第4話 戦いが終わって
関西弁の間違いがあるかもしれませんが、平にご容赦ください。
「助かった……んだよね?」
半ば呆然としながら、僕の口から言葉が漏れ出た。
「の、ようだな」
久朗がそれに応える。
久朗の機体も衝撃波などの影響で、ボロボロになっていた。
「これはまた、ひどくやられたもんやな」
新たに、紅色の機体が現れる。
「回復するから、じっとしておいてや。ほないくで――『リジェネイト・オアシス』」
地面に魔法陣が現れ、そこから水色の光が溢れ出て、三人の機体を包み込む。
すると体の傷や機体のひび割れが、みるみるうちに修復されていく。
これが、回復魔法――話には聞いたことがあるけれど、実際に目にするとその圧倒的な力に、驚きを隠せない。
「ありがとうなの!」
コクーンを解除した少女が、声をかけてきた。
「めあ、もう少しで死んじゃうと思ったの」
「ごめんなさい。もう少しで、殺しちゃうところだったのね……」
最初に守っていた少女が、それに対して沈んだ声で答える。
「いや、君が守らなかったら、俺たちが来るまで持たなかっただろう」
久朗がタクティカルフレームを解除して、それに反論した。
「僕も、その通りだと思うよ」
除装の操作を行い、タクティカルフレームを消しながら僕も、それに同意する。
「そんなつもりで、言ったわけではないの。ごめんなさいなの」
慌てて少女も、それに合わせた。
「もう大丈夫だから、あなたも除装したら?」
緑色のタクティカルフレームが、まだ除装していないアプレンティスに、声をかける。
「って、私たちも除装するべきよね」
緑色のタクティカルフレームが、粒子になって転送される。
呼び出したタクティカルフレームは、元あった場所に転送することができ、これを除装という。
装備することも解除することも、一瞬にして行えるのが特徴の一つなのだ。
中から現れたのは、リクルートスーツに身を包んだ、金髪の女性であった。
少し長めの髪の毛を、ポニーテールにしている。
さっき「舞の魔法」と言っていたので、彼女が舞という名前なのだろうか?
「分かりました」
残ったアプレンティスも、粒子になっていく。
そこからから現れた少女に、僕は一瞬で目を取られた。
彼女は、腰まである長い髪の毛を、ツインテールにしていた。
また、灰色のパーカーと、黒のチノパンツを身に着けており、手首にはかわいらしいリボンがアクセントになっている。
そして何より目を引いたのは、まるでフィギュアのように整ったその容貌であった。
「助けてもらい、ありがとうございます」
彼女の唇から、言葉が発せられる。
声もまた、澄んだ響きで耳に心地よい。
「美少女……だな」
久朗が思わずという感じで、口にする。
僕も全く同感だ。
「こんな美少女二人の命が失われなくて、本当に良かったよ!」
灰色のタクティカルフレームから現れた、茶色いジャケットを身に着けた男がこちらに向けて、声をかける。
……うん? 美少女が「二人」?
「美少女って、もしかして……?」
「そちらの少女と、キミに決まっているじゃないか!」
「僕は、男です!」
全員、ポカンとした表情になる。
銀色のタクティカルフレームから現れた青年も、驚きを隠せないようだ。
「めあも、女の子だと思っていたの」
――僕、泣いていいですか?
「ん、どうしたんだ?」
こちらの方に、白のパーカーと迷彩柄のデニムを身に着けた男がやってくる。
「ひどい性別詐欺を見た!」
ジャケットの男が、叫ぶ。
「性別詐欺って何ですか!」
僕も負けじと声を上げる。
……あと、視界の端に見える久朗が、うんうんとうなづいているので、後で思いっきりぶん殴ることにしておこうと思う。
「話が全く見えないのだが……」
パーカーの男が、首をかしげる。
キーンコーンカーンコーン
「げ、まずい!」
慌ててスマートフォンに目を向けると……面接の時間まで、もう残り少ない。
「急いで学校に向かうぞ!」
「分かった!」
久朗と一緒に駆け出そうとするが……。
「学校って芙士高? だったら車の方が早いわよ。乗っていく?」
リクルートスーツの女性が、そう申し出る。
「「お願いします!」」
二人とも、即座にうなづいた。
「私は、違う学校なのですが……今からでは、間に合わないでしょうね」
少女が、肩を落とす。
暗い表情で、今にも泣きだしそうだ。
「守、そっちの少女がどこの学校を受けるのか聞いて、車で送ってあげて。そして、ついたら先方に連絡を入れるので教えてちょうだい」
「了解しました」
「めあも、おねえちゃんといっしょに行きたいの~!」
守と呼ばれた、銀色のタクティカルフレームに乗っていた男性がそれに応え、守られていた少女が更に言葉を繋げる。
そちらも気になるところだけれども、僕たちには構っていられる時間はない!
急いで公園の駐車場に向かうと、黒の高級車が止められていた。
「さ、乗って!」
僕たちは促されるまま、車の中に入る。
座席のクッション性の高さやふかふかのフロアマットなど、明らかに「普通の車と違う」という感覚があり、落ち着かない。
スーツ姿の女性が運転席に座り、エンジンをかける。
「それじゃ、行くわよ」
滑らかに車が発信する。
車は、学校に向けて加速する。
「自己紹介が遅れたわね。私は、舞っていうの」
「あ……僕は、御門祐樹です」
「私は神崎久朗だ。ところで、そちらは仕事に向かうところではなかったのか?」
「大丈夫。私の職場も、芙士高だから」
ってことは、先生!?
「面接に遅れるのを覚悟しながら人助けをするなんていう事は、なかなかできないわよ。これはきっちり加算してあげるからね」
彼女は前を見ながら、ウインクをした。