外ハネショートでクール系の美少女──『ツカサ』。
彼女はこの世界には不釣り合いな格好をしていて、上は丸みの帯びた可愛らしい平仮名で『つかさ』と胸に書かれた白の体操着で、下はもはや化石と言っても過言ではない、臙脂色のブルマを履いていた。
少々怪しからん胸の膨らみと、太もものラインがとってもエロティック──ゲフンゲフン!
犯罪臭が──ゴホンゴホンッ!! 大変失礼…。
兎に角、凄い格好をしていた。
そんなツカサを囲うように三人の美少女と、我関せずとばかりに独り距離をとり、大好物であるこのお店特製月見バーガーに齧り付いてる美少女が同じ席に着いていた。
ツカサの格好も凄いが、そのツカサを囲っている三人娘もすごい。
一人は紺色の長い髪を分けて、お団子を二つ作って可愛らしい。服装は髪よりちょと濃い濃紺色に、黄金の龍が刺繍されたチャイナドレス。
「これ、殆ど見えてるんじゃね…?」って思わせるぐらいのスリットが入っていて、イケナイ気分にさせる…。
もう一人はとても目立つレモン色の髪を編み込んで、某ポン・◯・リングよろしくばりに輪っかを作った髪型。
一般的には大きめの分類に入る胸を溢れ出させて、黄色のバニー姿がなんとも言い難い…。
最後の一人は、こちらもやたら目立つオレンジ色の髪をツーテールにして、絶対領域が魅力的な白とオレンジが上手く調和がとれたメイド服。
三人とも奇抜な格好ではあるが、それが正装であるかのように大変良く似合っていた。
端から見たら仮装パーティーのコスプレ?(と言うより『ソッチ系のお店』の衣装)って感じは否めないが、それはヒビキ達にも言える事なので、ここは黙ってスルーしてほしい…。
ヒビキ達を『なかよし組』と呼ぶなら、こちらは『おねえさん組』と呼ぶのだろうか。実際見た目だけならこの席にいる全員、ヒビキ達より若干年上に見える。
そんな中の三人が各自、この店で己が好物をツカサに食べさようと匙を片手に奮闘していた。
「ツカサ! この超激辛麻婆豆腐食べるネ! きっとツカサも気にいるネ!」
「アカンアカン! ツカやんはワイお手製トッピングたこ焼きを食べるピョン!」
「何言ってんだyo! 御主人様はmeの萌え萌えオムライスを食べるんだyo!」
あの手この手でどうにかツカサに食べてもらおうと(正確には構ってもらおうと)必死だ。
その三人に声を掛ける赤髪の美少女。
「おい、そこの語尾がおかしい三馬鹿!」
「「「誰が三馬鹿だッ!!!!」」」
「分かってんじゃねぇーか。てゆーか、普通に喋れよ。あと、あんまりツカサに構うな」
同時にハモる三馬鹿……もとい、三人の美少女──『テンカ』『アユム』『ミクル』。
「俺達だって普通に喋りたいんだけどよぉ〜…」
「しゃーないやん! 意識しないとこんな喋り方になるんやから…」
「てゆーか、僕たち年上だぞっ! そっちも敬語使ってよ!!」
ギャーギャー騒ぐ三人。女三人寄れば何とやらだが、そんなの事など気にもせず寝息を立てる灰髪美少女。
(ツカサ…。耳元であんなに煩くしてるのに、良く寝れるなぁ…)
と感心しながらも、少し鼻で笑って三人に言い返す。
「ふ~ん…。【設定持ち】はいろいろ大変だな! 敬語使えって……いやいや。トールすら呼び捨てにしてるのに、おめぇーらを『さん付け』とかねぇーから。おめぇーらだって、トールやフクじぃを呼び捨てにしてんじゃねぇーか! それに───俺はまだおめぇーらがヒビキに仕出かした事忘れてねぇーからなっ!!」
そう言って鋭い眼光で睨むカナメ。美少女が睨む姿はとても恐いが、どこか品があった。
言い淀む三人。だが、負けじと反論する。
「そっ、それはそうだけどよぉ〜……」
「流石にそろそろ許したってーな! ワイらも十分反省しとるさかいに…。せやからホンマに堪忍やで!」
「でっ、でも! 敬語は…できれば…使ってほしいかも…。これでも一応……僕たち年上だし…」
三者三様に謝罪の言葉と、分かってほしい気持ちを述べる。それを聞いてカナメは
(コイツら……いちいちめんどくせぇー!!)
って顔を顰める。
ふと視線をずらし、奥で鼻歌混じりにご機嫌よく月見バーガーを堪能している、大きなとんがり帽子が特徴の美少女に声を掛けた。
「ったく…。ツカサは呼び捨てでも構わないって言ってるのによ! ──お~い! 【大魔女】のメイゲツさんや〜い! アンタもコイツらと同じ意見なのかぁ〜?」
「ん~ん? おれっちはどっちでもかまわないさね! そんな事より、おれっちの至福の一時を邪魔しないでもらえるかぁ〜い? ──イヒヒ♪ ここの月見バーガーはやっぱり絶品だなぁ〜♪ あっ! そこのお姉さん、こっちテリヤキ月見と四種のチーズ月見追加でぇ〜♪」
口周りを特製ソースでたっぷり汚して貪り食う、変わった髪色の美少女──『メイゲツ』。
先程ツカサ達を仮装パーティーのコスプレって表現した一番の要因は、彼女の格好のせいである。
上下紫黒色で統一された装いに、大きなとんがり帽子にこれまた大き目なマント。
胸元がパックリ開いていて、誰もが見惚れる美しくて豊満なバストが露わになっている。
百人が百人『THE・魔女』って答えて、ハロウィンを連想させる格好だった。
そして、彼女をこのバラエティー富んだ面子の中で誰よりも目立たせてるのものは、その少し特殊な耳と肌色。あとは奇抜な髪の色と、ありえないぐらいの量のせいだ。
ダークエルフ特有のキュートな尖った耳に、ほんのり褐色の肌。
玉子色とでも言うのだろうか? 黄色と白と橙色のグラデーションが見事にマッチしていて、とても美しい。それから、髪のボリュームは「スーパーサ◯ヤ人ですか?」って訊ねたくなる程のやばい量。
ヒビキも大概すごい量だが、それとはまた別の凄さがあった。カナメは
(俺も大食いだけど、よくあんなに食べるなぁ…。アレ…もう五個目だろう? よっぽど好きなんだなぁ…)
と思いながら気になった事を聞いてみる。
「なあ! シンラとアキラはどうしたんだ? 姿が見えないみたいだけど…」
「ん? シンラなら『新しい研究材料が見つかった!』ってセカイさんの所に行ったさね! アキラは知らん。今朝早く『フハハハハ! 北から我を呼ぶ声がする!』とか言って、そっちのテイマー連れて出て行ったさね!」
「だからリョウのヤツ、朝から居なかったのか…。まあ、あいつはアキラの保護者みたいなもんだからなぁ〜…。年はアキラの方が上だけど」
「一応アッチではイトコ同士だったみたいだし、ほっとけないんじゃないか〜い?」
そう言って、再び月見バーガーに夢中になるメイゲツ。
(そんなもんかね…。まあ、俺も似た様なもんか……)
と今度はツカサからヨシノ達に絡んでいるテンカ達を横目に、それを困った顔で対応しているヒビキを見つめ続けて、思い耽ける…。
その時カナメ達の耳に、豪快で力強い笑い声が入ってきた。
「ガハハハハッ!! やっぱりここの酒が一番だな! 俺様いくらでも飲めるぜぇ♪ もっと持ってこーいっ!!」