51マルクト
マルクト、そこはセフィロト神聖国の首都に位置すると言っても過言ではない場所。
神聖樹セフィロトには6の層がある。
そしてセフィロトには大きな扉があり、そこは最下層に繋がって居てそこから最上層へと登って行くのだ。
この大陸にはセフィロト神聖国以外にもたくさんの国があり、神聖樹にはたくさんの人々が集まっていたらしい。
そして神聖樹の最下層であり最も広い階層の一つのここは貿易が盛んに行われていた。
だが、その様子は見る影も無い。
私が見てきた限り、国は存在して居なかった。
滅びていたのでは無く、そこに国なんて存在して居なかったようだ。
おかしい、何かがおかしい、セフィロト神聖国以外の全ての時間が巻き戻されたようだ。
そんな事が出来る存在が居るのか?そんな事を考えつつ、私は扉の前に立っている。
今回の攻略は私達幹部達で領主を倒し、その間に他の人間を倒してもらい、また次の階層へと進む戦法だ。
今回攻略するマルクトの領主、そいつは優しく聡明な人物らしい。
そいつとは、少し話してみたい事があった。
だから私は最もたくさんの人物と触れ合ったそいつだからこそだ。
そんな事を考えながら手で指輪を転がす。
今は魔導大隊の一人が扉に魔法で穴をあけようとしている。
薄くなった扉は獄炎魔導で全てが燃え尽きた。
「突撃せよ」
そう私は言いながら指輪とデストラスを交換するように取り出した。
そして音を立てないように走りだし、音もほぼせずに皆が付いて回る。
人々が行き交う場所で一人一人素早く静かに殺して行く。
悲鳴を上げる前に奴らを殺し、私達の事を叫ぶのは天国に行ってからだ。
私はたくさんの人間を殺しながら領地の円周を回るように走る。
皆が大通りを殲滅してる間に裏通りを殲滅していく。
そして裏通りを殲滅していると大通りに出る。
そこには大きな階段があり、そこに大きな剣を持つ少女がまるで見えない壁があるかのように張り付いている。
何をしてるんだ…?。
私がその少女の前に近づくと怒っているかのように騒いでるようなジェスチャーをしている。
「ユグドラ、ここでこの黒髪を監視しておけ」
「あ、うん、なんか馬鹿にされてるみたいだね」
そう言ってアホでも見るかのようにその少女を見ているユグドラに少女は腕を振るう。
当たらないが。
私はまた裏通りの殲滅を開始した。
そしてそのまま2つの階段があったのだがそこにも馬鹿がいた、大地と海を表すような双剣を持っている赤髪の少年と白いレイピアをもつ銀髪の少女がいた。
そして全ての人間を殺したかと考え、ルウと一緒に大きな屋敷へ走った。
そこは大きな屋敷だがその中には質素ながらも落ち着きのある家具が揃えられている。
部屋を探索していると大きな部屋へたどり着く。
そこにはオレンジと黄色を混ぜたような髪色をした女性がいる。
その女性は私達を見てから微笑み、また視線を落とす。
「ごめんね、もう少し待ってくれ」
そう言ってから視線を落とした彼女の手元には写真が握られており、それを磨いている。
それを棚に飾り、私達に体を向ける。
「君らは…あぁ、そうか」
「マルクト、だよな?」
私が名を尋ねると彼女は笑い、言った。
「そう、マルクト・アドナイメルクだよ」
そう名乗った彼女に私達も名乗り返す。
「私は帝国特殊部隊エルディアの指揮官、エンド・ディア・アンセスターだ」
「私はその従者にしてエルディアの最高幹部の一人、ルウ・リフィア・アンセスターだよ」
そう言って名乗った私は質問をする。
「マルクト、お前はこの戦争の意味をどう考える?」
そう私は言って大鎌を構える。
「私は…平和な世界のため、かな」
「何故だ?」
「きっと何百年も人間は争う」
「そしてその最中武器を開発し、その武器の応用からたくさんの道具を作るでしょう?」
「それはいつか、平和をもたらしてくれると私は、信じているから」
そう言ってマルクトは笑う。
確かにルウに聞いた通り、いつかは平和になる。
それは力による抑止だったが…な。
「貴女は平和を信じるの?」
ルウがそう言うと、マルクトは答える。
「いつかは実現されるはず、だから私はその礎として世界の行く末を見届けるんだ」
そう言ってマルクトは手を剣に置き、その剣を引き抜く。
「この剣の名前はサンダルフォン、綺麗な歌を奏で、精神を安定させる」
「あまり目立った力はないけど絶対に精神が壊れる事はないはず」
そう言って虹色に輝く長剣で私達にニッコリと微笑んだ。
「ルウ、やるか?」
私がそう言うとゆっくりと横に首を振る。
「そうか…マルクト、行くぞ?」
「痛いのはあまり辞めてね?」
そう言って私達は武器を振るう。
剣の刃を大鎌の突起に引っ掛けて剣身を回す。
そうするとマルクトの手から剣は弾かれ、マルクトはこけてしまう。
「終わりだな」
「そう、だね」
「リフィアちゃん、平和はあるよ」
「…え?」
そう言ってマルクトは笑い、髪をたくし上げて首を露出させる。
私はマルクトの言いたい事を理解し、大鎌を構える。
「【血界】」
私は血界でマルクトの血を操り、頭から血の気が引く。
そして首を切りマルクトは息絶える。
「さようなら、マルクト」
私は切り飛ばした首に向かって返事のない挨拶をした。




