52イェソド
「マルクト…か」
私は赤い絨毯が広がっていくのを見ながら呟いた。
「行くぞ、ルウ」
私はその絨毯を見続けているルウの肩を叩き部屋を出た。
ルウは私の後ろに付き、静かに歩いている。
お前らしくない、そう言おうと振り返るとルウは泣いていた。
「どうしたんだ、ルウ」
私はずっと泣きながら歩くルウに問う。
「争う意味ってなんなんだろうね…」
ルウは震えるような声で言う。
それは、私にも分からなかった。
ずっと気付いていた、意味なんて無い事に気付いていた事に。
その事実から目を反らし続けていた。
なら、今はそれもなくあやつり人形のように踊ってやるのもいいだろう。
「意味が必要か?」
私はそう言うがルウは何も言いはしない。
「確かに必要もないね」
ルウは涙を拭いて笑う。
私達にはもはや争う意味なんてなくてもいい。
もう、引き返す事は出来ないから。
きっとルウも同じ事を考えてるだろう。
私は屋敷を出てここで少し野暮用を済ませようとルウ以外の四英に司令を出した。
「ルウ、少し話しがあるんだが」
私は血界にデストラスを仕舞い、ある物を取り出した。
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sideユグドラ
「まったく…」
僕はため息をつきながら笑う。
ちょっと前に指輪を手の中で転がしていたのを見ていたから期待大である。
僕は陽気に鼻歌を歌いながら肉片が散乱する街道を歩いていく。
剣を抜き、くるくるとジャグリングをするように片手剣を回す。
階段の一つ、そこには2つの剣を持っている赤髪の少年が血走った目でこちらを見ている。
僕は走り出して剣で骨の間を縫うようにして心臓を刺した。
「あ、が…?」
「ふふ、戦いでは油断をしたら死、だよ」
僕はそう言って少年から剣を引き抜いく。
少年は倒れ込み、赤い目から光が失われていた。
2つの剣を持ち、腰に付ける。
僕は最後に少年の目を閉じさせて階段を登った。
「待っていましたよ、管理者」
「私はイェソド、イェソド・シャダイエルカイ」
「僕はユグドラ・グリンガム、君を殺す者だ」
階段を上がるとそこには青髪の男がおり、そいつはイェソドと名乗った。
僕はそいつに名乗り返し宣言をする。
「そうですか、なら屋敷で少し話しをしましょう」
そう言われ僕はその屋敷へと歩き始めた。
なんで従うのかと聞かれたら何も感じなかったからとしか言えない。
だからこそ興味が湧いたのだ。
そしてそこで茶を出されてそれを飲みながら話しを始めた。
「どうせあなたは引いてはくれないでしょう?」
「だから私は被害を最低限にしたいんですよ」
「私が死んだら抵抗を辞めるよう住民に言い聞かせました」
そしてそんな話しをされて僕はいいよと言ってやった。
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「よかったです、でも一応戦いはします」
「望む所さ」
そう言って僕らは戦いを始める。
イェソドは戦う、自らの死と言う2つの事実が欲しいだけなのだ。
だが、簡単に負けてはくれないだろう。
「私の持つ剣は東洋にあった刀という武器らしい」
「この刀の名はガブリエル、夢を司る力を持ち【幻想郷】の一つを持っている」
そうイェソドが言うと歯車のような物が周りに現れ、どんどん大きくなっていき、
最後には広い空間が現れた。
「さぁ、殺し合いを始めましょうか」
そう言ってイェソドは刀を上段に構えた。
「【鋼鉄造花】」
…能力が発動しない?。
「能力を発動する事は出来ないよ」
「まぁ、それは私も同じなのですがね」
イェソドはそう言って走り出した。
僕は手を素早く回転させて上から突き刺すようにして剣を振るう。
グラムと刀が拮抗し火花を散らす。
少し力を緩めてその代わりにと蹴りを叩き込む。
「かは…」
消えるような声が吐かれ、僕は双剣の片方を引き抜き、首筋をかき斬った。
イェソドの青い髪が赤く染まっていき、歯車のある空間は屋敷に戻っていく。
僕は刀を双剣の代わりに帯剣し、屋敷を出た。
そこにはたくさんの住人がおり、その住人に向かってこう言った。
「イェソド殿は高潔な戦士であった」
「それに敬意を称し、最期の願いを聞き入れ、住人には手を出さない事を誓おう!」




