表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/69

第41話 運動会 第五戦 結城VSミーシャ

「それでは第五試合、御門祐樹(みかどゆうき)対ミーシャ=フォーウッドを始めます」


 ピストルの音が鳴り響くが……ミーシャの方は、動く気配がない。


「ねえ、少しボクとお話ししない?」

 僕に対して、ミーシャが語り掛けてきた。


「今年の一年って、すごいよね……まさかボク達が負けるとは、思わなかったよ!」

 ミーシャが絶賛するが、正直僕たちも思っていなかった。


「でも、最後の試合くらいは勝ちたいと思っているよ」

 既に一年生側の勝利が確定しているとはいえ、手を抜くつもりはないようだ。


「で、提案なんだけれども……確か結城って、オベリウスだったよね?」


 ミーシャが僕に問いかける。


「うん、僕もそうだし、久朗(くろう)(あきら)もそうだよ」

 僕はそれに答えた。


「だったら、両方で歌いながら戦うのはどうかな?」

 ミーシャが、僕に提案する。


「同じ歌を歌いながらなの?」

 僕が質問する。


「違うよ。お互いに自分の得意な歌を歌いながら、どちらが上手いか勝負するの」

 

 それもまた、面白そうである。

 僕はうなづき、了承の意を示した。


「じゃあ、合図したら歌い始めよう……ワン、ツー、スリー、スタート!!」


 ミーシャと僕が、歌いながら戦闘を開始する。

 僕が選んだ曲は、「パラジクロロベンゼン」だ。

 オベリウス候補になったときに歌った曲で、結構自信がある。


「じゃあ、ボクはこの曲で!」


 ミーシャが選んだのは……『バンブーソード・ガール』という曲だ。

 軽快なリズムに合わせて、ミーシャの機体『コリーニョ』に装備されたクオータースタッフが襲い掛かる!


「う、歌いながら戦うのって、意外と難しい……」


 僕の歌が、少し途切れ途切れになってしまう。

 それに対してミーシャは、流れるようなリズムがそのまま戦いに繋がっているようだ。


 ミーシャの連続攻撃が、僕の『オウス』にヒットする。

 クォータースタッフなので威力自体は少なめなのだが、圧倒的な連続攻撃に装甲が耐えられず、徐々に削られていくのが焦りを誘う。

 更に乱れる僕の歌声。


「結城、これは実戦じゃなくて模擬戦なんだよ。ボクと一緒に楽しもうよ!」


 ミーシャが歌を中断して、僕に語り掛けてきた。

 言われてみれば実戦のような感覚で、相当焦りがあり……その一言で目が覚めたような気がする。


「じゃあ、僕もミーシャと同じ歌でもいいかな?」

「もちろん! 思いっきり楽しもうよ!」


 僕も『バンブーソード・ガール』に歌を変更する。

 軽快なリズムで、自分自身の動きが明らかに軽くなったのが実感できる。


「なんだか、二人とも楽しそうだな……少しうらやましいぞ」

 久朗がぽそっと声を出したようだが、全く気にならない。


 戦いというよりも、ダンスのような応酬が繰り広げられる。

 そして、なんだかもっと楽しみたくなって……その時僕の機体から、光が放たれた。


『ソードチェンジ・バンブーソード』!!


 僕の機体の持っていた刀が、竹刀に変化する。

 こんな力を、僕は秘めていたのか……。


「あは、それでいいんだよ!」


 ミーシャもご機嫌のようだ。

 更に戦いの速度は激しさを増すが、踊るような戦いと歌声で楽しそうな雰囲気が、どんどん会場に広まっていく。


「それじゃあ、そろそろ終わりにするね!」

 ミーシャが魔法を使う。


「いっくよ~!! 『フォーエレメンタル・バスター』!!」


 四つのエレメンタルが融合し、強烈な光の波動となって僕の機体に襲い掛かる。

 一気に削られ、戦闘不能になるが……どちらかというとクラッカーを浴びたような気分で、すがすがしい。

 あくまでも、戦いを終えるための合図みたいな感じであった。


「勝者、ミーシャ=フォーウッド」


 結局負けてしまったけれども、僕も新しい力を得て、有意義な戦いだった。

 それに何より、とっても楽しかったんだ。

 本当のオベリウスへの道が、少しずつ見えてきたような気がする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ