新人ミュージシャン
俺は新人ミュージシャン。
ラッキーな事にメジャーデビュー曲は、CMのタイアップで、スマッシュヒットした。次に発表する2曲目を作成中だが、この曲が俺のアーティストとしての未来を決めるといっても過言ではないだろう。この曲がヒットすれば、メジャーアーティストの仲間入り。しかし外せば、一発屋と揶揄されて、スター街道は夢と散るだろう。
曲は何とか完成したが、作詞に苦労している。これがプロのプレッシャーか。しかし、このプレッシャーを跳ね除けてこそ、スターへの階段を登れるというものだ。
「何とかして、良い詞を書かなければ・・・。」
作品の締め切りは、目前に迫っていた。藁にもすがる思いで、以前知り合った先輩のアーティストに相談した。
「誌を書こう書こうと考えすぎて、頭が固くなっちまってるな。」
「どうすれば・・・。」
すると、先輩がこんな話をしてくれた。
アニメ「あしたのジョー」の主題歌、「だけど」の後の大事な部分が、「ルルルル~。」、昭和の名曲「夜明けのスキャット」は、前半歌詞がなく、「るるる」とか「ぱぱぱ」、「北の国から」の主題歌なんて、「あ~」と「ん~」しか歌っていないのに名曲だ、と教えてくれた。
「要は、そこに魂を込めれば、言葉なんて必要ないんだよ。」
そうか、俺は言葉に執着し、こだわり過ぎていたのかもしれない。大事なのは魂だ。先輩に有難いアドバイスを頂けた。
「なんとか書けそうな気がします。」
「そうか、がんばれよ。」
今なら書けそうな気がする。俺の魂の声をこの曲に込めるんだ。・・・そして、曲は完成した。
【すっげえ魂】
どれだけハハハハー 誰かのルルルルー
わかってフフフー おもいはフフフーン
結末ばかりに気を取らニャー この時を楽しめニャイ めニャイ・・・
夢じゃないあれもこれニャー その手でドアを開けまニャーニャ
祝福が欲しいニャラ 悲しみお尻 独りで泣きまニャー
そして輝くウルトラ・フー!!!
ヒットどころか、作品はお蔵入りとなった。