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第15話 動き出した事態

 その日の事件は、緊急バグ警報から始まった。


 授業中に緊急バグ警報が発動されたのだ。

 大型のバグが複数出現したということで、3年生に出動要請がかかった。


「3年生ともなると、かなり強いのだろうな」

 久朗(くろう)が僕に話しかけてきた。


「ほかのヒーローたちも応援に来るだろうし、大丈夫だと思うよ」

 僕もそれに答える。


 この時点では、あまり事態を重要視していなかった。


 次に起きた事件は、ダークヒーローの暴動であった。

 放火を行っているダークヒーローが数人いるということで、2年生が出動する。


「2年というと、あの時僕たちを助けてくれたヒーローたちだよね」

「そうだな。彼らならば、問題ないだろう」


 あの金色のバグとの戦闘は、今でも記憶に残っている。

 (まい)先生や(まもる)先生がいないとはいえ、数人程度のダークヒーロー、しかも機体がアプレンティスであれば全く心配する必要はない。

 僕たちはこの時点ではまだ、楽観的な考え方をしていた。


 そんな中、僕たちのスマートフォンにメールが入った。

 それを見て、僕たちは凍り付くことになる。


 記載されていたのは、たった一言。


「たすけてほしいの」


 この特徴的な文章は――間違いない、めあだ! 


「送信者も確認した。一体何が起きているんだ?」

 久朗が顔を引き締める。


「みんな、ニュースのアプリをチェックして! めあちゃんが乗っていたバスが、ハイジャックされたようなの!」

 舞先生が慌てて、僕たちに告げた。


「位置情報がオンになっているから、犯人たちがどこにいるのかは分かるのが幸いね」

 舞先生がスマートフォンを見ながら、確認するように告げた。


「なんとなくだけれども――私たちヒーローが、後手に回っていたのかもしれないわね。私のカンだと、めあちゃんを狙っているのが本命のような気がするの」

 舞先生の言葉は、僕たちにも納得できるものであった。


「めあを狙うということは、ヒーローとしての力がLE(レジェンドリー)を超えているという情報を、どこかから入手したのではないかと考えられるの。おそらくその力が目当てではないかと思うんだけれども……結城(ゆうき)、久朗、そう思わない?」


「ということは、放火を行っているダークヒーローは、あくまでも陽動ということになるだろうな」

 久朗が険しい顔をする。

 僕もその考え方に同意だ。


「残っている戦力で、めあちゃんを助けに行くことになるわね」

 舞先生が苦しそうな顔をする。


「悔しいけれども、私と守先生は待機を命じられたわ。さらなる陽動の可能性があるという、上からの判断で……1年生だけで救出に向かう形になってしまうなんて、何を考えているのかしら!」


「わりと上の方の連中は、物事の優先順位を把握していないことがあるからな」

 久朗が皮肉を漏らした。


「その、めあちゃん? というのは……結城たちの知り合いなのか?」

 (あきら)が代表して、こちらに質問してきた。

 そのため僕たちは彼女について、簡単に説明する。


「そんな力を持った少女が、もしダークヒーローに囚われたら……あまりいい想像はできないですね」

 (れん)も、いつも以上に真剣な表情になる。


「にゃ。私たちの力で、助け出さないと」

 みかんも完全に、眠気が覚めているようだ。


「どうも他のところでも、陽動が行われているみたい。こんな大規模な作戦を立てられるところなんて――恐らく、『教団(きょうだん)』だけでしょうね」


 ダークヒーローの組織でも、最大規模の「教団」。

 それがめあ一人を拿捕するために動いたとなると、相当な戦力が予想される。


「まあ、パーソナライズされた機体のテストには、ちょうどいいのではないか?」

 久朗が気楽を装った言動をする。

 ……正直、そのくらいに考えていないと、プレッシャーに押しつぶされそうだ。


「こちらも上の方を何とか説得して、現場に向かえるように努力するわね。……本当にきついけれども、先行してめあちゃんを助けに行ってくれる?」

 舞先生の言葉に、全員がうなづいた。


「バスの用意はできているぞ! 全員、早く乗り込め!」

 スクールバスの運転手兼教員の、永瀬(ながせ)先生が僕たちに声をかけた。


「助かる! 正直、現場までの足をどうしようかと思っていたところだ!」

 久朗が感謝の言葉を投げかけた。


「これより芙士高(ふじこう)1年、出撃します!」

「お願い、めあちゃんを助けてあげて!」


 僕たちはバスに乗って、スマートフォンのアプリが指し示しているめあの居場所に向けて出発した。


「少ししまらないな。我々のグループ名を決めたほうが、いいかもしれない」

 久朗は平常運転を装って、そうおどけた。


「『ジュエルスター』、なんていうのはどうだ?」

 晶がそれに応える。


「三人の機体名は確かに宝石が由来だけれども……僕たち二人が違うから、それは厳しいかも」

 僕も少しだけ、緊張がとれた。


「にゃ。現場につくまでに、いい名前を考えようかにゃ」

 漣やみかんも、何とかガチガチの状態で戦闘に突入することは避けられそうだ。

 何かいい名前がないか……僕たちは少しだけなごんで談笑しつつも、しっかりと戦闘準備を整えていた。

 めあ、必ず助けに行くから、待っていて! 

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